2022年度はインターハイで初優勝を飾りながら、春高ではベスト4と悔しい結果に終わった東山高(京都)。2023年度のキャプテンに就任した花村知哉が、新シーズンの決意を口にした。悔しさが募った1年を経て、次こそは目標の「全国三冠」を達成する
左ヒザをかばい満足のいくプレーはできず
頭ではわかっていた。だが、思い通りに体が動かなかった。
ともに全国二冠を目指す鎮西高(熊本)との春高準決勝。第5セットは10-11と逆転を許した。相手サーバーにはエース舛本颯真(現・中央大1年)。これ以上の連続失点は許されない場面だ。バックライトで構える花村には確信があった。
「(コートの)中に入ってくる」
ボールをななめにとらえる舛本のサーブは、コートの外側へと大きく曲がる。ライト側から放たれたボールは、予測通りの軌道を描いてきた。それでも、だ。
「いつもだったら左足でふんばって、ボールに触ることができたかもしれません。でも、ふんばろうとしたら力が入らなくて」
サイドライン際を突くノータッチエース。ボールに触れられず、花村はコートに右手をついてよろめいた。その後も舛本のサーブは続き、5連続失点で大勢は決まった。
涙を見せる仲間たちとは違い、試合後は感情を抑えた。「正直、自分がチームに何もいい影響を与えられなかったというか、引っ張ることができなかったので」。だがその後に、さまざまな思いが湧き上がる。「決勝のセンターコートで3年生を胴上げできなかった悔しさがこみ上げてきて…」。テレビのインタビューを受けるころには、目は真っ赤になっていた。
土壇場でふんばりが利かなかった左ヒザは、限界寸前だった。最初に違和感があったのは昨年10月の九州遠征後。その後は治療を続けながらも出場を続けたが、本戦ではベストパフォーマンスを出せなかった。
「ケガのせいにはしたくないですが、かばっていたり、練習で思いきり跳べていなくて。自分のスパイク力がだんだん落ちていることもわかっていました。スパイクで貢献ができなかったのが、いちばん悔しいです」
大会後のMRI検査では、「疲労骨折の疑いがあるような症状」と春高前より症状が悪化していることが判明。その後は練習には参加せず、回復に専念した。
「ケガは自分のケア不足だと思っているので。毎日の練習後だったり、お風呂を上がった後のストレッチとか、もっとできることはあった。自分はそこがまだおろそかだったので、これからのバレーボール人生に向けて気づかされたことではあります。でも、もっとケアをしておけば、と感じます」
キャプテンとしての理想像
涙とともに幕を閉じた2年目だが、ラストイヤーは前を向かないといけない。
2年生時から副キャプテンを務めており、新チームではキャプテンに就任。もともと「人にちょっかいをかけたり、変なことをして笑わせたいタイプ」と自己分析するだけに、気を引き締めた。
「自分ができていないのに、人に注意するのは絶対に違うと思うので。キャプテンになったからには、自覚を持った行動をしようと思っています」
人に言う前に、まずは自分が姿勢で見せる。それは「理想像」であり「マネしていきたい」とリスペクトする先輩の存在が大きい。前キャプテンの池田幸紀(関西大1年)だ。
「幸紀さんは、人に言うからにはいちばん早くに朝練に来ていたり、勉強でも何でもほんとうにまじめに完璧にこなす方なので。だから注意されたとしても、不満を言わずに直そうとする意識がみんなにありました。チームをまとめて、引っ張っていけるようなほんとうにすごいキャプテンで、僕もそんな存在になりたいです」
掲げるのは昨年度と同じ「全国三冠」。「練習からしっかりレベルの高いものを求めて、取れるように頑張っていきたいです」と語るなか、特につかみたいタイトルがある。
「インターハイ、国体もありますが、やっぱり最後は悔しい思いをした春高で絶対に勝ちきるために。どんどん成長して、笑って終われるようにしたいです」
もう涙は流さない。今度はその先頭で、目標を実現してみせる。
花村知哉
はなむら・ともや/3年/身長181㎝/最高到達点330㎝/雄新中(愛媛)/アウトサイドヒッター
攻守に安定感のあるプレーで、1年生時からレギュラー。2年生時には打力を上げ、パイプ攻撃でも存在感を発揮した。兄は花村和哉(順天堂大3年)で、たびたび連絡を取る仲
文・写真/田中風太
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