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春高2025

東山高のスパイカー陣が格上相手につかんだ手応え 松永監督も「あれだけボールをたたいてくれたら楽しみです」 【第71回黒鷲旗】

  • 学生
  • 2023.06.10

 

71回黒鷲旗全日本男女選抜大会が51日(月)から6日(土)に丸善インテックアリーナ大阪(大阪府)で行われた。高校男子で唯一出場した東山高(京都)は03敗でグループ戦敗退に終わったが、格上相手に得るものは多かった

 

 

筑波大戦でスパイクを決め、笑顔を見せる花村

 

高いブロッカーにも強気で打ち込む

 

 勝負を楽しむかのように、花村知哉の口角がわずかに上がった。グループ戦第3戦の筑波大戦は、最終第3セットで13-18と追いかける展開。ネットの向こうには身長197㎝のミドルブロッカー山下彪がいた。およそ15㎝の身長差にも、花村は臆さない。高く上がったレフトへのトスに、力強く踏み込んだ。

 「正直、今までバレーボールをやってきたなかでいちばん調子がよかったので。上がったら絶対に決めてやろうと思って。『決まる気しかしない』という感じでしたね。ほんとうにいちばん強く、前向きな気持ちでスパイクを打てました」

 

 山下の脇を打ち抜くと、力強い打球は相手レシーバーを弾き飛ばした。反撃ののろしを上げるキャプテンの一撃に、仲間たちが、松永理生監督が、両腕を広げて笑顔でコートを駆けた。

 

 今大会、東山高は高校男子で唯一の出場。グループ戦初戦はウルフドッグス名古屋、第2戦ではVC長野トライデンツと、2日を通してV1のチームと対戦した。花村は「特に(身長207㎝の)伏見(大和/WD名古屋)選手が前にきたときは、でかすぎて(笑) 目の前が真っ暗になるぐらいでした」と高校生にはないブロックと対峙。だからこそ、身長210㎝の牧大晃と山下が並ぶ筑波大が相手でも、「あまりプレッシャーを感じずに、いい打ち方ができたかなと思います」と気負わなかった。

 

 花村だけでなく、エース尾藤大輝、サウスポー梶田勘大郎らも迷わず踏み込んだ。第1セットはジュースの末に落としたものの、先にセットポイントに到達。第2セットは13−15から5連続得点で逆転し、フルセットに持ち込んだ。最終第3セットは20-25と落としたが、選手たちの表情には自信がみなぎっていた。試合結果はもちろん、目指してきたかたちを表現できたことも大きいだろう。

 

 

新たな司令塔で攻撃スタイルを変更

 

 昨年度まで2年間は當麻理人(現・東海大1年)が不動の司令塔。高校からセッターを始め、新チームのレギュラーをつかんだ2年生の太田渉稀にとっては、2月の府新人大会がいきなりのデビュー戦だった。同大会は制したものの、セッターとしての経験値のなさから、徐々に課題が浮き彫りになる。「経験値がないのでトスが寝たり、通過点が低くなってしまって」(松永監督)。終盤にエースの尾藤に託すと、マークが集まったところで失点してしまう。悪循環に陥っていた。

 

 そこで、指揮官が「それだとセッターもスパイカーも成長しない。スパイカーに責任を持たせるために」と変えたのがアタッカーのテンポ。ファーストテンポを減らし、セカンドテンポに変えることで、スパイカーに打ちきらせる意識を植え付けた。

 

 

今季から司令塔を務める太田

 

 さらに、今年の春高準決勝(対鎮西高[熊本])ではチーム全体の159本中83本のアタックを放った尾藤の打数を制限。「ほかの選手でチームをつくりながら、(尾藤)大輝には大事なポイントを決める力をつけさせておく」と要所でエースに託した。

 

 尾藤は「春高まで打ちたい場面で上がってきたのが、『ここで欲しい』というところで上がらなくなってきてくるので。モヤモヤするときはあります」と胸の内を明かしながらも、前向きに受け止める。

 「周りのスパイカーが今まで感じてきたことだと思いますし、自分が本数を上げてもらう状況じゃないことをポジティブにとらえて。少ないチャンスで点を取るスパイカーが存在感を発揮すると思うので。相手にとって脅威になるためにも、制限の中でも高い決定率を残せるようになりたいです」

 そのエースは筑波大戦第2セット16-15から牧のバックアタックを連続でブロック。そこからサービスエースを決めると、一気にギアは上がった。バックアタック、ブロックアウト、そして最後はプッシュを決めて、大学生からセットを奪った。「乗っていく感じもありましたし、チームを乗せられる状況に持っていけたのかなと思います」と手応えをつかんだ。

 

 

U19日本代表候補の尾藤は、今季注目のスパイカーの一人

 

 尾藤をはじめとしたスパイカー陣の成長に、松永監督の期待は大きい。「あれだけボールをたたいてくれたら楽しみですよね」。そして、「今日みたいに(尾藤が)当たってきたら使うのはありだと思うので。
そこまでどれだけ待てるか。その選択を委ねられているのに、頑張っていますよね」とセッター太田をたたえることも忘れなかった。

 

 格上との対戦を通して、花村キャプテンは「Vリーガーや大学生にも攻撃は通用したので、みんな自信がついていると思います」と充実感を漂わせた。だが、すぐに表情を引き締める。

 「この自信をおごりにするのではなく、もっともっと成長するという気持ちで練習したいです。去年、自分たちが三冠を目標にしてきたなかで、その壁はとても高かったので。まだまだ成長して、この自信を糧にして頑張っていきたいと思います」

 

 戦いの舞台を高校に戻し、610日(土)、11日(日)にはインターハイ京都府予選会が行われる。最大のライバルである洛南高らを相手に、磨き上げた力を見せつける。

 

文/田中風太(編集部)

写真/山岡邦彦(NBP)、編集部

 

 

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