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スロベニア男子はなぜ強くなった? ウルナウト主将の答えと浮かぶ石川祐希との共通項

 

 

バレーボールの「FIVBネーションズリーグ2023」の男子大会は、いよいよ大詰め。グダニスク(ポーランド)で現地719日から幕を開けるファイナルラウンドは、8チームよるトーナメント形式で争われる。男子日本代表が目指すはベスト4以上の成績。その第一関門で待ち受けるのが、今秋のオリンピック予選でも対戦するスロベニアだ。

 

 

近年、めきめきと力をつけている男子スロベニア代表

 

日本vs.スロベニア。初対戦は2017年

 

 日本とスロベニア。6年の歳月で、お互いに状況は変わった。置かれた立場というよりは、当人たちが臨んでそこにたどり着いた、というべきだろう。

 日本は昨年の世界選手権で東京2020オリンピック金メダリストのフランスをあと一歩のところまで追い詰め、今年のネーションズリーグ予選ラウンドでは開幕から10連勝。国際舞台における話題の中心にいる。

 一方のスロベニアは19年のヨーロッパ選手権で前年の世界選手権王者であるポーランドを撃破し最終的に準優勝。昨年の世界選手権ではベスト4入りを果たしている。

 ともに今や世界トップレベルの力を備えていると言ってさしつかえない両者の初顔合わせは、2017年のワールドリーグ。それも当時はグループ2でのものだった。

 

 

17年6月10日、高崎アリーナ(群馬)での初対戦は日本がフルセットの末に勝利した(写真:FIVB)

 

代表キャプテンはジェイテクトのウルナウト

 

 今とはランキングの算出方法は違えども、2017年のワールドリーグ直前のスロベニアのFIVBランキングは30位(2016822日時点)。それが現在は8位である(2023715日本稿執筆時点)。なぜ、それほどまでに飛躍を遂げたのか。

 その理由の一つに、選手たちが母国を飛び出して、各国の強豪リーグに身を投じたことがある。2022-23シーズンはVリーグのジェイテクトSTINGSでプレーしたティネ・ウルナウトもその一人。現在、スロベニア代表のキャプテンを務めるウルナウトは語る。

「若いときに、私はスロベニアを出て、強いリーグでプレーするという決断をしました。そして、多くの選手が私に続きました。

 今ではほとんどの選手が強豪リーグでプレーし、より多くの経験を積み、より強くなり、そして代表に還元してくれています。と同時に、もう何年も一緒に戦っているので、常に高みを目指せているというわけです。

 私たちはゴールを見定めており、これが私たちにとって最良の方法なのです」

 ウルナウトは20歳まで国内リーグのブレッドでプレーし、そこで数々のタイトルを手にした。その後は世界最高峰と称されるイタリア・セリエAを主戦場にキャリアを重ねている。そして17年当時の主力メンバーを見ても、その頃と比べるとセリエAやポーランド・プラスリーガという欧州圏でも上位のリーグでプレーする選手が増えているのは歴然だ。

 

 

⑲ロク・モジッチの台頭も追い風に。セリエAで得点王に輝いた若きエースだ

 

 

【次ページ】代表そしてウルナウトにとってのゴールとは

 

 

スロベニア男子バレーボール界を牽引するウルナウト

 

代表そしてウルナウトにとってのゴールとは

 

 そうしたメンバーが代表で集い、国際大会で結果を重ねる。スロベニアはヨーロッパ選手権において19年大会に続き、21年大会でも銀メダルを獲得。もはや、れっきとした強豪国になっている。けれども、その野心が潰えることはない。

「自分たちがハイレベルなバレーボールをできていることはわかっています。ですが、1つの大会だけでいいプレーをするのは、どのチームにもできます。必要なのはどの大会、どの試合でもベストを尽くすために注力することです。

 私たちには常に、倒すべき強敵が存在します。だからこそ、もう少し先の、上のレベルを目指すことが可能なわけです。自分たちがフォーカスするのは、日々レベルアップしていく私たち自身です。

 そうであるからこそ今、私たちはこのような結果を手にしているのだと思います」

 見定めているゴールとは。ウルナウトの答えはぶれない。

「すべての試合でベストを尽くすこと、それがゴールです。そして、オリンピックの切符をつかむこともゴールですね。そのためには秋の予選だけでなく、あらゆるゲームで最大限の力を発揮しなければ。

 もちろん私にとってオリンピックは小さい頃からの夢であり、今は達成したいと願うゴールでもあります」

 

 

ミドルブロッカーの④ヤン・コザメルニクはミラノで石川とチームメートだった一人

 

日本の印象そしてチームメートだった石川祐希のこと

 

 今年のネーションズリーグ予選ラウンド第1週名古屋大会。ウルナウトはVリーガーとしてではなく、代表キャプテンとして愛知に戻ってきた。日本代表の印象を聞くと、「いいチームであることは十分わかっています」と答え、こう続けた。

「(ネーションズリーグ初戦の)イラン戦も自信を持って戦っていると見受けられました。私も(Vリーグで)一緒にプレーし、日本代表の面々の資質がいかに高いかを知っています。イランに完勝を収めましたが、驚くことはありませんでした」

 ジェイテクトでは西田有志や関田誠大らと共闘し、昨年には天皇杯を制したウルナウト。また、石川とも20/21シーズンにはミラノでチームメートになり、CEVチャレンジカップ優勝を味わっている。

 「石川は素晴らしいプレーをしますし、常に成長し続けています。そしてチームを支え、よりよい結果をもたらしています。ミラノも年々、強くなっていますよね。彼の成長を感じますし、私個人としても彼のことは好きですよ」

 石川祐希とティネ・ウルナウト。国を出て、海外リーグにチャレンジし、クラブそして代表とチームを押し上げてきたものどうしだ。そんなフロントランナーに導かれし両チームが激突する。

 パリオリンピック予選日本大会の前哨戦ともいえる、今回の対戦。6年前とはまるで違う景色が、そこには広がっている。

 

 

国際大会でのメダル獲得も視野に収めるスロベニア男子。日本にとって好敵手となりそうな存在だ

 

(取材/坂口功将〔編集部〕 写真/石塚康隆〔NBP〕)

 

 

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