伝統校が名を連ねるなか、今大会の春高は7チームが初出場。新たな歴史を刻んだチームの予選の戦いを、ピックアップしてお届けする。激戦区の愛知県予選を突破したのが、人間環境大附岡崎高(※2022年4月に岡崎学園より校名変更)とのフルセットの激闘を制した豊川高。ライバルたちの思いを胸に、夢のオレンジコートへ乗り込む
群雄割拠の愛知県に、豊川高が風穴を開けた。初めて春高県予選決勝に進んだ2年前と同じフルセット。その悔しさを知るセッター奥村真三、エース阿部妃呂那キャプテン、そしてミドルブロッカー松田萌花を軸に、人間環境大附岡崎高に懸命に食らいつく。先にマッチポイントを握られたが、3連続得点で逆転勝ち。コートに倒れ込み、顔を覆った勘解由圭太監督は、優勝インタビューで「感極まって自分がどこにいるかかわらない状態でした。バレー最高!」と叫び、初の歓喜をかみしめた。
第1セットは相手のブロックに的を絞らせない奥村のトス回しが光った。中盤にリードすると、15-14からオポジットの青木千星が3連続得点。終盤には松田のブロックも決まり、25-16と危なげなくセットを奪った。だが、「できすぎでした。正直、守りにいった部分がありました」と指揮官が振り返るように、第2セット以降は失速。相手エースのカンポス ユナの強烈なスパイクを止められず、2セット続けて落とした。
しかし、後がなくなった第4セットに息を吹き返す。山本真緒が2本のサービスエースを決めるなど、6連続得点で序盤からリード。終盤に猛追を許すも、佐野有彩がスパイクを決め、フルセットに持ち込んだ。
試合を追うごとに相手にプレッシャーを与えたディグは、第5セットも機能。堅い守りから阿部キャプテンにつなぐと、緩急の効いたスパイクが次々と決まった。6-8でコートチェンジをするなど相手に押される展開は続いたが、最後まで粘り強く戦い抜いた。
東海大会優勝が
春高予選への自信に
決勝で対戦した人間環境大附岡崎高だけでなく、今夏のインターハイに出場した誠信高など、実力校がそろう愛知県。だからこそ、指揮官は「ここで勝つことに意味がある。相手が強いからこそリスペクトして、どう頑張るかというアプローチを続けてきました」と言う。
小柄な選手が多い分、強化したのが決勝でも光ったディグとサーブ。さらに、スパイカー陣は、フェイントも交えた器用なスパイクを磨いた。その成果が実り、6月の東海大会では初優勝。阿部キャプテンは「力になったし、もっと強くなって春高に行きたい気持ちが高まりました」と自信が芽生えた。
誠信高の選手たちとともに、10月には松田、奥村、山本、阿部が国体に出場。勘解由監督は「国体を経験できたことは大きい」と感謝するからこそ、本戦でもライバルたちの思いを胸に戦う。「初出場という言い訳をせず、愛知県代表としてのプライドをしっかり持って、かなわなかったチームの分まで一生懸命結果を出そうと思います」。
前々回大会は誠信高が、前回大会は人間環境大附岡崎高(※当時は岡崎学園高)が春高で8強入り。目標はその両校の結果を上回る四強だ。夢舞台で、今大会も愛知県の名を轟かせる。
人間環境大附岡崎高
昨年度春高ベスト8も
全国大会出場ならず
昨年度春高8強の人間環境大附岡崎高は、全国の舞台に立てぬまま挑戦を終えた。インターハイ県予選は、新型コロナウイルスの影響で辞退。今大会は今季最初で最後の全国大会を懸けた戦いだった。エースのカンポスがチーム最多の31得点を挙げる大活躍も、試合を追うごとに相手の守りに阻まれた。セッター中山青キャプテンは「自分たちはミドルブロッカーで攻めるかたちが多いですが、そこに頼りすぎてしまった。もう一度春高の舞台に立ちたかったです」と悔やんだ。
伊奈弘人監督にとっても「県内のレベルもわからず、当然全国のレベルもわからず、物差しがない状態でした。どれくらいのチームをつくらなければいけないのか、最後までほんとうにわからないまま練習してきました」と苦しんだ1年。「豊川高校さんが見せてくれたバレーから学んで、今後は隙のないようにチームをつくりたいです」と言葉を振り絞った。
来季はリベロ以外のスタメンは総入れ替え。3年生の涙を目に焼き付けた後輩たちが、再起を図る。
決勝の結果は以下の通り。
豊川高 3(25-16、16-25、14-25、25-23、16-14)2 人間環境大附岡崎高
取材・写真/田中風太、淺井恭子
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