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春高2025

「後悔は一生残る」 東北高 小山暖人が春高で最後まで貫いたストイックさ 『2人の“はると”《前編》』

  • コラム
  • 2023.02.16

 

 

 高校生バレーボーラーにとっての集大成、「春の高校バレー 全日本高等学校選手権大会」(以下、春高)が今年1月上旬に行われた。男子は駿台学園高(東京)が頂点に輝き、エースの佐藤遥斗(さとう・はると/3年)が最優秀選手に選ばれている。その佐藤と同じ名前で、そして、かつて全日本中学生選抜でともに過ごした2人の“はると”もまた、高校生活最後の春高を戦い抜いた。東北高(宮城)の小山暖人と、福井工大附福井高(福井)の谷口暖宗。彼らが高校生活最後の晴れ舞台で見せた姿を、ここに記したい(全2回)

 

《前編》監督があきれるほどストイックな小山暖人が最初で最後の大舞台で見せた姿

 

 

小山暖人(こやま・はると/東北高〔宮城〕3年/身長184㎝/最高到達点331㎝/アウトサイドヒッター)

 

3回戦で鎮西高を相手にマッチポイントをにぎってみせた

 

〔秘蔵写真15点〕佐藤遥斗や當麻理人、脇田孝太郎ら令和元年度全日本中学選抜の海外遠征ギャラリー

 

 今年の春高を彩った選手でいえば、鎮西高(熊本)の舛本颯真はその一人だろう。アンストッパブルなパフォーマンスを披露し、準優勝に輝いた。その鎮西高と舛本を、敗れた決勝戦を除いて最も追い詰めたのが3回戦で対戦した東北高(宮城)だ。3セットマッチのフルセットに持ち込み、ついにはマッチポイントに到達してみせた。それでもひっくり返してみせた点が、今年度の鎮西高の強さだったのだが。

 その試合後、東北高のキャプテン、小山暖人はミックスゾーンに顔を出すやいなや、開口いちばんに悔しさを吐き出した。

 「あと一歩でした。うん、あと一歩!! ほん…、っとうに悔しいス」

 こちらに伝わってくるほどに、歯を食いしばりながら、インタビューに応える。その中で最も熱がこもったのは、戒めにも似た自身への反省だった。

 「結果的にジュースまで持ち込めて、チームの持ち味であるブロックからリズムをつかむことはできていました。ですが、最後は軸であるエースの安食浩士と自分が決めきれなかった。ここまで戦えた達成感はありますが、決めきれなかった後悔は自分の中で一生残ると思うんです。仲間たちはほんとうに最高のプレーをしてくれただけに、その一点に尽きると思います。なので、今は後悔が、自分の中ではいちばんですね」

 役目を果たせなかった自分と向き合い、自らを問い詰める。それは気持ちの強さの裏返しでもある。もし、目指していた日本一の夢をかなえていれば、違っていたかもしれないが、それでも最後までストイックな点は、実に彼らしくもあった。

 

国体王者撃破まであと一歩に迫った

 

思いの強さゆえに。春高県予選決勝は「いちばん緊張した」

 

「彼はストイック過ぎる、ほどなんです(笑) ときには、部員どうしで意見をぶつけ合ったりもしていました。何より自分で背負い込んでしまうタイプで、力が入り過ぎてしまう」

 東北高を指揮する吉田康宏監督は、小山の人柄についてそう語った。プレーレベルでいえば、1年目からレギュラーに入れるほどの高さは備わっている。けれども、みなぎる闘志はりきみにつながり、なかなか本来の力を出せないのだという。

 例えば、3年目の春高県予選決勝もそうだった。それまでの2年間、県予選決勝でライバル仙台商高に敗れ、春高には届かなかった。“3度目の正直”を叶える最後のチャンスだけに当然、気合いはみなぎる。

「今回の決勝が今まででいちばん力が入りましたね。うまくプレーできなかった…、全然だめでした。ここに立つと、緊張しちゃうんですよ。この2年間、いろいろあったので」と小山。

 りきんでしまった自覚があるだけに、春高の切符をつかんでも苦笑いを浮かべた。

 

2年生時の春高県予選決勝。負傷退場し、痛みで顔をゆがめる

 

 振り返れば、1年目の県予選決勝は、仙台商高のコンビバレーに太刀打ちできなかった。2年目は試合途中で足をネンザし、チームが敗れる姿をコートの外から眺めるしかなかった。そんな“いろいろなこと”が、思いの強さを生むのは当然だった。

 そんな小山に吉田監督は県予選決勝前に、ある願掛けを施したほど。小山はどこかうれしそうに振り返った。

 「先生が自分の足に塩をふったんですよ。なんか足にかかった? って思ったら、塩でした(笑) 1年前に足をケガした自分に対して『これでおはらいだ』って」

 

 

「今まででいちばん力が入った」という3年目の春高県予選決勝

 

【次ページ】もどかしかった2年間を乗り越えて、ようやく立てた春高の舞台

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