喜びのハイタッチ! 西田有志の完全復活を待つブラン監督の手助けと期待。「エースを取れるのは誰もが知っている」からこそ
- コラム
- 2023.06.21
バレーボールのネーションズリーグは予選ラウンド第2週が始まり、男子日本代表は現地6月20日、カナダを下して無傷の5連勝とした。その試合の終盤でサービスエースを奪い、画面越しでもわかるほどに会場を沸かせたのがオポジットの西田有志である。
<西田有志(にしだ・ゆうじ/身長186㎝/最高到達点350㎝/海星高〔三重〕→ジェイテクトSTINGS→ビーボ・ヴァレンティア〔イタリア〕→ジェイテクト→公益財団法人日本バレーボール協会/オポジット>
カナダ戦での勝利を決定づけた西田のサービスエース
左腕から打ち出されたボールが、カナダのアウトサイドヒッター、マティアス・エルサーを強襲する。セットカウント2-1で迎えた第4セット、20-12から日本は4度のブレイクに成功し、この試合を決定づけた。そのうち、2本は西田のサービスエース。いずれもエルサーを狙った打球だった。
これだよ、これ。西田のこんな姿が見たかったんだ。
日本だけでなく、世界中のファンがそう思ったことだろう。完全復活を遂げたかは、本人の中にしか答えはない。けれども、予選ラウンド第1週、名古屋大会での姿を思えば、復活の兆しにあることを願わずにいられないのだ。
<カナダ戦では3本のサービスエースを含む15得点をマークした(写真:FIVB)>
サーブの直接失点が続いていた名古屋大会
6月9日、ネーションズリーグ名古屋大会4日目、セルビア戦。日本ガイシホール(愛知)の記者席で、思わず隣のメディア関係者にこぼしてしまった。
「西田選手、サーブがはまってなさそうですね」
初日のイラン戦では全8本のサーブのうち、直接失点の数は4で効果率は-50%。そして、この日のセルビア戦でも第1セットは3本すべてがアウトもしくはネットにかかり、エラーは3を記録していた。
西田の代名詞の一つに、強烈なサーブがある。ときにレシーバーを吹き飛ばし、あるいは相手が誰も微動だにできないようなノータッチエースを突き刺す。そうしてムードを一気に我が物にし、これまでもそうしてきた。もちろん、全部のサーブでエースを奪うなんて夢物語。けれども、続く第2セットでも、西田のサーブは2本中2本ともアウトになり、直接失点の合計は5を数えていた。
おそらくは見ている大半が描く、サーバーとしての西田の姿ではなかっただろう。第3セット、11-9からのタイムアウト明けで、西田は今大会自身初のサービスエースをマークする。それでも、試合後の本人の表情は晴れなかった。エースが決まって安心しましたか? と聞いてみたが…
「いや、全然安心じゃないです。やっと、とは思いましたが、安心ではないス」
その口ぶりからは、苦しんでいる様子がうかがえた。
<名古屋大会では初戦(写真)からサーブによる失点が続いた>