イタリア・セリエA、2022/23シーズンはプレーオフに突入。現地4月2日には準々決勝ラウンドの第4戦が行われる。石川祐希のミラノはレギュラーシーズン首位のペルージャと争い、現在1勝2敗。3戦先勝方式のため、第4戦を落とせば敗退となるが、次戦の舞台はホーム。地の利を生かして、タイに戻したいところだ。
<準決勝ラウンド進出を懸けて熱戦を繰り広げているミラノ(手前)とペルージャ(奥)/写真:legavolley.it>
ミラノの若き司令塔ポッロは自信を強める
その相手であるペルージャは今季抜きんでた強さを備え、レギュラーシーズンを無敗で走破。昨年末には世界クラブ選手権優勝を果たし、スーペルコッパと合わせて、すでにシーズン二冠を獲得している。目指すは、17/18シーズン以来となるスクデット(リーグタイトル)だ。
これまでの戦いを振り返ると、そのほとんどが勝ち点3(3-0,3-1で勝利)を手にするもの。だが、シーズン終盤に差しかかり、その強さに陰りが見える。プレーオフ準々決勝ラウンド第2戦(3月22日)で、ミラノにフルセットの末に敗北。国内では準決勝で敗れた2月下旬のコッパイタリアに続く黒星となった。
その理由には、「自分たちも相手のレベルに到達していることは証明できている」と自信を強めるミラノのセッター、パオロ・ポッロ(イタリア)の言葉どおり、実力自体が拮抗しているのも一つ。ペルージャのセバスティアン・ソレ(イタリア)もミラノについて、「強力な選手を擁するチーム」と警戒を怠ることはない。
<アタック、ブロック、サーブ、どれも一級品のペルージャ(奥)。写真はフラビオのクイック/写真:legavolley.it>
3、4日おきに試合に臨んでいるペルージャ
その一方で、ペルージャが直面している障害がある。それが、スケジュールだ。
というのも、セリエAと並行して出場しているCEVチャンピオンズリーグも現在、佳境にさしかかっており、ペルージャは主に週末はセリエAのプレーオフ、平日はCEVチャンピオンズリーグ、とハードな日程を強いられている。実際に、ペルージャとミラノが3月に行った試合は以下のとおり。
■ペルージャ
5日(vs.ターラント)、8日(vs.ベルリン/CEV準々決勝1)、12日(vs.ルーベ)、15日(vs.ベルリン/CEV準々決勝2)、18日(vs.ミラノ/PO1)、22日(vs.ミラノ/PO2)、26日(vs.ミラノ/PO3)、29日(vs.ケンジェジン-コジエ/CEV準決勝1)…計8試合
■ミラノ
4日(vs.ルーベ)、12日(vs.ターラント)、18日(vs.ペルージャ/PO1)、22日(vs.ペルージャ/PO2)、26日(vs.ペルージャ/PO3)…計5試合
※PO…プレーオフ/CEV…CEVチャンピオンズリーグ
<ペルージャの攻撃を組み立てるは、シモーネ・ジャネッリ(イタリア)/写真:CEV>
<次ページ>巧みな選手起用は今季のペルージャの強みでも
<充実したメンバーをそろえるペルージャはイタリアそして欧州の頂点を目指す/写真:CEV>
巧みな選手起用は今季のペルージャの強みでも
なお、ベルリンはドイツ・ブンデスリーガ、ケンジェジン-コジエはポーランド・プラスリーガの昨季チャンピンチーム。それらの相手と強度の高い試合を繰り広げ、なおかつ、ホーム&アウェーで国内外への移動を伴うのだから、その疲労度は計り知れないだろう。もちろんペルージャとしては選手層を厚くして今季に臨んでおり、CEVチャンピオンズリーグを想定して、試合によってガラリとオーダーを変える“ターンオーバー制”を採用。レギュラーシーズン中にアンドレア・アナスタージ監督は「さまざまなローテーションをテストすることで戦術的解決を図っている」と語っていた。
それは試合の中でも同様で、ミラノとのプレーオフ準々決勝ラウンド第3戦(3月26日)では第1セットを落とすと、第2セット開始時からエースのウィルフレド・レオン(ポーランド)やオポジットのヘスス・エレーラ(キューバ)をベンチに下げる。代わりに投入されたオレイ・プロトニスキ(ウクライナ)が18得点、カミル・リキリチ(ルクセンブルク)が20得点をあげて、逆転勝利に成功。これにはミラノのジャン・パトリ(フランス)も「第2セットを落として以降は、まるで平手打ちを食らったかのように苦しんだ」と白旗をあげた。
<戦況を見極め、すかさず選手交代のカードを切るアナスタージ監督の手腕は見事/写真:legavolley.it>
選手層は厚いが…。ミスが目立ってきている
とはいえ、である。第1セットでレオンやエレーラが低調に終わった事実(とくにエレーラは無得点)は不安要素だ。また、3月29日のCEVチャンピオンズリーグ準決勝ラウンド第1戦では敵地でケンジェジン-コジエに1-3で敗北。アタック決定率やブロック決定本数、レシーブ返球率でいずれも相手を下回ったほか、サーブミスや被サービスエースが目立った内容に、アナスタージ監督は「このレベルの相手と対戦するには、このサーブの質では難しい。効果的なプレーを繰り出せないまま、多くのミスを犯した」と苦い表情を浮かべた。
レオンを筆頭に強烈なサーブで相手を崩し、フラビオ・グアルベルト(ブラジル)らのブロックで仕留める“サーブ&ブロック”が強みだが、そのサーブが鳴りを潜めると、勝機は相手に渡る。そして、ミラノも名手マッテオ・ピアノ(イタリア)を始め、ミドルブロッカー陣や石川のサイド陣は個々で高いブロック力を備えているだけに、ペルージャのお株を奪うような場面は、このプレーオフで幾度となく見られている。
“ブロックデビルズ”の愛称を持つペルージャとて、悪魔ではなく人間だ。クラブ史上初の四強入りを目指すミラノにも十分チャンスはある。
<ミラノのオスニエル・メルガレホ(右端)とペルージャのエレーラ(中央)によるキューバ代表のマッチアップも見ものだ/写真:legavolley.it>
(文/坂口功将〔編集部〕)