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春高欠場の就実高が金蘭会高とエキシビションマッチ 「一生の宝物になる1日」で高校バレーに区切り

 

 

今年1月の春高を欠場し、大会3連覇を逃した就実高(岡山)が、3月12日(日)に金蘭会高(大阪)とエキシビションマッチを行った。V1女子の久光スプリングスが企画し、久光対埼玉上尾メディックス戦の前に開催。多くの観客が見守る中、はつらつとしたプレーでラストゲームを楽しんだ

 

 

笑顔で晴れ舞台を戦い抜いた就実高の選手たち(#1が岩本)

 

特別な雰囲気の中で

ライバルが激突

 

 選手たちも、スタンドの観客も、みんなが笑っていた。晴れ舞台を戦い終えた就実高の選手たちに、鳴り止まない拍手が送られる。全チームを対象に行われた抗原検査で陽性者が認められ、3連覇を狙った春高を欠場してから2ヵ月。特別な一戦を終えた岩本沙希キャプテンはすっきりとした表情で言った。

 「できなかったプレーもありましたが、最後までチーム全員でやりきれたので、区切りをつけることはできたと思います。いろんな方への感謝の思いを込めてプレーができて、最高というか、一生の宝物になる1日だったと思います」

 

 V1女子の試合前に実現した就実高にとっての晴れ舞台。主催する久光が仕掛けた粋な計らいの数々で、会場はより一層特別な空間となった。両校のベンチ脇には校名入りのプラカードが置かれ、公式戦さながらの雰囲気に。試合前には久光の就実高OG石井優希、万代真奈美、深澤めぐみ、金蘭会OGの白澤明香里、吉武美佳による激励のメッセージ動画が流れると、会場は温かい空気に包まれた。

 

 

両校のプラカードの裏には、OGからのメッセージが

 

 さらに、この日は声出し応援が解禁。コロナ禍で、声援のない中でのプレーが当たり前になっていた選手たちを、スタンドから後押しした。金蘭会高の池条義則監督が「マイクを持っている選手がもっと(声を)出してくださいって言っても、最初は遠慮気味でしたね」と笑って振り返るように、ぎこちなさもあったが、決戦のときへボルテージは高まっていった。

 

 3年生が入学後の両校の全国大会での対決は、就実高の4戦4勝。何度もしのぎを削った互いに認め合うライバルは、ベストメンバーどうしでぶつかった。就実高のスタメンには3年生5人がコートに立ち、春高県予選決勝とほぼ同じ顔ぶれ。対する金蘭会高は日立Astemoリヴァーレに内定し、前日も試合に出場していたリベロの德本歩未香がこの一戦のために合流。スパイカー陣には1月の春高ベスト4を経験したメンバーが名を連ね、昨年の第14回アジアU18(ユース)女子選手権大会に出場した期待の新1年生・馬場柚希を早速起用した。

 

 

金蘭会高は注目の新1年生・馬場がコートへ

 

 西畑美希監督が「ほんとうはもう少し足を動かしていいバレーをしたかったですが、皆さんに感謝を伝えたい、いいバレーをしたいという選手の思いが強すぎて、足が止まる部分が多かった」と振り返るように、第1セット序盤から就実高がリードを許す展開に。中盤には馬場にブロックやスパイクを決められて4連続失点を喫し、19-25でセットを落とした。

 第2セットは1年生エース福村心優美のスパイクが決まり5-0とリード。だが、今試合のMVPに輝いた西村美波にスパイクを決められるなど中盤に逆転されると、ブロックにつかまるシーンも目立ち、0-2でストレート負けを喫した。

 

 それでも、15点先取で特別に行われた第3セットは、就実が意地を見せる。リードを許した中盤に、福村や髙橋凪の両エースが活躍。その1年生たちに負けじと、岡田愛菜、髙濱日菜穂の3年生ミドルブロッカーも得点を決める。田中結姫のディグなど、持ち味である粘り強い守りが機能すると、最後は福村のスパイクでジュースを制した。岡田は「残念な結果に終わってしまいましたが、自分たちの持っている力を全部発揮できたと思います」と胸を張った。

 

 

試合後に握手する両キャプテン。德本(左)は「ずっとライバルとして思っていたし、すごく力があるチーム」とたたえた

 

欠場校が出た春高

指揮官の願い

 

 就実高にとっては春高3連覇がかかった1年。インターハイでは3回戦敗退と苦しいスタートだったが、国体では準優勝し、結束力を高めていた。春高では無念の結末を迎えたものの、その頂点を目指し続けた日々は、選手たちを強くした。

 「春高で悔しいというか残念というか、無念というか、そういうことを味わって。でも、私たちはそんなことでダメになるような練習をしてきていないですし、日本一になるために、毎日ほんとうに強い思いを持って過ごしてきていたので。これから先、いろんなことがあっても乗り越えると思っています」(西畑監督)

 

 

コートもベンチも一体となって戦った就実高

 

 エキシビションマッチを行ったとはいえ、今年の春高では就実高を含む4校が新型コロナウイルスやインフルエンザの影響でオレンジコートに立つことができていない。欠場とはならなかったものの、金蘭会高も春高のおよそ1週間前に新型コロナウイルスに2名、インフルエンザに9名が罹患しており、大会を欠場したケースは決して他人事ではない。

 「(春高は)大会前に全員が抗原検査をして、陽性が1名でも出たら棄権という。やっぱりバレーってきついよな、と思っていましたし、まだこれをやるのかという印象です。

 1月にあった高体連の会議でも、『あまりにきつすぎませんか』という質問もありました。陽性になった選手をメンバーから外して、それでチームを組めるなら出られるようにしてもらわないと、ちょっと…。これでルールが変わって、棄権という措置がないことを願いたいです」(池条監督)

 

 新型コロナウイルスとの社会の向き合い方は変わりつつある。各地で新人大会が行われ、新たなシーズンのスタートはもう目の前だ。集大成の場が失われるような悲劇は、もう繰り返してはならない。

 

 

今試合は声出し応援が解禁。来年度はこれまでのような光景が見られるか

 

文/田中風太(編集部)

写真/中川和泉(NBP)

 

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