大阪北選抜女子の泉谷美乃莉ら金蘭会中の面々がJOC杯で知った初めての悔しさ
- コラム
- 2023.01.23
石橋光(いしばし・ひかる/金蘭会中〔大阪〕3年/身長172㎝/最高到達点286㎝/ミドルブロッカー)
覇気の使い手・石橋光に生じたほんのわずかな心の緩み
その泉谷と並んで、チームをけん引したのが金蘭会中のミドルブロッカー石橋光である。左利きを生かして打ち込むCクイックは大阪北選抜の攻撃のアクセントとなった。
「自分たちのチーム(=金蘭会中)ではない分、泉谷と自分がもっともっと点を取らなければ、と。練習や試合で競り合った場面では『自分に持ってきて』とセッターに伝えていましたし、本番でそういうシチュエーションになったときに打ちきれるように、と心していました」
泉谷とは対称的に、石橋は“覇気”の持ち主。得点が決まれば、にぎりこぶしをつくり、感情をあらわにする。
また、大阪北選抜ではコミュニケーションにも力を注いだ。「ミスした仲間に声をかけるのが、自分にできることなので。サイド陣がブロックにかかりぎみだったら、ずっと『いけるよ!!』とか、手をつないだりして、とにかく落ち着かせるようにしていました」と石橋。その姿はJOC杯でも随所で見られた。
石橋自身、福岡県選抜戦でもクイックを決めていた。だが、試合が進むにつれて、決定力に陰りが。
「第3セットも点差があって、たぶんこれいける、と軽い気持ちになってしまったんです。自分たちが気を抜いてしまい、その瞬間を相手は狙ってきていました」(石橋)
ほんの少しの隙が、自身のプレーを鈍らせ、相手に流れを渡してしまった。
「ほんまに悔しい…」
試合後、そう何度も吐き出した石橋だったが、過ぎた時間は戻らない。
集中力を切らさずに戦い抜いた福岡県選抜(コート奥)に軍配が上がった
敗北の中で実感した、所属チームと選抜の違いと難しさ
思えば、これが泉谷や石橋ら金蘭会中の面々にとっては初めてともいえる敗北の味だった。
中学に入学して1年目はコロナ禍のため、そもそも公式戦のほとんどが実施されなかった。2年目には全国制覇を経験、そして3年目は連覇の当事者だった。その2年間、公式戦は無敗。落としたセット数は数えるほどである。
所属校と選抜で違いはあっても、負けは負けだ。石橋は敗戦をかみしめる。
「もうこれで、このチームでいられるのも最後なんや、って。終わった直後はあらためて実感しました」
違いがあったとすれば、それはコート上での心持ちだ。
「金蘭会やったら、監督の佐藤芳子先生やチームメートが“頑張ろう”と思わせてくれますし、そうして一体感も芽生えるけれど、選抜はみんなと一緒に過ごしてきた期間も短いので…。そこはまだまだ高めていく必要がありました」
その石橋の言葉と同様に、泉谷も明かす。「自分のチームやと、周りに頼ってしまう」と。
日常生活から同じ時間を過ごしているからこそ、仲間が苦しんでいたら手を差し伸べるし、自分が苦しんでいるときには助けられる。
チームスポーツならではのよさを味わってきただけに、選抜の場でもプレーで、アクションで、それを実行へと移した。一方で、それを知るからこそ、残った反省もある。結果として、大会の最後まで勝ち上がることはできなかった。
この日、彼女たちは“負けて終わる悔しさ”を知った。そして、ここからまた強くなることを胸の中で誓ったのである。
涙の奥には、強いまなざしが宿る
(文・取材/坂口功将〔編集部〕)
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