「描いた3年間ではなかったけれど…」福井工大附福井高 谷口暖宗がかつて日の丸をつけた自分に伝えたいこと 『2人の“はると”《後編》』
- コラム
- 2023.02.17
高校生バレーボーラーにとっての集大成、「春の高校バレー 全日本高等学校選手権大会」(以下、春高)が今年1月上旬に行われた。男子は駿台学園高(東京)が頂点に輝き、エースの佐藤遥斗(さとう・はると/3年)が最優秀選手に選ばれている。その佐藤と同じ名前で、そして、かつて全日本中学生選抜でともに過ごした2人の“はると”もまた、高校生活最後の春高を戦い抜いた。東北高(宮城)の小山暖人と、福井工大附福井高(福井)の谷口暖宗。彼らが高校生活最後の晴れ舞台で見せた姿を、ここに記したい(全2回)
『2人の“はると”《前編》』はコチラ
《後編》ポジションは定まらず、レギュラー定着までに苦戦。それでも谷口暖宗が晴れやかだった理由
谷口暖宗(たにぐち・はると/福井工大附福井高〔福井〕3年/身長185㎝/最高到達点320㎝/ミドルブロッカー)
中学3年生時の全日本中学生選抜でキャプテンを務めた谷口
〔秘蔵写真15点〕佐藤遥斗や當麻理人、脇田孝太郎ら令和元年度全日本中学選抜の海外遠征ギャラリー
中学生世代の育成事業として、全日本中学生選抜の活動がある。そこで名前を連ねる12名は日の丸がついたユニフォームを着て、主には海外のチームとの実戦経験を積む。ちなみに今年(2022年度)はイタリア遠征が2月下旬に予定されている。
ここ2年間はコロナ禍のため未実施だったが、3年前にはオーストラリア遠征を実施。当時の彼らは早や高校3年生となり、そして今年1月の春高で最後の公式戦を戦い終えている。
その令和元年度(2019年度)全日本中学生選抜の男子チームでキャプテンを務めたのが福井工大附福井高の谷口暖宗だ。攻守でバランスがとれ、何よりリーダーシップにたけていた。
谷口が先頭に立ったチームには、佐藤遥斗のほか、當麻理人(東山高〔京都〕)、川野史童(東福岡高〔福岡〕)、脇田孝太郎(崇徳高〔広島〕)といった、その後の高校生活で実績を残した面々が並んでいた。中学生時点でチーム全体のポテンシャルも高く、海外遠征ではU21オーストラリア選抜(シニア代表候補選手も中にはいた)を相手に勝利を収めている。それほどの逸材たちの中、谷口自身もまた将来に大きな夢を描き、高校のステージに上がった。だが、そこからの道のりは描いていたものとはまるで違った。
全日程の試合で勝利を収めた全日本中学生選抜。全員が元気いっぱいにプレーした(①が谷口)
レギュラーをつかめず、ポジションも移り変わった
中学まではチームでエースを務めていたが、入学当初からアウトサイドヒッターには各年代トップレベルの先輩たちがそろい、谷口は活躍の場を求めてあらゆるポジションにトライする。1年目はミドルブロッカーも、2年目はセッター、そして最上級生になってからはオポジットでプレーした。
3年目になりレギュラーの座をつかんで臨んだインターハイ、谷口はそれまでの思い出をかみしめていた。
「なかなか試合に出る機会もなかった。でも、その間にほんとうにいろんなポジションをさせてもらえました。その分、経験値では絶対に負けていないと思えるんです」
負けたくない相手。そこには、かつて全日本中学生選抜でともに戦った面々が含まれている。あのときのメンバーは実力校に進み、練習試合や各大会で顔を合わすことも少なくなかった。ただ、向こうはレギュラーでも、自分はそうでない。そんな時間を長らく過ごしてきたわけだが、谷口は「2年間、充実していましたから」と胸を張るのであった。
そのインターハイでは決勝トーナメント2回戦で崇徳高と対戦。相手エースの脇田とマッチアップし、きれいなブロックシャットを決める場面もあった。
「僕らの代で脇田といえば、水町泰杜選手(早稲田大)みたいな存在ですから。よく跳ぶし、一歩でもブロックのタイミングがずれると器用に得点される。
直接対戦したことはなかったんです。全中選抜のときから『すごい』と思っていた相手を止めることができて、素直にうれしかった」
高校3年生時のインターハイにて、崇徳高③脇田とマッチアップした
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