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トップ選手は「勝って学びたい」!? 男子日本代表の躍進を生むプラスのマインドを福澤達哉に聞く

  • コラム
  • 2023.07.20

 バレーボールの男子日本代表は今シーズン最初の大型国際大会「FIVBネーションズリーグ」で開幕から破竹の10連勝を飾るなど過去最高ともいえる戦いを演じた。近年、世界の上位国に肉薄するなど着々とステップアップを重ねてきたものが、ここにきて実を結んでいる。

 

国際舞台で目覚しい成果を上げている男子日本代表。写真はブラジル戦後(写真:FIVB)

 

公式戦で30年ぶりにブラジルから勝利した男子日本代表

 

 2022年の春、石川祐希は記者会見で、イタリア・セリエA2021-22シーズンを振り返り、「過去一、悔しいシーズンでした」と表現した。例年よりも下回った個人成績しかり、チームとしてもプレーオフでは上位勢にはね返され望む結果を手にできなかったことなど、その悔しさにはさまざまな要素がある。そうして、こう続けた。

 

「負けて学ぶこともあると思いますが、僕は勝って学びたい」

 

 その言葉から1年後、石川はイタリアの地でキャリア史上最高というべき結果を残した。チーム成績でいえば、カップ戦、プレーオフでいずれも決勝まであと一歩に迫ってみせた。なかでも、プレーオフでは準々決勝ラウンドで世界クラブ王者ペルージャを撃破。それまで一度も勝てていなかった強敵を下したことで、チームそして石川の姿には自信がみなぎった。

 

 まさにブレイクスルーを果たしたわけだが、その構図は今の男子日本代表にも似ている。例えば、オリンピックで3度の金メダル獲得を誇るブラジルに対して、19年のワールドカップ、21年の東京2020オリンピック、22年のネーションズリーグでは、敗れはするものの、競り合う局面は徐々に増えていった。そうして今年のネーションズリーグで、ついに公式戦では30年ぶりとなる勝利を挙げた。

 

現在はパナソニックで社業に就きつつ、パンサーズのアンバサダーやバレーボールの解説を務める福澤氏

 

勝利したあとの、選手が抱くマインドは2つに分かれる

 

 これまで勝てずにいた、むしろ尊敬と恐れを抱いていた相手から勝利したことで、一気に世界が変わる様子は、これまでスポーツ界で何度も見られてきた。ラグビーの日本代表が15年ワールドカップで強豪・南アフリカから劇的勝利を奪い、その後の飛躍につなげたのは最たる例だ。おそらく彼らには“勝って学べた”ことがあった。

 

 では、アスリート視点で、その真意は。石川の言葉を、バレーボールの元・男子日本代表で長らく活躍し、現在はVリーグのパナソニックパンサーズでアンバサダーを務める福澤達哉氏に聞いてみる。

 

 そもそもアスリートはえてして負けず嫌いで、“勝ちたい”生き物であることは簡単に想像できる。やはり“勝って学びたい”もの?

「“勝って学びたい”という感覚はとても大事なことだと思います」と語り、こう続けた。

 

「勝利したあとの選手の思考は、大きく2つあると思うんです。一つは、『勝ったからよかった』。もう一つは『勝ったけれど、もっとこうすれば、さらに強くなれる』。これは大きな違いです。

 

 印象的だったのは、野球のワールドベースボールクラシックで優勝したあとに、日本の大谷翔平選手がすぐ反省を口にした、というエピソード。たぶん、これぞトップアスリートの感覚なんだろうな、という気がしました。

 

 そういうマインドを持った選手は、勝ち負けで物事を測っていないんですよね」

 

勝利したあとはリラックスした表情が見られるが、その“次”を見据えている

 

【次ページ】選手自身の中にある、勝敗とは異なる評価基準

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