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御徒町台東中が最後に放った熱 “先輩越え”ならずも「ベストゲーム」と山﨑壱貴監督

 

 バレーボールの第77回東京都中学校選手権大会(以下、都大会)が716日に開幕し、17日を終えて男女ともにベスト8が決まった。そこでは昨年に続いて全国大会出場を目指しながら、道半ばで夢破れたチームがいた。

 

 

台東区御徒町台東中男子バレーボール部

 

【ギャラリー】プレーもハートも熱かった!! 御徒町台東中男子バレーボール部〔15枚〕

 

都大会をベスト16で終えた御徒町台東中

 

 試合が終わった直後から、そしてもう次の試合が始まっているのに。御徒町台東中男子バレーボール部のキャプテン、野村勇輝はあふれる涙を抑えることができなかった。

 最後の夏、都大会はベスト16で敗退。昨年に続く全国大会への道のりは、ここでついえた。

 

「去年、全中(全日本中学校選手権大会)に連れていってもらって、自分たちも出たかったですし、勝って恩返しがしたかった。みんながディグを上げてくれて、けれども自分が打ちきれなかったり、拾いきれなかった。もっともっと決めていれば勝てたと思うので…」

 野村キャプテンは声をふりしぼる。そうして、仲間への思いを明かした。

「個性豊かなメンバーで、全然まとまりがなくて大変でした。でも、この仲間でよかったです」

 

 

都大会2日目、中学バレー最後の試合を終えて涙する野村キャプテン

 

 振り返れば1年前、御徒町台東中は身長187㎝のエースで令和4年度全国中学生選抜にも選ばれた江原修平を擁し、秋田で行われた全中に出場を果たした。当時の3年生たちは小学生からの競技経験者が多く、地力の高さがあったのは確か。それに比べると、今年のメンバーは中学からバレーボールを始めた部員が半分近くだった。

「全中にいった偉大な先輩たちに、ある意味で劣等感を抱きながら、それでもコツコツと頑張る3年生たちでした」(山﨑壱貴監督)

 

 公立校らしく、平日練習4日のうち、学校の体育館が使用できるのは2日だけ、それも1時間半程度だ。また週末も部活動の時間は半日と決められている。それでも、「新チームが始まって、いちばん最初にみんなで話し合って、意見が一致しました」とエースの鈴木晴也が振り返るように、目標はただ一つ。

 先輩たちを越えること、だった。

 

 野村キャプテンいわく、1学年上の“偉大な”先輩たちは「すごいけれど、自分たち以上にハチャメチャ」だったというが、「最後は一つになって戦っていてかっこよかった」と、その姿は映っていた。

 

 

ベスト8進出を懸けて、大森二中(コート右)に挑んだ

 

 

【次ページ】最後の夏、感情を爆発させる姿が見られた

 

 

要所でサービスエースを奪った鈴木

 

最後の夏、感情を爆発させる姿が見られた

 

 とはいえ、劣等感からか元々の性分もあってか、「内気な子たちばかりで、盛り上がるタイプではありませんでした」と山﨑監督。試合では気持ちを出せずにいた。

 

 そんな様子が変わったのは、いよいよ最後の夏を迎えたとき。野村キャプテンは振り返る。

「徐々に、みんなのなかで『勝ちたい』『全国を目指すんだ』という思いが固まって。ほんとうに今年の夏、都のブロック大会から変わりました」

 

 いざ試合が始まる。一点が決まるごとに、全員が感情を爆発させる。全力でガッツポーズし、全力で喜ぶ。「チームが一つになっていく、団結していくのを感じられて、楽しかったです」と鈴木。それはまさに先輩たちに倣い、そして先輩たちに近づいた姿だった。

 

 

コート上では全員が喜びを表現した

 

 その戦いぶりを見て、山﨑監督は「負けたけれど、部員たちには『ベストゲームだったよ』と伝えたいです」とたたえた。目標とする“先輩越え”はできなかった。けれども、部員たちは胸を張る。

「応援してくれた人たちに自分たちのバレーを見せることはできました」と野村キャプテン。感情表現しかり、「やれることはやれたので」という思いがあるからだ。

 

 敗れた大森二中戦、劣勢の場面でもサービスエースを奪った鈴木も、「まだまだ終わりじゃない、という気持ちでサーブを打っていました。御徒町台東中のバレーは、『攻めて、攻めて、攻める』なんです」と熱っぽく語った。

 先輩たちの背中を追いかけた、自分たちの戦いは終わった。と同時に、その姿を見ている後輩たちの戦いがここから始まる。

「去年の先輩たちが見せてくれたものを結果で示して受け継ぐことはできませんでしたが、後輩たちに見せられたものは少なからずあると思うので。自分たちを越えていってほしいです」(野村キャプテン)

 思いはこうして、つながれていく。

 

 

横断幕には「夢への挑戦」の文字。彼らのチャレンジはこれからも続く

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

 

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