関東大学1部の中央大男子バレーボール部は今年1月下旬から4名の部員の海外派遣を実施。バレーボール部後援会によるプロジェクト「THE FUTURES」の支援によって、3年生の藤原直也を筆頭に、2年生の柿崎晃、澤田晶、山﨑真裕も“世界最高峰リーグ”イタリア・セリエAの各チームに練習生として参加した。選手登録はされず試合に出場することはないが、チームの活動に加わり、リーグのレギュラーシーズンが終了する3月中旬までを過ごす。およそ1ヵ月半にわたる活動の中で、彼らはどんなことを味わったのか。月バレ編集部取材記者が、現地で話を聞いた。《全4回》※学年は取材当時
《インタビュー連載②》モデナ:柿崎 晃
ヴェローナから南でおよそ100㎞南へ下った町、モデナ。イタリアを代表する自動車メーカー、フェラーリの創業者を称えるミュージアムを横目に、中心街から2㎞ほど歩くと「Valsa Group Modena」(モデナ)のホームアリーナ「PalaSport G.Panini」があった。
セリエA屈指の名門クラブがその歴史を刻んできたアリーナ内には、各年代のメンバーが並んだパネルが飾られている。ちなみに、クラブの事務所の受付の近くに配置されたパネルはここ10年近くのもので、2014/15シーズンの集合写真の中には石川祐希の姿がある。そして今回、石川の後輩である柿崎晃がチームに加わった。
――派遣先がモデナと聞いたときの心境はいかがでしたか?
柿崎 ブルーノ・レゼンデ(ブラジル)やイアルバン・ヌガペト(フランス)たちがいるビッグクラブなので、聞いた瞬間はほんとうに緊張しました。合流した日は練習に参加せずに見学というかたちでしたが、その際も選手の皆さんがきてくれて、握手をしてくださって、こんな感じなんだ、と。すごくいい人たちばかりで…、最高ですね!!
――派遣メンバーに選ばれるまで、海外でプレーするという意識は持っていましたか?
柿崎 全然ありませんでした。昨シーズンからイタリアへの海外派遣の話は監督からも聞いていましたが、流れしまって。今回、実現するとなって選ばれた際は不安もありました。ですが、中央大学独自のプロジェクトでうれしいことでしたし、素直に楽しみでした。
とはいえ、果たして自分のプレーが通用するのかわからなかったですし、最初はパワーやブロックの高さに力の差を感じました。それも数週間たてば慣れてきて、気がつけば、この高いレベルの中でも自分のベストを出せば通用する部分も見えてきましたので、成長を感じます。
――具体的に、通用する点とは?
柿崎 自分は大学でも、レシーブしてから要所でアタックを打つ、いわゆるパサーヒッターの役割をもらっています。日本人選手としてもサイズが小さいほうですし、それはモデナの中でも一緒。そこではパスが自分の売りになると考えていましたし、レセプションやディグで通用するとは感じました。
――それにしても周りのメンバーがまさにトップ選手ばかりです
柿崎 ブルーノはテレビで見ていた選手。実際に見ていて、うまさが伝わってきますし、そのトスを打っているなんて、奇跡のようです(笑)
自分が合流したときは、何名かの選手がケガをしていたようで、その穴埋めでオポジットに入ることがありました。そのうち全員がそろって、そうなると練習に入る機会が少なくなるのかな、なんて想像していたのですが、思った以上にメニューに入らせてもらって。ほんとうに貴重な経験になっています。
――となると、やはり会話ができるようになりたいのでは?
柿崎 そうなんです!! しゃべれるようになりたい。合流してから、サルバトレーレ・ロッシーニやトマッソ・リナルディ(ともにイタリア)が優しく面倒を見てくれて、自分も英語とジェスチャーを交えて頑張って会話するようにしていました。また、アンドレア・ジャーニ監督からもアドバイスをいただけるのですが、はっきりとはわからない部分もあったりして、感覚的な部分は見て学ぶという具合です。自分から要求することがまだできていないので、英語は聞き取れるくらいにならないと。
――帰国すれば大学生活3年目のシーズンが待っています。意気込みをお願いします
柿崎 昨季の中央大は自分も含めて下級生が多いチームで、周りからも「今季は強いだろう」と言われてはいますが、とはいえ(昨年の)全日本インカレでベスト16に終わったという結果は事実なので。そのスタメンのうちの4人が今回、イタリアに派遣された以上、ここで学べたことを言葉やプレーでいかに伝えるかが求められます。ここにきて、0から100まで学べることしかありませんでしたし、チームに戻ってからが自分たちのほんとうの仕事だと思うので。それに3年生として上級生になるので、自覚を持って過ごしたいと思います。
(取材・写真/坂口功将〔編集部〕)
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