今年度最後の大会となる第75回全日本高等学校選手権大会(春高)が、2023年1月4日(水)から東京体育館(東京都渋谷区)で開催される。
インターハイと春高の二冠に挑む金蘭会(大阪)。そのチームのエースが上村杏菜。昨年のインターハイの敗戦から課題を見つけ取り組んできた上村は、今夏のインターハイでその努力が実り、高校初タイトルを手にした。月刊バレーボール2022年9月号のインターハイ報道号(女子)でその時の記事を振り返ってみよう。(月刊バレーボール2022年9月号掲載記事を再編集したもの。本文は当時の内容のまま)
------以下、月刊バレーボール2022年9月号より------
アジア一、そして日本一のエースへ
上村杏菜
涙の敗戦が
成長のきっかけに
緊張感に包まれる決勝の舞台で、上村は誰よりもバレーボールを楽しんでいた。爆発的なインパクトでクロスに打ち抜くと、豪快にガッツポーズ。身長196cmのタピア・アロンドラの強打を上げて思わず笑った。後衛の守備を託してベンチに退いていたタイムアウト間には、「乗ったもん勝ちじゃないですか」とスタンドの応援に合わせてダンス。陽気にチームを勢いづけると、第3セット24-22の場面。仲間の思いが込もったトスが上がった。
「最後にスパイクを打ち切るのは、エースとして当然の仕事やと思っているんで。前衛に力がある(西村)美波がいたけど、(セッターの中川)さつきが自分を選んでくれたのはすごくうれしかった。絶対に決めてやろうと思いました」
後衛から身長168cmの小さな体が高く舞い、豪快に相手レシーブを弾き飛ばした。仲間たち一人一人を力強く抱き締めると、この日一番の笑顔を見せた。
涙の敗戦を経て、大一番で楽しむ準備をしてきた。ルーキーだった昨年のインターハイ。強烈なクロスへのスパイクを武器に、怖いもの知らずで腕を振った。だが、準決勝の就実(岡山)戦。高いブロックを抜いたと思えば、得意コースにはレシーバーが待ち受けた。打っても打っても決まらず、最終第3セットには次々とブロックポイントを献上。号泣したあの日が、上村の今を作り上げた。「これまではブロックに真っ向勝負。でも、それだけではあかんと気づかされました。身長が低い分、高いブロックがついたら抑えられるんや、って」。
「でも」と言って続ける。「大きい相手がきたときが、いちばん成長できると思っています。小さいことは自慢でもあって。バレーは大きい人が有利やけど、小さくてもできることを証明したいんです」。
世代トップクラスのパワーを備えるものの、身長168cmは小柄な部類。だからこそ、「得意コースだけではあかん」とコース幅を広げた。今年7月にはU20日本代表として平均身長185㎝越えの中国のブロックと対峙。「ほんまにやばかった(笑) ジャンプしていないのに、ネットから手が出ていて。『なにこの人!』って思いました(笑) だけど、それが楽しかったです」。
ストレート負けを喫した予選ラウンドではクロスへのスパイクがおもしろいように決まったが、ファイナルラウンド決勝での再戦では対策された。それでも、冷静に突破口を見いだす。「ブロックが高いからこそ脇を狙ったり、手が前に出てくるからこそ(コートの外に)弾ける。フェイントもしたり、いろんな攻撃を混ぜて相手を惑わすことができました」。大会MVPに輝く活躍でチームをアジア一に導いた。その経験が、インターハイでも生きた。
「高いブロックが来ても、日本では1枚。でも、海外ではそれが2枚きました。それを経験していたので、ブロックされても大丈夫、と割り切ることができました」
身長196cmのタピアにもひるまず、クロスに、ストレートにと自在に打ち分けた。相手マークが集中する中、チーム最多の19得点。アタック決定率は54・5%をマークした。高校では自身初の日本一に導き、「やっと金メダルを取れました」と満面の笑みを見せたが、これはまだ序章にすぎない。
「2年生になってから、さつきとずっと『自分たちの代で六冠を目指したいな』って言っていて。まずは今年三冠を取るためにも、次の国体を頑張ります」
バレーボールに身長は関係ない。その右腕で、何度でも証明し続ける。
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以上、月刊バレーボール2022年9月号を振り返った。上村杏菜は1年生で昨年度の春高に挑むも準決勝で就実(岡山)に敗れ3位。3年生に金メダルをかけてあげたかったと悔しい気持ちで涙した。今夏にはU20日本代表としてアジア大会に出場し、大きな海外の選手を相手に奮闘。豪快さに加えて柔軟さも身につけ、MVPに輝いた。日々進歩を続ける上村は、今年度最後の全国大会をインターハイ同様に笑顔で終えることができるだろうか。
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