黒鷲旗全日本男女選抜大会も終了し、Vリーグはオフシーズンへ。各チーム、来シーズンに向けてこれから本格的に始動することになる。「このオフはやらなければいけないことが山積み。大変な1年になることは間違いない。でも楽しみでもあります、僕たちがどう変わっていけるか」。V2男子のヴィアティン三重を率いる落合一輝主将は、来季を見据えて目に炎をたたえる。
選手層の問題解消は急務 一人一人の伸びしろに期待
「今季の結果は、重く受け止めています」。2022-23シーズンのV2男子を13勝14敗の6位で終えたことに触れ、倉田真監督は眉をひそめる。リーグ前半は9勝5敗の3位で折り返したが、リーグ後半は黒星が先行。特に2月19日からの4連敗がひびき、優勝戦線から後退した。2月4日の試合で、リベロ鳥原大地がヒザを負傷し離脱。これをきっかけとした苦しい台所事情が解決できなかったことが、後半の失速につながったと倉田監督は振り返る。「ふだんアウトサイドヒッターの安田(瑛亮)や松岡(将希)らがリベロを務めてくれましたが、彼らを動かすと、では誰をスパイカーに…、という状態でした。台所事情の厳しさについては、監督として痛感しています」。昨季、リベロを務めていた外崎航平の移籍を機に、今季からリベロに転向して戦った鳥原について「本当にいい働きをしてくれていた。最後までいてくれたら、と思った」と賞賛したのち、監督は続ける。「しかし、もっと何重にも互いにカバーし合える体制を築かないといけませんでした。戦えるバリエーションをもっと持っていなければならなかった」。
倉田監督は、バリエーションを増やすという課題について、「補強はもちろん行うが」と前置きしたうえで「ケガをした選手の回復もありますし、今季の結果や経験から、選手たちが何を感じて、どうあがいてくれるか。一人一人が成長して、チームとして選手層を厚くしていきたい。自分たちの力でいろんな戦い方ができる、というのを強みにしていかなければ」と話す。
落合主将も言う。「選手層に関しては、選手の数がどうという問題ではなくて。例えば僕が1つの動きしかできなかったところが3つできるようになれば、パターンは3つに増える」。まず自分たちにできることをすべてやりたい、と落合主将の拳には力が入る。
“盟友”に見た結果を導くための手がかり
課題の多いシーズンとなったヴィアティンにとって、悔しくも参考となったのがヴォレアス北海道だ。「ヴォレアスさんがああいう結果(V1昇格)を出したことで、今後目指すラインをイメージしやすくなりました。そういう意味で、ヴォレアスさんには感謝の思いです」。レギュラーラウンドを25勝2敗で優勝し、チャレンジマッチ(入替戦)で大分三好ヴァイセアドラーに勝利したヴォレアス。来季のV1昇格を決めたその姿から得たものは大きい、と倉田監督。「『ここまでできたら戦える、勝てる、V1へ行ける』という指標を間近で見させていただいた。特に参考になったのはバリエーションの豊富さ。新外国人選手の(マキネン・)ペートゥー選手だけでなく、得点源の張(ユーシェン)選手はもちろん、佐々木博秋選手、戸田拓也選手といったスパイカーたちの守備のよさも光った。それぞれが昨季からブラッシュアップして、どういう組み合わせでも戦える状態だった。今季のヴォレアスは切れるカードが豊富でした」。新加入選手が活躍しただけでなく、もといた選手たちが多彩なバリエーションを形成した。まさにヴィアティンの今後に取り入れたい要素だった。
「向こうがどう思っているかはわからないですが、僕たちはヴォレアスのことを意識しています」。2017-18シーズンから同時にV3男子へ参入したこともあり、ヴォレアスのことは「ちょっと特別なんです」と言う落合。そんなヴォレアスのことは、もちろんよく観察していた。「悔しいですよ。先に行かれた、と思います。今季のヴォレアスは誰が出ても力を発揮できていた。全員サーブもよかったですし、勝負どころでのミスが少なく、(セット)終盤の1点を取りきる力がすごかった。意識がはるかに高かった。肌で感じました」。
落合は続ける。「ヴォレアスが勝った(V1へ昇格した)のは、彼らがプロだからとは思わない。環境に甘えたりせず、一人一人意識高く取り組んできたのがわかりました。だから結果が出た。彼らが勝ったのは、彼らがヴォレアスだから」。豊富なバリエーションを形成するための、そして結果を導くための、その粋を盟友に見た。
「大切なことは結果に表れる」 強いヴィアティンを見せるために
バリエーションを増やすための取り組みについて、落合はこう語る。「ふだんやらないことをやると、ミスの確率が上がります。どのメンバーがどういう組み合わせで試合に出ても、『いつも通り』力を発揮できるよう、すべてのバリエーションを十分に練習しなくてはいけません。そのためには、一人一人が考えて練習する必要があります。やみくもにやるのではダメ。練習時間には限りがあるので」。
ヴィアティンの選手たちは、週5日フルタイムで仕事に就いており、火、木、土、日を全体練習に充ててバレーボールと仕事を両立している。仕事は選手によって夜勤もあれば、残業の日もある。リーグ中は「仕事の都合で今週は1回しか練習できなかった」という状態で試合に臨むこともあるという。そういう環境だからこそ、一人一人の意識をさらに高める必要がある、と落合は感じている。
「まずは、自分たちの環境を改めてよく理解するところから、今一度確認し合いたい。(就業先の)企業の理解があって、スポンサー様が協力してくれて、ファンの方々が見てくれて…、たくさんの人がいてくれて、バレーボールができている。意識と行動を変えていくには、そういう大切なことを再認識するところからかな、と思います。そういうことは、結果に表れるんです」。
落合の視線は上がる。握られた拳にはいっそう力が入る。「今季は苦しいシーズンでした。でも、大切にしなきゃいけないことが見えた、それを考える時間をたくさんとれたシーズンだったとも言えます。痛感しました、『やっぱ勝ってナンボ』だなって。ファンの皆さんに強いヴィアティン、勝つヴィアティンを見せたい」。
結果を示したい。思い描く姿になりたい。理想をかなえるために、ヴィアティンはすでに走り出している。
取材/淺井恭子
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