中央大男子 “世界最高峰”に触れて/連載③澤田晶「自分の固定概念を崩せたし、見事に崩れました」
- 大学生
- 2023.03.16
関東大学1部の中央大男子バレーボール部は今年1月下旬から4名の部員の海外派遣を実施。バレーボール部後援会によるプロジェクト「THE FUTURES」の支援によって、3年生の藤原直也を筆頭に、2年生の柿崎晃、澤田晶、山﨑真裕も“世界最高峰リーグ”イタリア・セリエAの各チームに練習生として参加した。選手登録はされず試合に出場することはないが、チームの活動に加わり、リーグのレギュラーシーズンが終了する3月中旬までを過ごす。およそ1ヵ月半にわたる活動の中で、彼らはどんなことを味わったのか。月バレ編集部取材記者が、現地で話を聞いた。《全4回》※学年は取材当時
澤田 晶(さわだ・あきら/中央大2年/身長199㎝/愛知工大名電高〔愛知〕出身/ミドルブロッカー)
《インタビュー連載③》チステルナ:澤田 晶
イタリアの首都ローマから南へ電車で30分ほど。到着したチステルナ・ディ・ラティーナ駅は、電車の長さに対して駅のホームが足りず、列車の乗り降り口から地面に直接下りる場所も。駅を隔てて町の様子はガラリと変わり、もはや直結といえる距離につくられた体育館「Palasport」は静かなほうにある。なお反対側は駅構内にカフェもあれば、町のいわゆる表通りへと続く道がある。
ここを拠点とする「Top Volley Cisterna」(チステルナ)に派遣された澤田晶も思わず、「体育館があるのは、栄えてないほう、なんです」と苦笑い。聞けば、滞在中に宿泊しているホテルは“体育館側”だそうだ。
以前のチーム名は「ラティーナ」。拠点を置く自治体の名称に変更された
――慣れましたか?
澤田 (取材時点で)1ヵ月くらいたちましたし、環境にはすっかり慣れました。初めは言葉に不安を感じていました。イタリア語自体も勉強していたわけではないので、今回派遣メンバーに選ばれてから、バレーボール用語だけでも覚えていこうと必死に。今はようやく監督が言っていることや、練習のメニューなどもだいたいは理解できるようになりました。
――練習中も周りと言葉を交わす場面があります
澤田 みんなすごく仲がよくて、言葉や国籍の壁をいっさい感じません。そこは合流した当初、とても助かりました。中でもミゲルさん(ホセ・グティエレス/キューバ)は初めからずっと話しかけてくれて、会話するのが楽しいです。
キューバ人選手らしく陽気な人柄が垣間見えるグティエレス(左)
――セリエAのレベルに、日本人ミドルブロッカーとして向き合っています
澤田 内心では「ミドルブロッカーとして通用するのかな」という気持ちでしたが、選ばれた以上は「やってやろう!!」と。実際に感じるのは、日本と圧倒的に高さとパワーが違う点です。それに日本では細かいプレーが求められたりもしますが、こっちは逆に大胆、といいますか。ただただ圧倒されるようなプレーばかりで、見ていて飽きないです。
――ネットを挟んで対峙するわけですが…
澤田 正直なところ、けっこう怖いんですよね(笑) 高さはもちろん、威力そのものが強くて、今まで味わったことがないようなパンチで殴られる感覚です。ブロッカーとして恐怖を感じますが、だからこそ、きれいにシャットすることができたときの感触はこれまでにないくらい。自分の成長につながることを実感しました。
――高さでいえば、澤田選手も引けを取らないように映ります
澤田 ただ、自分はそれほど跳べるわけではないので。それに海外だと、ミドルブロッカーは身長2mがある意味でスタンダード。自分は少し届かないくらいですし、何より背が高い選手は腕も長いんですね。ですから、ブロックでも多少は跳ばなくても、腕が出る。その体格差は、まるで違うと感じます。
恐怖を感じるほどのアタックを直で味わった
――このステージで自身がプレーするために、必要になってくることは?
澤田 まずはパワー負けしないくらいの体づくりが必要です。また、ジャンプ力はこれからもトレーニングをすることで磨けると思いますが、身長はこれ以上伸びるとは考えにくい。なので、そこをカバーするだけの技術力をどれだけ高められるか。それらは自分の将来設計にも関わってくると思う部分です。
――会見で「人生観が変わる機会になる」と。実際に体験してみていかがでしょう
澤田 今まで日本でプレーしていた感覚で海外にくると、もう何もかもが違いました。自分の固定概念を崩すことができたし、見事に崩れました。自分をさらに成長させる、いろんな方法をつかむきっかけになったと感じています。
――帰国してからはどんな姿を見せたいですか?
澤田 チームとしては昨年の全日本インカレで苦い思いをしてしまったので、まずは関東春季リーグから1位、つまり優勝をねらいたい。今季を前にチーム内でも「中央大の強さを見せつけよう」と話しているので、春からが大事になってきます。
自分は入学1年目から試合に出させてもらって、次は3年生で上級生になります。コートに立つ選手としての責任がさらに強くなるわけですから、チームを勝たせる、そして、引っ張っていく存在になりたいです。
登録されないにも関わらず、名前入りのロッカーが用意されて迎え入れられた
(取材・写真/坂口功将〔編集部〕)
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