2022-23 Vリーグは4月23日に全日程が終了。22日に行われた女子ファイナルではNECレッドロケッツが東レアローズを下し、優勝に輝いた。昨年末の皇后杯に続き、あと一歩届かなかった東レ。エース石川真佑は試合後、大粒の涙を隠さなかった。
<試合後の整列でも、思いがあふれ出た石川(右から2番目)>
チャンピオンシップポイントから逆転負け
あと1点なのに、その1点が遠い。2セットダウンからフルセットに持ち込んだ東レは最終第5セット、14-12とチャンピオンシップポイントに到達する。だが、NECの粘りの前にじりじりと点差を詰められる。はては逆転を許し、14-15から最後は石川のアタックがブロックされて、試合終了となった。
「最後、せなさん(関菜々巳)がトスを私に持ってきてくれたのに、点数を取りきれなかった。私がチームを勝たせてあげることができなかった」
シャットされた石川はそのままコートに突っ伏した。
歓喜に沸くNECをネットの向こうに、東レの選手たちは敗戦に打ちひしがれた。石川もあふれる悔し涙が止まらない。その石川を、どれだけの時間だろうか、包み込むように抱きしめたのが井上奈々朱だった。
<⑩石川を温かく抱きしめる井上。仲間たちも続いた>
ねぎらいの言葉と送るエール
「レギュラーシーズン1戦目から、コンディション面についても若いながらしっかりと向き合ってきたので、いちばんには『お疲れさま』と言いたいなと思ったんです」
Vリーグでの経歴は15シーズンを数えるベテランの井上。17/18シーズンから東レでプレーし、出身校を下北沢成徳高(東京)で同じくする“後輩”石川が入団したころから、その成長を見てきた。井上が語るに、石川はプロフェッショナルそのものだった。
「1年目から試合に出続けて、彼女は常にいい状態で試合に臨むんです。そこでベストパフォーマンスを発揮する。その頑張りが最後は結果として出なかったのは残念でしたが、試合後の彼女から伝わってくるものを私は感じました」
<今季は日本人選手最多得点記録を更新するなど活躍した石川>
石川自身は入団1年目に黒鷲旗優勝を味わったが、その後は皇后杯で3度、Vリーグでは今季も含めて3度、準優勝に終わっている。「チームを勝たせたい」というエースの自覚を携える彼女にとって、その悔しさは計り知れない。一方で、22/23シーズンかぎりで東レを退団し、次のステップへと歩みを進める。その石川へ井上はエールを送った。
「まだまだ彼女自身が望む“完璧”ではないと思うので。これから世界と戦っていくうえで、小柄でも戦えるのを証明できると思いますし、それをたくさんの日本人選手に伝えていってほしい。そうすれば、世界への扉が開くはずです。自分のよさをいかに通用させるか、それをどんどん磨いてほしいと思います」
世界で見ると小柄な石川だが、その背中には目いっぱいの、大きな期待が注がれている。
<銀メダルの悔しさはあれど、敢闘賞に選出された>
(文/坂口功将〔編集部〕 写真/中川和泉〔編集部〕)