青年海外協力隊による、海外のバレーボール事情や、実際に行った普及活動の様子をお届けする「世界の国で発見! こんなところにバレーボール」、略してこんバレ。第11回はチリに派遣された大山慎太郎さんの活動をご紹介します
歓迎されていない? アウェーな雰囲気
「就職先どうするの? 俺は青年海外協力隊を受けるよ」
大学4年生のときの友人との何気ない会話の中で「青年海外協力隊」を知ったことがきっかけで参加しました。派遣先はチリ共和国ロス・ラゴス州にあるチロエ島の最南端にある町、ケジョンでした。日本から見ると地球の裏側で、南極に近く、当時世界中にいる青年海外協力隊員の中で世界最南端隊員と言われました(笑)
ケジョンの町役場に着任すると、出国前に聞いていた話と違い「えーっと、君は誰かな?」といった様子でかなりアウェーな状態。のちのち分かったことですが、着任直前の選挙で町長が替わり、町役場内の体制もガラリと変わってしまったようです。そのような事情で、私の活動は誰にバレーを教えるのかも決まっていない状況からスタートしました。
赴任地は年中雨が降っており、おまけに寒い。さらにはほとんどの小中学校には体育館がなくて苦労しました。それでも、大雨が降れば教室や廊下を使わせてもらい、子どもたちがバレーボールを楽しめるように試行錯誤する日々でした。
そんな苦労もありましたが、町内8つの小中学校で巡回バレー教室を行い、町内初のバレー大会も開催することができました。配属されていた地域では女子向けのスポーツがなかったため、女子生徒が参加できて、先生方に大変喜ばれたことが印象に残っています。また、巡回教室を始めてしばらくすると、学校の先生にも教えて欲しいと要望があり、地域の体育教師をはじめ興味を持っている先生を集めたバレー教室を開催。さらには高校生の部活の遠征なども実施するなど、多くの活動に携わることができました。
州代表選手に選出され全国大会優勝
赴任中には、チリ各州の代表で競うバレーボールの全国大会に選手として出場するという貴重な経験もしました。当時別の町で活動していた三枝隊員(三枝大地U18女子日本代表監督)とともに州の代表選手に選ばれ、私はセッターとして出場。日本の特徴である速いコンビバレーを駆使して全国大会優勝を果たしました。スペイン語もろくに話せない中で、現地の人たちとチームを作り、結果を出せたことはその後の活動の大きな力となり、スポーツは言葉の壁を超えるということを実感しました。
日本人の常識が通用しない環境で揉まれたことで、「常識とは何か」について考えました。「郷に入れば郷に従え」の精神で相手を尊重できるようになった頃から、活動の幅が広がったことを覚えています。また、2年間日本を離れ、衣食住において現地の人と同じ生活環境で暮らしたことで、両国の文化や習慣が比較でき、それぞれのよさや足りないものを感じられるようになりました。それと同時に視点を変えて、ものを見ることができるようになったと感じています。
大山慎太郎(おおやま・しんたろう)
1981年8月28日生まれ、東京都狛江市出身。
バレーボール歴は中高大で計10年。高校ではスタメンリベロとして県ベスト8が最高成績。
チリってどんな国?
チリ共和国
面積:756,000km²(日本の約2倍)
人口:1921万人(2021年)
首都:サンティアゴ
※外務省ウェブサイトより引用
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/chile/data.html#section1)
青年海外協力隊とは?
JICA(国際協力機構)が実施する海外ボランティア活動。開発途上国の国づくりに貢献するために活動しており、職種や業務内容はさまざま。スポーツ分野ではバレーボール隊員も派遣されている。
応募ページURL:https://www.jica.go.jp/volunteer/index.html