「描いた3年間ではなかったけれど…」福井工大附福井高 谷口暖宗がかつて日の丸をつけた自分に伝えたいこと 『2人の“はると”《後編》』
- コラム
- 2023.02.17
プレーの幅の広さを武器に、最後の春高では前衛で存在感(左端)
ミドルブロッカーとして臨んだ最後の春高ではサーブで貢献も
インターハイを終えてからはミドルブロッカーに転向したが、それも「一人時間差やライト平行だったり、オポジットをやっていたからこそできる攻撃があったので、楽しかった」と前向きにとらえていた。
そうして、最後の春高では“引き立て役”に徹する。チームの泉田丈琉と堤凰惺の2枚看板を生かすためにも、攻守で存在感を発揮することを心がけて谷口はコートに立った。
同時に、準々決勝の鎮西高(熊本)戦では自らのサーブでチームに流れをもたらした。フローターサーブで明確にターゲットを狙いつつ、続けざまにドライブに切り替えるハイブリッドサーブでサービスエースを奪う場面も。
「ショートサーブを打っていれば、リベロも前に出てくるじゃないですか。そこでハイブリッドサーブを打つと、相手も感覚がずれるので。奥に打てば決まりやすくなるという狙いです。実は県大会でもやったことを思い出して。サーブで崩さないと勝てないと思ったので、練習はしていました」
優勝候補筆頭の鎮西高を相手にフルセットまで持ち込むなど、追い詰めてみせた。だが最後は力及ばず、谷口の高校生活は春高ベスト8という結果で幕を閉じた。
狙いどおりのサーブをていねいに打ち込み、チームに貢献した
かつて日の丸をつけた自分へ、メッセージを送るとすれば?
試合後、その表情はどこかすっきりとして見えた。
「負けたことは悔しいんですけど、誰が見てもナイスゲームと呼べる内容でしたから、誇ってもいいと思うんです。あんまり涙が出てこないのは、やりきったからでしょうね」
高校バレーを戦い終えたいま、晴れやかでいられるのは、やはり過ごしてきた時間が充実感で満たされているからだ。
「高1、高2と上級生の方たちが教えてくれたから、今の自分がある。2年間、試合には出られなかったけれど、先輩たちが経験値を自分に与えてくれた。周りから見れば、3年目でレギュラーに立ったと映るかもしれませんが、それ以上のものがあったと自分では思うので」
最後に聞いてみた。かつて日の丸をつけて、同年代の選ばれしメンバーの中でキャプテンを担った中学3年生の谷口暖宗に声をかけるなら?
「うーん、そうですね…。いろいろ言いたいことはありますが。自分が思い描いたポジションとは違ったり、望んだ結果は出ていなかったけれど、3年間ずっとおもしろかったですから…」
答えは、シンプルだった。
「『バレーボール、おもしろいよ』って。そう言いたいですね!!」
日の丸をつけた、あのときの自分へ。胸を張れる高校生活だった
(文/坂口功将〔編集部〕)
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