V1女子デンソー リーグ6位に終るもパワーアップ進行中 今季「BEE CHAMPION」を掲げて得たもの
- SV女子
- 2023.05.01
2022-23シーズンで創部50周年を迎えたデンソーエアリービーズ。記念すべき節目の年に、初のVリーグ制覇を成し遂げるべく、「BEE CHAMPION」とスローガンを掲げて戦い抜いた。「BEE」はチーム名の「エアリービーズ(快活なミツバチたち)」の「ビー」と「Be(~になる)」をかけており、「ミツバチである私たちがチャンピオンになる」という思いが込められている。しかし、リーグの結果は6位と、掲げた目標には及ばなかった。
「トップカテゴリーに所属しているわけですから、最短最速で、毎シーズントップを目指すのは当たり前のこと。目標に届かず非常に悔しい思いです」。2013-14シーズン以来、8シーズンぶりにデンソーの指揮をとった辻健志監督は語気を強めた。「しかし」と監督は続ける。「『もう一つのBEE CHAMPION』実現に向けて、今季、基盤が作れたと思います」。
スローガンの「BEE CHAMPION」には、「Vリーグ優勝を目指す」というだけでなく、もう一つの意味が込められている。
Vリーグでは厳しいシーズンを過ごしたが
チーム作りは順調だった…、しかし
2022年6月。辻監督が就任し、キックオフを迎えた新生デンソー。当初から、監督が特に意識してチームに投げかけてきたことが2つある。「キャリアや年齢、立場に関係なく、密に意見を言い合える環境をつくること」、そして「オフェンスのバリエーションを増やすこと」だ。これらに主眼を置き、夏場のトレーニングに励んだ。シーズン前、森谷史佳主将はチームの状態をこう語っている。
「選手はみんな伸び伸びとバレーボールに打ち込めています。それぞれが意見を持っていい状態で練習できており、細かくコミュニケーションをとることも全体で意識できています。特にオフェンス面に力を入れて取り組んできましたので、もともとの強みである固いディフェンスに、多彩な攻撃を加えてリーグに臨みます」。
確実にサーブレシーブを返し、バックアタックを含むさまざまな攻撃を選べる状態にして戦いたい。選手たちの能力は十分、コミュニケーションも円滑で、練習も着実に積めている。チーム形成は順調だった。
しかし「フタを開けてみると」ということがある。いざシーズンインすると、デンソーは開幕から3連敗を喫すことになる。
11月6日のシーズン初勝利に思わず涙する松井珠己
動揺した開幕3連敗 立て直しのきっかけはコミュニケーション
2022年11月6日、日立Astemoリヴァーレ戦。開幕から4戦目となるこの日、デンソーはフルセットの末に今季初白星を挙げた。コート上の6人も、ベンチに控える選手やスタッフにも、目には一様に光るものがあった。それが、開幕からの3戦がいかに苦しかったかを物語っていた。
「こんなに連敗してスタートすることなんてなかったので…、連敗中は混乱しました。勝った瞬間はホッとする気持ちが強かった」と森谷主将は初勝利を振り返る。デンソーが開幕から3連敗以上を喫したのは、2014-15シーズン以来。今の選手たちは体験したことのない事態だった。連敗、という事実に直面すると、それまで自分たちが自信を持っていたものが揺らいだ。
「自分自身にも迷いがあったと思います」と、辻監督も序盤戦について語る。「敗戦が続き、『負けを取り返そう』と対策することの方が多くなってしまいました。『自分たちの取り組んできたことを発揮しよう』というよりも、『何を変えれば勝てるか』という視点が強くなった。それでも『自分たちのやりたいことをやるんだ』と、徹底した方がよかったのか…、正直、自分の判断については、今も答えの出せない気持ちがあります」。当時を想起して、苦虫をかみ潰したような顔になる。
森谷も言う。「負けていると声のかけ合いが不足しがちで、悪循環を生んでしまった」。密なコミュニケーションにも意識して取り組んできたはずだったが、開幕からの結果が彼女たちから声を奪った。これが細かなコンビのミスにつながり、練習してきた多彩なオフェンスを十分に発揮できなくなった。「4戦目の前に、綿密に意見を出し合う時間をもちました。本音で話し合えたことがいいきっかけとなり、初勝利につながったと思います」。森谷は、「どんな状況でもコミュニケーションを絶やさないことがいかに重要か」を痛感したという。