喜びのハイタッチ! 西田有志の完全復活を待つブラン監督の手助けと期待。「エースを取れるのは誰もが知っている」からこそ
- コラム
- 2023.06.21
<ブラン監督は西田へ厚き信頼を寄せる>
「徐々に調子を上げていけばいい」とブラン監督
セルビア戦の西田のパフォーマンスについて、フィリップ・ブラン監督は「全体的にはよかった」と評価した。事実、この試合で西田はチーム最多24得点をマーク。アタック決定率は56.25%(32本中)と高い数字を残した。一方で、サーブの直接失点は終わってみれば7。ブラン監督は奮起を促すように、会見で優しくこのように語った。
「フルパワーでうまくいかないときは少しでもリスクを減らして、方向をコントロールする必要があります。ですが、彼にはどんな難しい状況でも、常にサービスエースを取れる実力があることは誰もが知っています。我慢強く、そして徐々に調子を上げていけばいい」
指揮官いわく、西田のサーブは豪快そのものだが、その力加減はフルパワーつまり全開でないときのほうが「いいサーブが打てている」。確かに、西田といえば2019年のワールドカップ、カナダ戦での連続サービスエースが今なお強烈な記憶として残っているが、その場面でも当の本人は「冷静で、力んでいなかった」とかつて明かしている。
覆いかぶさるような雲から、ようやく晴れ間がのぞいたのは、その2日後の名古屋大会最終日のフランス戦。第1セット中盤、西田は相手エースのケバン・ティリをのけぞらせる強烈なサーブを打ち込んだ。ボールは後方へ飛んでいき、フランスのアップゾーンへ落ちる。この日、自身1本目のサービスエース。その瞬間、西田はすぐにベンチへ行き、ブラン監督とハイタッチを交わした。
<フランス戦で1本目のエースを奪い、西田は感情を爆発させる>
「焦らず、うまくやっていきたい」と西田
「ブランからは『もっとこうしたほうがいい』と、たくさんアドバイスをもらっていたので。2人で喜べたのはうれしかったです」と西田。
そしてブラン監督もまた、交わした手の感触を思い返すと、白い歯をのぞかせた。
「われわれスタッフはチームの一員として、選手たちと一緒に喜びを共有する仲間だと考えていますから。西田とはサーブに関して試合前に個別で映像を見ながら話していました。彼が今、機能しているサーブの方向についてディスカッションし、あの1本はまさに確認していた方向へのサーブでした。そういう意味でも、喜びはいっそう大きかったことでしょう」
名古屋大会の最後で、ようやく復調の兆しが見えたのは確かだろう。西田はこう語った。
「やっと戻ってきたかな、とは。あのサーブも100%というわけではなかったですが、しっかりと点数につながったところなので、安心している部分はあります。焦らず、うまくやっていけたらいいなと思っています」
<代表シーズン前から「秋のオリンピック予選にフォーカスを当てて、そこでベストが出せるようにもっていきたい」と語っていた西田>
舞台をフランスに移しての予選ランド第2週。カナダ戦では序盤からスパイクがなかなか決まらず、第1セットはわずか1得点。第2セットでサービスエースを含む6得点をマークし、試合が進むごとに調子を上げたのが見てとれた。
そして最後に決めた、2本のサービスエース。以前、西田は自身のサーブを、このように表現していた。
「スパイクもそうですが、サーブのターゲットが、僕の中では“人”なんです」
相手レシーバーを撃ち落すような一撃が出ると、見ている側は胸が弾む。やっぱりこれが西田有志だよね、と。
<チームメートとポージングする①西田。笑顔がキラリ>
(文/坂口功将 写真/石塚康隆〔NBP〕、FIVB)
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