今年3月17日に発表された2024年パリオリンピック予選の出場国にロシアの名前はなく、2022年2月に始まったウクライナへの軍事侵攻に対する制裁は今も続いている。政治とスポーツは別物、とはよく言われたものだが。
さて、その状況や過去の東西冷戦といった歴史を踏まえると、アメリカ代表の選手がロシア・スーパーリーグでプレーしているのはどこか異質に映るかもしれない。80年代の名作映画『ロッキー4』では、アメリカvs.ソ連(当時)が描写されていたこともあり…。
その選手とは、マイカ・クリステンソンである。
<マイカ・クリステンソン(Micah Christenson/1993年5月8日生まれ/身長198㎝/最高到達点349㎝/アメリカ/セッター)>
リーグ屈指の強豪ゼニト・カザンでプレー
的確なアタッキングチョイスと、時折スパイカー陣顔負けのアタックを繰り出すこの好セッターは、2021/22シーズンからロシアの名門カザンでプレーしている。ロシアバレーボール界の顔、マキシム・ミハイロフや代表のエース、ドミトリー・ボルコフといった面々を操り、在籍2年目の今季はロシアカップ獲得に貢献。今年5月にはプレーオフ決勝でモスクワを3連勝で退け、リーグ通算11度目の優勝に導いた。
その本人に、昨年7月のネーションズリーグ大阪大会で聞いてみた。ロシアでの経験はいかがですか?
「まるで違う世界だからね。パワーがあるし、サーブもアタックも力強い。それに…、やっぱりみんな大きいんだ(笑) そうした違うスタイルの中でプレーすることは、自分の上達につながるし、幅も広がる。違いを経験することは大事だよね」
<ロシアカップ制覇の表彰式でトロフィーを受け取る⑪クリステンソン>
勝負どころでのサービスエースもキラリ
諸外国のリーグはもちろん、代表戦にもなれば、異次元のような高さがネット越しにずらりと並ぶ。それを、いかに攻略していくか。異国の地でレベルアップを目指す理由が、そこにある。
もちろん自身の強みをぶつけることも。ここぞの場面で奪ってみせるクリステンソンのサーブは、ロシアの地で何度も炸裂している。
「そうなんだよ。とにかくサーブで攻めないとね!! それが勝負の鍵になるんだ」
男子アメリカ代表は今年9月のオリンピック予選で来日する予定。どんな姿を見せてくれるだろうか。
<ラリー中に繰り出すアタックは強烈そのもの>
■2022/23ロシア・スーパーリーグ男子ファイナル
〔第1戦(5/1)〕
ゼニト・カザン ○3-0● ディナモ・モスクワ
(25-19,25-20,25-17)
〔第2戦(5/3)〕
ゼニト・カザン ○3-1● ディナモ・モスクワ
(18-25,25-15,25-18,25-21)
〔第3戦(5/7)〕
ゼニト・カザン ○3-2● ディナモ・モスクワ
(23-25,23-25,25-17,30-28,15-13)
カザン:3勝0敗→5シーズンぶり11度目の優勝
(文/坂口功将〔編集部〕 写真/volley.ru)
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(Photo:volley.ru)