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「相手はドイツとスペイン」 JOC杯徳島県選抜女子が強敵たちにぶつけたサーブとチームワーク

 

 

 昨年末、中学生の全国大会「JOCジュニアオリンピックカップ第36回全国都道府県対抗中学大会」(JOC杯)が行われた。各都道府県の“金の卵”たちが集った大会で、彼らが見せた姿をクローズアップする

 

【第2回】徳島県選抜女子 集大成の舞台で笑顔がはじけた

 

 

笑顔でJOC杯の舞台を戦い抜いた徳島県選抜女子

 

僅差で予選グループ戦2位通過を遂げた徳島県選抜女子

 

【画像】JOC杯徳島県選抜女子 第36回JOC杯ギャラリー【15点】

 

 第36回JOC杯は大会初日の2022年12月26日、男女ともに3チーム1組の予選グループ戦が行われた。中でも兵庫、岡山、徳島で争われた女子の第14組は、いずれも1勝1敗と並び、僅差で決勝トーナメント進出の上位2チームが決まるという激しいグループとなった。

 

 結果的に2位通過を決めた徳島県選抜の大野圭一郎監督は苦笑いを浮かべつつ、喜びをかみしめていた。

「相手、ドイツとスペインやで!? とはいえ、どっちかは倒せた、ってことかな(笑)」

 大野監督が引き合いに出したのは、記憶に新しい2022年サッカーワールドカップ。“森保JAPAN”こと男子日本代表は、グループ戦で優勝候補だったドイツやスペインを見事撃破してみせたのだが、そのシチュエーションと奮闘ぶりになぞらえたというわけだ。

 

 確かに、その表現はぴったりだった。今大会で岡山県選抜は昨夏の全国大会でベスト4の成績を収めた就実中や、Vリーグの岡山シーガルズの元で活動するシーガルズジュニアの選手が主軸を担う。また、兵庫県選抜も、女子U18日本代表経験者で、結果的に今大会でJOC・JVAカップ(いわゆる最優秀選手賞)に選ばれる馬場柚希を擁し、水準が高い。

 それに対して、徳島県選抜は平均身長165.9㎝と決して大柄な選手がいるわけでもなく、総じて全国大会の経験者は多くなかった。

 

 

自分たちよりも身長の高い相手に対して果敢にプレーした

 

セッター橘本ひまりがサーブでブレイクを奪うなど奮闘

 

 けれども、そうした実力者たちに対して、臆するようなことはなかった。というのも、第14組の3チームは合同練習を重ねてきた経緯がある。実は大会の組み合わせが決まった日も、徳島県選抜と岡山県選抜は同じ場所におり、「本番で当たるやん」と笑っていた。

 

 実際、大会では「とてもやりやすい雰囲気で選手たちは臨んでいました」と大野監督。だからこそ、磨いてきた力を存分に発揮できた。徳島県選抜の戦いは、こうだ。

 サイズで劣るからこそ、粘りとつなぎはもちろん、両サイドやセンターエリアを問わずに攻撃を仕掛ける。アタックではフェイントやプッシュなど、技を交えながら、コツコツと点を取る。そして、サーブ。

 高校生との練習試合で、力の乗ったサーブを体感し、取り入れることにした。ストレングストレーナーからアドバイスを受けて、ボールに力を乗せるための体の使い方やトレーニングを習得。特に大会本番ではセッターの橘本ひまり(川島中3年)が効果的なサーブを打ち込んだ。岡山県選抜戦では相手のマッチポイントからブレイクに成功し、サービスエースも決めている。

 「相手のマッチポイントだったので、ミスしないように、そのうえで、絶対に決めてやる、と思っていました」

 そう振り返る橘本だが、もともとサーブに自信があったわけではないとのこと。

「大事な場面だったりで、私にサーブが回ってくることが多くて、そこでいつもプレッシャーに負けてしまうんです。最後は自分のサーブミスで終わることがたくさんありました。なので、今回が初めてと言っていいくらい、練習の成果が出せました」

 

 

要所で効果的なサーブを繰り出した橘井

 

【次ページ】登山で育んだチームワーク

 

 

半年間の活動で培ったチームワークをぶつけた

 

“とにかく明るい”。登山で育んだチームワーク

 

 ただ、ブレイクが続いた場面で岡山県選抜がタイムアウトを取ると、緊張感が顔を出し、橘本のサーブが外れてゲームセット。試合後、大野監督は「(相手の)柘植信秀監督が『あのタイムアウトでやられたでしょ?』って言うてきて。悔しかった~」と笑い飛ばした。

 

 それでも、しっかりと本番で力を発揮した橘本は、サーブがもたらす影響をこのように語った。

 「自分はセッターなので、得点を取れるわけではないだけに、チームのためにサーブで点を奪えたのはうれしかったです。それに、やっぱり場が盛り上がるので、みんながさらに気持ちよくスパイクが打てるようになったと感じました」

 

 ここに、徳島県選抜のもう一つの武器があった。とにかく、明るいのだ。

「小さいから、元気よく勢いに乗らなあかんねん」という大野監督の言葉どおり、第1試合で岡山県選抜に敗れたあと、第2試合の兵庫県選抜戦ではムードよく戦って勝利する。「まるで別人でした」と佐藤美咲キャプテン(津田中3年)が照れるのもうなずけた。

 

 

予選グループ戦を僅差で2位通過

 

 しかし、そうした雰囲気は最初から身についていたわけではなく、活動が始まった7月当初は「ばらばらで、話し合うこともなかなかできなかった」と佐藤キャプテンは振り返る。そこで力を入れたのは、バレーボール以外のこと。その一つが登山で、徳島を代表する眉山がチームビルディングの舞台に選ばれた。

 「2時間くらいかけて登るのですが、これがけっこうきついんです。そこでお互いに励まし合って、『みんなで乗り越えよう』と気持ちが一つになるのを実感しました」(佐藤キャプテン)

 トレーニングも兼ねたこのイベントはチームワークを磨くに最適で、大野監督は「バレーボールから離れるのは大事やなと思ったよ」としみじみと語った。

 

 

岡山県選抜の柘植監督(写真右)と試合後に談笑する大野監督

 

雰囲気と比例して、強くなっていくチームだった

 

 そうしてチームは一体感と好ムードをまとい、JOC杯を駆け抜けた。「波に乗ったら、ほんとうにみんなが“馬鹿”になるので、試合がだんだん楽しくなるんです(笑) そうなることで、どんどん強くなるのも実感しましたし、それがこのチームのよさだと感じました」とは佐藤キャプテンの感想だ。

 

 決勝トーナメント1回戦はこれまた、今大会で最多11度目の優勝に輝くことになる東京都選抜と対戦し、敗れる結果に。相手セッターの髙伊芽吹(駿台学園中3年)は150㎝であり、まるでサッカーの“小さな巨人”ことルカ・モドリッチのごとく。その点も、クロアチア代表に決勝トーナメント初戦で敗れたサッカー日本代表と重なって見えた。

 

 最後は力及ばなかったが、その成長ぶりと選手たちが健闘した姿に、大野監督は温かい言葉を送る。

「子どもたちがいちばん楽しんでくれたし、やっぱり日本一楽しんだチームが勝つんやろうからね」

 結果は予選グループ戦2位通過に、決勝トーナメント1回戦敗退。それでも、彼女たちが半年間に及ぶ活動の集大成で、思いきり楽しんでいたことは確かである。

 

 

楽しんだもん勝ち。徳島県選抜女子、胸を張っていい

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

 

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