大阪を舞台に行われた第71回黒鷲旗全日本男女選抜大会が5月6日(土)に閉幕した。クラブシーズン終盤の行われる黒鷲旗は、ここで引退する選手の姿も見られる。VリーグのDIVISION2 MEN、富士通カワサキレッドスピリッツでキャプテンを務めた栁田百織もその一人だ。そして今回、栁田が予選グループ戦で対戦したV1男子のジェイテクトSTINGSには、小学生時代に所属した小岩クラブ(東京)でチームメートだった柳田将洋の姿があった。お互いを“マサ”“モオリ”と呼び合う2人の対談が実現!!
<柳田将洋(ジェイテクトSTINGS/左)と栁田百織(富士通カワサキレッドスピリッツ/右)>
小学生時代にチームメートも、対戦機会はほとんどなく
直接対決は大会2日目の予選グループ戦。だが、いざ試合が始まると、柳田の姿はアップゾーンにあった。
――事前に知らされていたとか
柳田 大会前から(予選グループ戦の)3試合のうち、一戦目と二戦目のメンバーは言われていて。二試合目はスタメンではありませんでした。
栁田 いやぁ、やってみたかったです。大会の組み合わせが発表されたときから、「これ、ワンチャン、マッチアップあるんじゃないか」って思っていましたから。
――お互いは、どう呼び合っていますか?
栁田 僕はマサ、って。
柳田 僕はモオリ、です。
<栁田にとって現役生活最後の公式戦となった大会で、ネットの向こうには旧友の姿が>
――では。昨年の夏に練習試合で対戦したのが、ほんとうに久しぶりだったそうですね
モオリ それまでも、大学ではちょっとやったくらいじゃなかった?
マサ ほぼないかな。去年の夏が初対戦くらいの感覚だった。小学生の頃は一緒に戦っていたけれど、ネットを挟んで戦う機会はそれほどなかったし…。
モオリ そうそう。
マサ ある意味、懐かしい感じはしたかな。
モオリ その日は、とりあえず練習試合が終わってから話しかけようと思っていて。
マサ ふふふ。なんかね。
モオリ 練習試合とはいえ、試合前にあれこれ話すのもどうかな、って。でも、普通に懐かしかった。
――お互いの印象に変化はありましたか?
モオリ いや、もう全然変わってないですよ!!(笑)
マサ ほんとうに?
モオリ 全然変わってない(きっぱり)。この淡々とした感じは、小学生の頃から一緒。
マサ モオリは小岩クラブに入ってきたときは正直、こんなに上手じゃなくて。今の姿を重ねると、ギャップが僕の中にはある。
モオリ マサが変わったところ…、お酒が飲めるようになったくらい?
マサ それ?(笑)
モオリ プレーは小学生の頃から器用だった。難しいトスを打ちきったり、フェイントもできていて、バレーボールのスキルが備わっているきれいな選手という印象。それが年々、成熟されていった感じかな。
マサ モオリの変わっていないところ…。小学生から比べると、もちろん体つきは変わるけれど、ベースの動きそのものはなかなか変えられないし、変わってないかも。小学生の頃は身体能力もそんなに高いイメージではなかったけれど、高校生くらいから身体能力を生かしてバレーボールをしている印象になって。うん、やっぱり昔と全然違うね。
<富士通のオポジットとして活躍した栁田。19-20、20-21シーズンのV2で最高殊勲選手賞に輝いた>
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<マッチアップは実現しなかったが、試合後に2人は握手を交わした>
違う立場どうしの2人が見ていた、お互いの印象
それぞれのプレーするカテゴリーは、リーグの1部と2部。2人は立つフィールドが異なった。と同時に、お互いの立場も違った。プロ選手と、企業に属した選手だった。
――互いの立場でいえば、柳田選手はプロ、栁田選手はサラリーマンになります
モオリ 大変だな、って。プロ選手はバレーボールで結果を出さなければいけない。それに30歳にもなれば、おそらく体で痛いところやつらい部分が出てくると思うのですが、そことも向き合っていかなければいけないでしょう。とはいえ、それを見せずに結果を出さなければいけない、結果が求められるというのはほんとうに大変だろうな、と思います。
マサ 企業によってタイムスケジュールは変わると思いますが、仕事を終えてから夕方から晩に練習する、そのうえでコンディションを維持しないといけないのは大変だと思います。自分のエネルギーを注ぐのがバレーボールだけではない、それが難しいと思いますし、今だったらV1に上がることにトライしているわけで。そのバランスはすごいな、と。
<柳田は2018年にプロ転向。海外リーグなどを経て、ジェイテクトに移籍加入した22-23シーズンは天皇杯優勝に貢献しMVPに輝いた>
――今大会をもって、栁田選手は現役を引退されます。ねぎらいの言葉をお願いします
マサ モオリ自身も富士通というチームも、V1に上がるという大きな目標を掲げていて、それは僕たちの立場からしたら常に緊張感を与えるものだったわけです。モオリたちのようにおびやかしてくる存在を感じながら練習していましたし、それがいたからこそ頑張ることができました。
モオリ自身、バレーボール界を担ってきた、そして長く続けてきた競技者の一人なので、僕個人としては「ここでバレーボールを離れてほしくない」という思いはひそかにあります。ですし、そういった付き合いがこれからもできたら。ひとまずは「お疲れさま」と言いたいですが、彼自身が積み上げてきたものは本人が思っている以上の価値があると思うので、それを還元してくれたら僕もうれしいなと思っています。
――反対に、これからも現役を続けられる柳田選手にエールをお願いします
モオリ マサには年齢関係なく、最前線でプレーしてほしいです。年齢が上がれば上がるほど、活躍できるフィールドの門は狭くなっていくとは思いますが、そこに向かって常にトライしてほしい。それに今年も日本代表に入っていますから。おそらく今、20代後半の選手たちにとって、マサは目標になる存在だと思うんです。チャレンジしながら、停滞することなく、引き続き自分を磨いて頑張ってほしい。プロ選手として活躍している姿を、僕も見ていたいです。
(取材・黒鷲旗写真/坂口功将〔編集部〕 天皇杯・ポートレート写真/山岡邦彦〔NBP〕)
Vリーグ閉幕&代表カムバック
柳田選手の思いが詰まったインタビューは
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