1月の春高で誠英高(山口)を準優勝に導いた3年生のスタメン5人による高校ラストインタビューをお届け。全2回の後編はその好成績の秘けつについて。インターハイ、国体と苦しんだ2大会を経て、浮上のきっかけをつかんだ【前編はこちら】
学びが多かった昨夏のインターハイ準々決勝下北沢成徳戦
――この1年を振り返ると、インターハイではベスト8に入りましたが、国体では2回戦敗退と悔しい結果に。2大会を振り返るといかがでしょうか?
岩城 まず、このメンバーは1年生からコートに立たせてもらっていたので、自分たちの代で結果を残さないとやばいな、という思いがありました。その思いで頑張っていました。
北窓 自分でもすごく頑張ったな、と思うくらいで、自分たちの中でインターハイまでがピークだったと感じています。インターハイでは常に全国の上位にいるチームと初めて戦って(準々決勝、対下北沢成徳高〔東京〕)、全国上位のほんとうの強さを知りました。
田川 自分のスパイクに比べて相手の高さやパワーが全然違ったので、今までやってきたことでは足りないと感じました。
北窓 負けたときはみんなすごく悔しがっていて、練習を頑張ろうという雰囲気になっていましたが、そこから空回りしちゃって(笑) インターハイ後の皇后杯中国ブロックラウンドで負けて、そこからチーム全体の雰囲気がおかしくなって。ズルズルと負け癖がつき、国体も負けてしまいました。
その後に3年生で一度話し合って、1回リセットしたからこそ春高に向けて頑張ることができたと思います。
――レシーブをはじめ、春高ではインターハイからパワーアップした姿を見せました。その要因は何でしょうか?
北窓 レシーブの練習量は変えていませんが、それまで打ち手の選手が遠慮していたり、3年生に対して弱く打ってしまっていたので、それをやめて、思いきり打ってもらうようにしました。そのおかげもあって、強い打球に慣れていったと思います。
平家 インターハイで成徳(下北沢成徳高)のパワーを経験してから、勝つためには練習からそれと同じぐらいのパワーで打って、レシーブができないと勝てないのではないかと話しました。 そこから、打つ選手、レシーブする選手のどちらも意識が高まったと思います。
北窓 国体が終わった11月ごろには、大学生と練習試合をしても、レシーブが上がる感覚はありました。
そのほかには、スパイクとブロックを徹底して練習しました。ブロックはインターハイの下北(下北沢成徳高)戦でも、九文(九州文化学園高〔長崎〕)戦でもすごくミスが多くて。それから修正しよう、という話になりました。
岩城 自分はライトでプレーしていた時期もあり、そこからミドルブロッカーにポジションが変わったときに、ブロックのミスが目立っていました。ただ、練習で力を入れたことで、それまではブロックを利用されていたのが、だんだん止まったり、後衛とのブロックの関係がうまくできるようになったと思います。
平家 スパイクに関しては、先生(田渕正美監督)から「攻撃力がない」と言われていて。特に二段トスのスパイクが成徳とは全然違っていて、打ちきれていませんでした。そこから相手コートに6人いる中、攻撃側は3人で二段トスを決める練習メニューを考えて、強化することができたのが春高の結果につながったと思います。
北窓 最初は吹かしてばっかりだったよね。
田川 インターハイや国体のころはあまり1回で二段トスが決まることはありませんでしたが、その練習をしたことで、ブロックを利用した打ち方もできるようになって、攻撃力も上がったと思います。
吉村 試合中にセッターがいい状態から攻撃することはあまりないので、そうやって二段トスをスパイカーが打ちきってくれるのは、セッターとしても安心感がありました。
それぞれのプレーでレベルアップし、春高の舞台へ
――そういった練習が実り、春高では準優勝という結果をつかみました。この経験はこれからどうつなげたいですか?
北窓 大勢の人に見られながらセンターコートに立ってプレーをしたことで、自信がわいて、気持ちの持っていき方も学ぶことができました。ただ、今のままではVリーグではプレーが通用しなくなってくると思うので、トレーニングに力を入れたり、技術的な部分をもっと磨いていけたらと思います。
平家 大学も日本一を目指すチームに進むので、もう1回日本一を目指して頑張っていこうと思える自信になりました。大学は4年生までいる中でレギュラー争いをするので、不安もありますが、春高の結果をプラスにしたいです。
岩城 全国大会で準優勝することができたのは自信につながったので、大学でも目標に向かって頑張りたいです。
田川 みんなが言ったように、準優勝することができたのは自信につながります。上を目指す大学に入るので、ここでの自信を生かして頑張ります。
吉村 自分は大学ではバレーを続けませんが、目標に向かってみんなで努力をすることは、これからの人生にも役立つと思います。自分のやりたいことや目標に向かって、大学でも頑張りたいと思います。
――吉村選手が競技に区切りをつけた理由は何ですか?
吉村 ほかにやりたいことが見つかったからです。食べることや自然が好きで、食に携わる仕事で社会の役に立ちたいと思いました。自分は体調を崩しやすいこともあり、体に関わる食事面の仕事に就きたいと思ったことがきっかけです。
みんなの活躍はすごく楽しみだし、頑張ってほしいと思っています。
――お互いへのエールをお願いします
北窓 Vリーグでプレーするので、みんなと試合で会える機会は少ないですが、陰ながら応援しつつも、自分が常に先頭に立って頑張っていきたいと思います。お互い頑張りましょう!
岩城 2人(北窓、吉村)とは会う頻度がだいぶ少なくなると思いますが、北窓はネットで調べれば出てくるので。定期的に結果を見て、たまにほめてあげようかな、と思います(笑)
平家 北窓は国体予選などでは敵になるかもしれないので、嫌だなと思いますが、試合は時々見に行きたいと思います(笑) 吉村は勉強で頑張ってほしいです!
田川 Vリーグに進む北窓や、吉村などそれぞれの道で頑張る人たちのこともしっかり応援したいと思います。
岩城は春高で優秀選手賞に選ばれる活躍
――最後に、この中で高校に入っていちばん成長したのはどなたですか?
北窓 誰かな? せーので言う? せーの!
(岩城、田川、平家が北窓、北窓が吉村、吉村が平家を指さす)
岩城 正直ミノ(吉村)と迷ったんですけど、北窓は最初ちょっと弱かったっていうか(笑)
北窓 めっちゃヘタくそだったんですよ、ほんとに!(笑)
岩城 精神的にも弱かったです。キャプテンになったことも大きかったと思いますが、プレーでも精神面でも強くなって。今はいちばんすごいです。
北窓 自分は中学生のときにJOC杯のメンバーに選ばれていましたが、中学校は全国大会に出たことがないようなチームで。(全国中学生選抜で)オランダ遠征のメンバーに選ばれたのは身長が高いからだったと思っています。誠英に入学したときは多分いちばんヘタくそでした。
平家 中学生のときといちばん違うと思ったのが北窓でした。中学生のときに誠英の練習会で出会って、スパイクを見たときはなんかもう…、ね(笑) 細いし、打球が軽くて今の10分の1くらいの力だったね。今は別人というか、考えられないです。みんなと同じメニューをしているのに、「なんでできるん?」ということが多かったです。
田川 2人が言ったようにプレーだけでなく、キャプテンになってからはチームをまとめる力もすごくて。 3年間でいちばん成長したと思います。
北窓 自分でも感じるくらいにスパイクの威力は上がったし、レシーブも安定したと思います。1年生のときは周りについていくタイプで、絶対キャプテンはしないだろう、と思っていました。でも、この代でキャプテンを決めるころには自分がみんなを引っ張ってきたいという気持ちに変わっていたので、そういう部分でも成長できたと思います。
――誠英に入ってよかったですか?
北窓 バレーはもちろん、人として、社会に出てどんな場面に置かれても考える力や、それを発揮する方法を学ばせてもらいました。先生方や仲間には感謝という言葉では言い表せません。
誠英高の3年間の経験を生かして、それぞれの未来へ
(1列目左から)岩城、平家、北窓(2列目左から)田川、吉村
田川楓夏
たがわ・ふうか/3年/身長170㎝/最高到達点287㎝/麻里布中(山口)出身/アウトサイドヒッター
吉村美乃里
よしむら・みのり/3年/身長171㎝/最高到達点290㎝/厚狭中(山口)出身/セッター
平家愛梨
へいけ・えな/3年/身長173㎝/最高到達点290㎝/伊方中(愛媛)出身/オポジット
北窓絢音
きたまど・あやね/3年/身長182㎝/最高到達点300㎝/松江三中(島根)出身/ミドルブロッカー、オポジット/久光スプリングス内定
岩城遥南
いわき・はるな/3年/身長172㎝/最高到達点290㎝/博多女中(福岡)出身/ミドルブロッカー
取材/田中風太
写真/石塚康隆(NBP)、平野敬久、編集部
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