バレーボールのイタリア・セリエA、2022/23シーズンは現地1月28日にレギュラーシーズンの第17節(後半第6節)が実施される。石川祐希が所属するミラノは、クラブ世界王者のペルージャと対戦する。
(Photo:legavolley.it)
<今季はスーペルコッパ(スーパーカップ)を制したほか、世界クラブ選手権でも悲願の世界一を手にしているペルージャ>
ここまでフルセットなし。試合中の修正力がキラリ
さっそくだが、ミミックオクトパスをご存じだろうか。タコの一種で、外敵から身を守るために自らの体を変える“擬態”を得意とする。その種類が実に豊富で、ウミヘビ、カサゴ、ヒラメ、ヒトデ…、と一説では10種類以上あるとか。襲ってきた敵やその状況に応じて自在に変化(へんげ)するのが最大の特徴だ。
さて、対戦相手からすれば、今季のペルージャはそんな相手といえるだろう。一つのチームなのに、戦況によってコートに立つ選手の顔ぶれがガラリと変わる。せっかく攻略の糸口を見いだしても、的確な選手起用で対応されてしまうというわけだ。
ペルージャは現在、リーグ戦では16戦無敗。驚くべきことにフルセットは一度もなく、ストレート勝ちが8度。残りの8試合は3-1での勝利であり、そのほとんどは第3セット以降に一気にセットを連取してのもの、と試合中での修正力がスコアにも表れている。ブレイン(=頭脳)となるアンドレア・アナスタージ監督が、強力かつ多種多様な面々がそろう選手層を生かして采配を振るうわけだが、そこに今のペルージャの強さがある。
<大エースのレオン(左端)。アタック、サーブ、ブロック、レシーブとどれも一級品だ>
それぞれの持ち味が異なる点も、チームの強みに
その顔ぶれを見ると、いまや“地上最強”の称号をわがものにするエースのウィルフレド・レオン(ポーランド)と、22年世界選手権MVPのセッター、シモーネ・ジャネッリ(イタリア)が絶対的な存在といったところ。
まずレオンの対角には、攻守でバランスのとれたカミル・セメニウク(ポーランド)と、横の変化量が大きいサーブが代名詞のオレイ・プロトニスキ(ウクライナ)が併用されている。今季が自身初のセリエA挑戦となるセメニウクがやや相手ブロックにつかまりだすと、チーム在籍4季目のプロトニスキが堂々たるプレーでカバーするのだ。
次にオポジットでは、セリエAで実績十分のカミル・リキリチ(ルクセンブルク)と、反対に自身初挑戦のヘスス・エレーラ(キューバ)が並ぶ。こちらもリキリチの決定力が下降気味になれば、エレーラの出番。跳躍力を生かした豪快なアタックは“鳥人”そのもので、優勝した世界クラブ選手権決勝では途中で投入されると逆転勝利の引き金となった。
<パンチ力のあるスパイクを放つエレーラ(左端)>
そしてミドルブロッカー陣も、クイックのコース幅が多彩なセバスティアン・ソレ(イタリア)、攻撃力の高いフラビオ・グアルベルト(ブラジル)、思いきりのいいサーブが持ち味のロベルト・ルッソ(イタリア)、と各国代表の面々がずらり。ちなみに、37歳のステファノ・メンゴッチ(イタリア)もいぶし銀のプレーが光る。
また、セッターは代表でも司令塔を務めるグレゴル・ロプレト(スロベニア)が控えるほか、リベロも37歳のベテラン、マッシモ・コラーチ(イタリア)を据えつつ、25歳のアレッサンドロ・ピッチネッリ(イタリア)はコートに立てば、そつなくフロアディフェンスをこなす。
ビッグサーバーの代表格であるレオンを筆頭にサーブで攻めて、強固なブロックで相手を仕留める“サーブ&ブロック”は、リーグもとい世界屈指。そうして、レオンとプロトニスキを並べる“サーブ特化型”や、エレーラとフラビオの“超攻撃型”、ルッソとソレの“ブロック装甲型”など、戦況に応じてその姿を変えることができる。
そんなペルージャの愛称は「ブロックデビルズ」。ヨーロッパで“悪魔”の生き物として恐れられてきたといえば…、タコ。ペルージャに備わる変幻自在の強さが、もはやミミックオクトパスに見えてしかたがないのだ。
<チーム全体での、1セットあたりのブロック決定本数は現在リーグトップ>
<文/坂口功将(編集部)>
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