男子日本代表のフィリップ・ブラン監督が、今年度の日本代表37名の発表に伴い、4月7日(金)にリモート会見を行った。今シーズンのプランから、それぞれの選手への評価まで、会見冒頭に語った意気込みを全文でお届けする(コメントを一部改変)。9月末から東京で行われるFIVBパリオリンピック予選/ワールドカップバレー2023でのパリオリンピック出場権獲得に向け、力強く語った
皆さんこんにちは。
私たちのチームの未来について話す前に、先日亡くなられた藤井(直伸)さんに思いを寄せたいと思います。彼はスポーツに情熱的な選手で、チームのプロジェクトに対しても非常に貢献してくれました。日々、彼と活動することに私はとても喜びを覚えていました。彼はこれからもこの代表チームのメンバーとして、私たちの心にあり続けるでしょう。藤井さんのご冥福をお祈りいたします。ありがとうございます。
パリオリンピックへAチーム、Bチーム問わず一丸で
2023年は私たちのオリンピック計画にとって重要な年です。今シーズンは大会数が多く、10月に東京で開幕されるOQTでフィナーレを迎えます。目標はパリオリンピックへの出場権を獲得するという、私たちの夢を実現することです。
ですから、今シーズンのスローガンは「ALL FOR PARIS CHATCH OUR DREAM」です。私たちの最大の望みはパリ行きの切符を獲得することです。できれば、今シーズン中に。
オリンピックへの切符を獲得するためには、なにより世界ランキングにおいて、アジア首位のポジションを維持すること。またはOQTで直接出場権を獲得することです。
このOQTは次の理由により、この1年で最も重要な大会です。
私たちはここ日本で、今年は何の制約もなく観客の皆さんの前でプレーするからです。また、オリンピックへの直通の切符を得ることによって、2024年はオリンピックでのパフォーマンスを高めることだけに集中できるからです。
今回出場権が得られなければ、2024年5月まで(パリオリンピックの)出場を確定させることができません。
OQTの組み合わせ抽選会の結果は、私たちにとってあまり好ましい結果ではありませんでしたが、この挑戦に立ち向かう準備をしなければなりません。今年の10月にセルビア、スロベニア、アメリカに対して非常に高いパフォーマンスを発揮し続けることができなければなりません。
しかし、プール内でオリンピック出場権を得られる上位2チーム以内を確かなものにするためには、チーム力と決意も必要です。
私たちはVNL(ネーションズリーグ)とアジア選手権大会を利用して、オリンピック出場権の懸かった大会に向けて、準備を整えます。これらの大会での目標は、高いレベルでのパフォーマンスを発揮し、実現することです。私たちは相手チームがどこであれ、コート上の選手が誰であれ、勝者のメンタルを育て続けなければなりません。
ポーランドで開催されるVNLのファイナルラウンドに2年連続で出場する、そしてアジア選手権大会の決勝に出場するという野心を持たなければならないのです。
この2023年シーズンのメンバーはいくつかの基準を満たしています。
まず、2022年のパフォーマンスがよかったです。新しいシーズンに向けて多くのプラスの経験を重ねてきました。
私たちは2023年のシーズン開幕から素晴らしいパフォーマンスを発揮しないといけません。ご承知のとおり、VNLの初戦は、アジアの直接の対戦相手であるイランとの試合です。今年10月に私たちが最良の順位で終えるためには、シーズンを通して高いパフォーマンスを維持する必要があります。
私たちが考慮すべき基準はほかにもあります。2023年のシーズン中にプレーする試合数が非常に多いこと。OQTの競技方式が9日間で7試合ということ。いつも同じスタートメンバーでプレーできるわけではありません。従って、チーム内のすべての選手が活躍できる必要があります。必要に応じて選手を入れ替えることができるように、Bチームの力を借りながら、チーム一丸とならないといけません。このBチームは、アジア大会でも結果を挙げる必要があります。
(昨年の)世界選手権でのフランス戦では、フランスチームは交代した選手の質の高さのおかげで勝利したとも言えます。このことから私たちは厳しい場面でのコントロールをさらに効果的にするために、チーム内の選手たちの相互補完性をさらに高めていかないといけません。
解決策の一部は、必要に応じて、チームに身体的、戦術的、または精神的な解決策をもたらすことができる、新しい選手や才能をメンバーに加えることにあります。
各ポジションの選手へ指揮官の期待
チーム内の役割別により具体的に見ていきましょう。まずはセッターです。
関田誠大さんは、近年大きな経験を積み重ねてきました。彼は成長し続けています。経験とリーダーシップの確かな深津旭弘さんと、昨年チームメンバーだった大宅真樹さんから、関田さんのより最適な相棒を見いださなければなりません。
若手有望選手として山本龍さんを選出しました。昨年12月に一緒に練習しましたが、素晴らしい戦術的可能性を見せてくれました。永露元稀さんは昨年もチームメンバーでしたが、その成長を確認しなければなりません。プレーオフ中にウルフドッグス名古屋での成長を注視したいと思います。
次にオポジットです。
西田有志さんは(世界選手権の)フランス戦で非常にレベルの高い活躍をしました。彼は少々複雑なVリーグシーズンを過ごしましたが、すぐにポテンシャルを完全に取り戻し、私たちをトップへと導いてくれると確信しています。
宮浦健人さんは西田さんのバックアップですが、西山大翔さんにも興味があります。ビデオで拝見したり、彼の監督(ティリ・ロラン〔パナソニックパンサーズ〕)からの報告を聞いたりする限り、大きく成長しています。2枚替えの際に非常に役立つであろう身体的な資質や、アタック、ブロック、サーブの資質を備えています。
そして、ミドルブロッカーです。
小野寺太志さんと山内晶大さんは世界選手権で日本チームのミドルブロッカーでした。山内さんは2022シーズンでとてもよかったですが、今シーズンはさらに一歩前進すると確信しています。小野寺さんの目標は攻撃力を高めることです。
髙橋健太郎さんはチームに戻り、身体的インパクトとブロックでのパフォーマンスを強化していくでしょう。
村山豪さんとエバデダン ラリーさんはこのポジションのフィジカル基準を完全には備えていないとしても、チームの一員としての資質を持っていることを所属チームで示しています。
麻野堅斗さんはこの冬、レベルの高い技術力と精神力を私に見せてくれました。しかし、左利きのミドルブロッカーを高いレベルでプレーさせるには多くの時間を要しますので、じっくり見極めたいと思います。
ミドルブロッカーは若手有望選手の育成が必要なポジションです。そのためにはBチームが不可欠であり、若い選手たちがこのポジションで成長を実現させてくれることを期待しています。
次にアウトサイドヒッターです。
キャプテンの石川祐希さんはイタリアで素晴らしいシーズンを過ごしています。彼は試合のリーダーになるだけでなく、ロッカールームでもリーダーになるでしょう。コンデイションを整え、代表チームでの大会復帰をうまく調整する必要があります。
髙橋藍さんもパドヴァで非常にいいシーズンを過ごし、彼のパフォーマンスは一歩前進しました。
大塚達宣さんと高梨健太さんは2022年、彼らのバックアップで、クラブチームではVリーグのシーズンが好調でした。
富田将馬さんはサーブレシーブの質のよい選手で、常に高い評価をしています。
甲斐優斗さんはアウトサイドヒッターのポジションにおいて、この冬、飛躍的な進歩を遂げました。彼は決断力があり、新しい技術を素早く取り入れる力があります。アウトサイドヒッターのポジションでも、2枚替えでも使える可能性があります。
これからの2ヵ月間、もし彼が成長を続けるなら、Aチームでの一時的な起用も考える必要があるでしょう。Bチームでプレーしなければならない場合、このポジションでの経験があり、レシーブの質の高い選手と(対角を)組むべきです。
そして、リベロです。山本智大さんと小川智大さんは代表チームの2人のリベロです。
築城(井手)智さんはベルリンのクラブチームで素晴らしいシーズンを過ごしました。欧州チャンピオンズリーグで強力なサーブを受けた経験があります。
高橋和幸さんは非常にポテンシャルが高く、備一真さんはVリーグでサーブレシーブ賞を受賞しました。彼らでリベロチームを構成します。
ご静聴ありがとうございました。
初選出は6人 石川祐希、髙橋藍ら男子日本代表2023年度登録メンバー37人を発表
麻野堅斗が早稲田大に入学 2年連続日本代表入りを心待ち「またレベルの高い環境でバレーがしたい」
ネーションズリーグ2023 男子日本代表試合日程&テレビ放送スケジュール
これまでのフィリップ・ブラン監督の会見を振り返る
【世界選手権後の記者会見を振り返る】
世界選手権の激闘を終えて
①「将来にとって有益な敗北」フィリップ・ブラン男子日本代表監督
②「キープレーヤーがいなくても勝利できることを示した」フィリップ・ブラン男子日本代表監督
③「近い将来トップ6と肩を並べるチームに」フィリップ・ブラン男子日本代表監督
【監督就任時会見を振り返る】
男子日本代表 フィリップ・ブラン監督の決意