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春高2025

Vリーグもビーチでの五輪もありえた? 早稲田大 中澤恵が多くの可能性から競技引退を選んだ理由とGSS東京で見せたい姿

  • V男子
  • 2023.02.18

 

金蘭会高では2、3年生時に春高で連覇を達成。⑧中澤は主力を務めた

 

「バレーボールを嫌いになってやめたくなかった」

 

 大学3年目から一般企業への就職を視野に入れて、大学4年目の自身の誕生日に内定が出た。その時点でもインドアやビーチなど選択肢は持っていたのが正直なところ。そこで中澤はペンを取り、書き出した。

 どうしてこの道を選ぶのか? その場所でどうなりたいのか? どの部分で自分は悩んでいるのか。

 そうするうちに、自分は内定先の企業で“こんな人間になりたい”という人物像が明確になった。そこに、バレーボール選手としての自分の姿はなかった。

 それでも大事にしたかったのは、バレーボールを嫌いになってやめたくない、という思いだ。

 「ありがたいことに私は仲間に恵まれて、裾花中(長野)でも金蘭会高(大阪)でも1年目からレギュラーでコートに立たせてもらえましたし、日本一を経験できました。でも、実際に自分の力で勝負してみたら、大学で1部昇格という結果には至らなかったわけで。ではVリーグに進んだら? コート内で活躍できる姿が想像できなかったし、ベンチを温める姿が容易に浮かんだんです」

 

 

これが最後、と決めた臨んだ全日本インカレ

 

 それで嫌いになるくらいなら、区切りをつけて思いきりバレーボールと向き合おう。競技から身を引いて就職することを決意し、昨年秋には全日本インカレを大学生活最後の舞台と定めた。結果は2回戦で帝塚山大に敗れて終わったが、その試合は充実感で満たされた。

 「全部ぶつけられました。それもぶつけてダメ、ではなくて、プレー自体はよかったんです。最後までバックアタックも拾われることはなかったですし、満足の出来。春高で優勝したときが自分のピークではなくて、『大学4年間で成長できた』と自信を持って言えたのがうれしかったです」

 最後の大舞台は十分に満足のいくものとなった。ただ、心残りはあった。大学生活の大半をコロナ禍で過ごし、自分のプレーを見てもらう機会が少なかったこと。支えてくれた周りの人たちへの感謝を表現する場が限られたこと。

 そんな思いがあったから、たとえ期間限定でもVリーグでプレーすることを選んだのであった。

 

 

昨年の暮れにリーグに登録され、年明けからGSS東京の一員としてコートに立った

 

競技生活の最後の瞬間に見せる表情は――

 

 いざ、Vリーグの舞台に立つ。デビュー戦はGSS東京のホームゲームとあって、チームのファンたちが客席に並んだ。自分の姿を見てもらえている、と実感した。

「もともと目立ちたがりな部分があるので(笑) 高校時代も、インターハイよりも春高のほうが燃えるし、ここでやってやる!! みたいな気持ちになっていましたから。なので、(大学での)無観客試合は寂しかったです。

 Vリーグにこうしてお客さんが見にきていて、誰が誰を応援しているのかはわからないですけど、自分の中では『見ている方々に楽しんでもらえるバレーがしたい』って思いました。それが今日(デビュー戦)はできなかったので…、そこは反省です。ただの学生プレーヤーではなく、Vリーガーとして応援してもらっている立場なので。責任感を持って臨みたいです」

 

 

金蘭会高の一つ上の先輩、重田美音(24番)と並んでプレーする場面も

 

 全日本インカレをもって引退し、残りの学生生活を気ままに過ごしてもよかったが、当の本人にその考えは毛頭なかった。最後までバレーボールをとことんやりきる3ヵ月間。コートに立てば、私はこれが好きなんだ、と実感する。

 「やっぱり点が決まったときに、みんなで喜んで、ハイタッチして、うわぁとなる。みんなと一緒になって一つのゴールを目指して、その成果を分かち合うのが楽しいな、って思います。自分が失敗しても、周りが背中を押してくれるし、一人じゃないんだな、って。自分がスパイクを決める楽しさよりも、そっちのほうがうれしいです」

 4月になれば社会人として新生活が始まる。自分のバレーボール人生は、そこまで。ひょっとしたら未練や名残惜しさが湧いてくるかもしれないが、今は分からない。

 「やめるという選択を後悔するかもしれないけれど、『やりたかったな』でいいと思います。知り合いたちはこの先もバレーボールを続けるし、おそらく私も見に行きますから。だから、あんまりバレーボールから離れる感じがしないんです。寂しいな、とかは全然なくて。

やめてから思うのかな。でも、いいですよね。それってバレーボールが好きだ、ってことだから」

 ほんのわずかだが残りの競技人生を楽しみ、感謝し、そして笑っていることだろう。最後の瞬間がきたら――

「ありがとうございました!! って、顔をしていると思います」

そのときまで、いや、その先もきっと。彼女はバレーボールが好きだ。

 

プレーヤーとしてバレーボールに思いきり励む。そんな幸せな時間の真っ只中

 

(写真・文/坂口功将〔編集部〕)

 

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