昨年末、中学生の全国大会「JOCジュニアオリンピックカップ第36回全国都道府県対抗中学大会」(JOC杯)が行われた。各都道府県の“金の卵”たちが集った大会で、彼らが見せた姿をクローズアップする
【第1回】愛知県選抜男子 全国屈指の両エースを支えた石田瑛城
ジェイテクトSTINGSとウルフドッグス名古屋のジュニアチーム所属選手が並んだ愛知県選抜
【画像】JOC杯愛知県選抜男子 第36回JOC杯ギャラリー【15点】
同じ県内でも、ふだんはチームが異なり、それがライバルどうしだったりする。そんな選手たちが同じチームになり、県を代表して戦う。JOC杯の魅力でもある。
昨年末の第36回大会、男子の愛知県選抜は興味深いチームだった。愛知といえば、Vリーグの複数のチームが拠点を置いており、また、指導普及活動に関してもジュニアチームが活発なエリア。今回のJOC杯でも、ジェイテクトSTINGS、ウルフドッグス名古屋のジュニアチームで活動する選手たちが並んだ。
トップチームはVリーグでも激しい火花を散らし、ジュニアチームもまた、少なからずライバル意識を持っている。選手たちどうしで大会があるたびに、「決勝で戦おう」と約束を交わしていたそうだ。もっとも、2022年度はどちらかが道半ばで敗れ、一度も決勝での対戦は実現しなかったが…。同時に、それは愛知県のクラブチームのレベルの高さを表している。
さて、その愛知県選抜は2人の逸材が並んだ。最高到達点は340㎝を超えるSTINGS Jr.のエース柏﨑祐毅(篠目中3年)と、WOLFDOGS名古屋U14のアウトサイドヒッター竹川翔太(応時中3年)。ともに今大会では特別表彰(個人賞)に選出されている。
チームメートの竹川への絶妙な声かけ
その両エースをコート上で支えたのがWOLFDOGS名古屋U14のミドルブロッカー、石田瑛城(大高中3年)だ。自身はJOC杯において、持ち味であるブロックをコート上で発揮したいと考えていた。
と同時に光ったのが、仲間たちへの声かけ。とりわけ竹川に対しては、同じクラブチームで活動していたとあって、背中の押し方が絶妙だった。
「以前だと、翔太はミスすると落ち込む姿が見られたんです。なので、チームも自立させようと促していましたし、彼自身も自立しようという姿勢で取り組みました。とくに今年のJOC杯での活動を通して、気持ちの面が強くなったと感じます。
その翔太に対して、自分も声をかけることを意識していました。1本決めたときは、たくさんほめてあげる。ミスしたら『切り替えて。次だよ』と」
そうして励まされる竹川自身も、仲間の存在に感謝してやまない。
「瑛城の声かけがあることで、次も頑張ろうと気持ちが前向きになるんです」
熱くなり過ぎたエースをリラックスさせた一言
一方、STINGS Jr.の柏﨑とはこれまでに一度だけ練習試合を行っただけで、交流はこれが初めて。打点の高さに驚くと同時に、気持ちの強さを感じた。
「パフォーマンスがすごいのは当然ですし、何より『日本一になりたい』という気持ちがすごく強かった。そこで空回ってしまうこともあった印象です」と石田は振り返る。
実際、決勝トーナメント2回戦では相手の滋賀県選抜に最高到達点340㎝を超える2年生エース草野烈(浅井中)がいたこともあり、柏﨑も闘争心をかき立てられた。だが、その気持ちは力みにつながり、次第に焦りを生んでいく。
草野だけを見つめる柏﨑に、石田が言葉をかけた。
「祐毅は祐毅だよ」
その一言に「力が抜けました。いつもどおりに笑顔で盛り上げてやればいいんだ、と思えましたから。すごく頼りになりました」と柏﨑。
県選抜の活動が始まってからは、意見が衝突することもあった。時には周りが止めに入るほどの口喧嘩に発展したこともあったとか。ただ、「それくらいバレーボールが好きなんだ、と感じました」と柏﨑は振り返る。
いつもは対抗心を燃やす相手だが、チームとして一つの目標を目指す。だからこそ、お互いの気持ちがぶつかり、同じ方向に向く。それがチームスポーツのだいご味だろう。
「新しい仲間と試合ができることがすごくうれしかったんです」と石田。その喜びを自分なりのかたちで、表現したのであった。
(文/坂口功将〔編集部〕 写真/岩本勝暁、編集部)
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