V1男子のパナソニックパンサーズは、契約満了によりミハウ・クビアクが退団することを5月8日(月)に発表した。クビアクは2016-17シーズンに入団し、2017-18シーズンからはリーグ連覇に貢献するなど7シーズンにわたって活躍。発想豊かなプレーの数々で、日本のバレーボール界にも大きな影響を与えた。苦楽をともにしてきた清水邦広、深津英臣が、そのすごさを語った
5月5日(金・祝)の黒鷲旗全日本男女選抜大会準決勝で、パナソニックはサントリーサンバーズに敗れた。今シーズン最後の戦いを終えると、引退する渡辺奏吾、鈴木祐貴に続いて、クビアクが宙を舞った。その時点では退団発表はしていなかったが、別れのときを暗示していた。
コートを去る前にクビアクと抱き合った清水は、しみじみと言った。
「間近にいて、彼のファイティングスピリットであったり、プロとしての生き様をすごく感じていました。長いリーグの中で、ここで勝たないといけないというポイントを押さえながら戦っていて。一緒にできて、すごく勉強することができたと思います」
身長192㎝と、世界的に見れば高さはない。それでも、相手の意表をつき、体格の近い日本人もお手本にできるようなクビアクのプレーは、日本バレーの固定観念を覆した。清水もその影響の大きさを感じている。
「クビは『THE・オールラウンドプレーヤー』という存在。彼をお手本のように勉強して、まねして、練習して。クビが来たからこそ、日本のオールラウンドプレーヤーがすごく増えたことが印象に残っています」
ふだんからAチーム、Bチームにかかわらず練習するパナソニックでは、2人は何度もネット越しに対峙した。チームメートでもあり、「クビにスパイクを決められたり、止められたりしたら嫌」と切磋琢磨してきたライバル。退団後、もし戦う機会があれば「多分、クビは僕のクセを全部知り尽くしているので、やりづらいと思います。でも逆に僕はクビのクセを全部知っているので、楽しみが増えるんじゃないかと思います」とニヤリと笑った。
「勝つために」最善を尽くすクビアクの姿に、深津も驚かされた一人だ。
「監督から言われるならわかるんですけど、セッターにも『もっとこうしたほうがいいんじゃない?』って言うし。自分の専門外のこともアドバイスしてくれるのもすごいなと思います」
クビアクを見習ったのは、同じスパイカーだけではない。発想豊かなプレーができるのは、相手のコートがよく見えているからこそ。「自分のコートのことも、相手の弱点も理解していて、それをいち早く見つけられる選手。コートの中の情報をすぐに把握するように、彼を見習ってやってきた部分はありました」とセッターとして貪欲に吸収した。
これまで何度もトスを上げ、歓喜の瞬間にはいつも同じコートにいた。「日本のバレーを変えて、パンサーズが強いと思わせてくれた一人なので。当時、まだまだ日本にはなかったスキルやファイティングスピリット、コートの外でのプロ意識という部分で勉強させてくれたと思います」と感謝し、ともに戦った7年間を言葉にした。
「結果とかそういうことではなくて、ひと言で言うと楽しかった。小さくて、より日本人らしい体格で。彼の発想、彼と一緒にコートに立ってバレーするのは楽しかったですね」
クビアクとともにパナソニックの一時代を築いてきた2人。盟友のことを語るその表情は、誇らしげだった。
文/田中風太
【関連記事】