「夢を選手たちがかなえてくれた」太宰府U14クラブが初の全国大会へ 30年来の指導者の思い
- コラム
- 2023.08.18
レシーブとつなぎを磨き、代々ディフェンス力に定評がある太宰府U14クラブ
クラブの立ち上げは8年前。全国クラスの選手を輩出も
地元の小中学生を対象に、そんな活動を続けること20年以上。やがて、社会教育いわゆる地域のスポーツ活動の一つから一歩踏み出し、クラブチームを立ち上げることに。それが8年前。「太宰府U14クラブ」の誕生である。
中学生世代のクラブバレーボール界でいえば、全国大会として「全国ヤングクラブ大会」(以下、全国ヤング)が設けられており、クラブを対象にした大会を催している地域もある。そうした公式戦に、チームとして出場することがかなった。
それでも、やることは変わらない。中学に部活動がなければバレーボールに励むことができる場に。部活に所属していながらさらに上達したいと願う子どもには、その機会を。
特に近年は部活動の減少も見られ、クラブだけで活動する選手も増えた。太宰府U14クラブも例に漏れず、例えば今夏の北海道インターハイに出場した福岡大附大濠高(福岡)のエース山田大凱や日本航空高(山梨)のリベロ野添陽人は出身者であり、中学にバレーボール部がなかった面々だ。彼らOBが強く羽ばたく姿に、高田代表は思いを馳せる。
「大きな舞台で活躍してくれることをうれしく思いますし、今もチームにはクラブでしか活動していない選手もいますので、目標になってくれています」
今年度のキャプテンを務める①大久保
目標の“日本一”へ。くじけ、それでもチャンスをつかんだ
今年度のチームでキャプテンを務める大久保龍之介(3年)は、学校に部活がないメンバーの一人だ。中体連の大会は、まるで別の世界の出来事だった。いざ今年、参加が決まっても――
「試合の雰囲気がわからなかったので、不安でした」
昨年夏、大久保たちの代がスタートしてから、掲げた目標は日本一だった。その時点では、全国ヤングが唯一の全国大会。だが、6月中旬の全国ヤング県予選ではライバルの福岡PROCEED.VBCに決勝で敗れる結果に終わった。
「正直、1週間くらいはショックを引きずっていました。とにかく悔しくて。ですが、全中という大会がもう一つある以上は、全力でやるという思いで切り替えました」
今年の春に中体連への参加が正式に決まってから、そちらのルール【4号球/ネットの高さ230㎝】でも練習はしていたが、本格的に取り組んだのは全国ヤング県予選を終えてから。それでも県大会では初出場初優勝を果たした。舞台は異なるが、自分たちの戦いは続く。その道は全国の舞台へ続いている。
「日本一、と言っておきながら、全国ヤングは予選で敗れて、中体連で負けたら、そこで引退になる。それは選手たちにとってプレッシャーだったと思いますね」(高田代表)
一方で、福岡県を制したちょうどその日、全国ヤングへ“2位枠”での出場の連絡が入った。思ってもいなかった朗報は、選手たちの肩の荷を下ろし、結果として九州大会への追い風になった。
パワフルなアタックが魅力の池田光喜(3年)など攻撃力の高さは今年度の強みだ
今年の夏は「いつもと違って…」と大久保キャプテンがほほえむ理由
長年、地域の小学生を指導してきたなかで、高田代表は何度も子どもたちの選択を見てきた。めきめきと選手たちが上達するほど、その進路を迷うのだ。
おそらくスタンダードなのは、地元の中学へ進むこと。けれども、そこに部活がなければ、太宰府U14クラブにステップアップするか。ただし、そこには全中という中学生にとっての晴れ舞台への道はなく、それなら、よりそこへ近づける学校へ県をまたいでも進学するか、しか選択肢がなかった。
「これまで卒団した子どもたちが、それぞれの学校で活躍して、全中出場を果たしてくれていました。そうして今回、クラブの参加が認められて、チームとしてそこにたどり着ける。やっぱり全中は夢の夢ですから。
あの舞台に『太宰府U14クラブ』の名前が出る、そのことをほんとうにうれしく思います。今までチームの歴史をつないでくれたOBや、愛媛に連れていってくれる選手たちには感謝しかありません」
学校に部活がなく、中体連には縁もなかった大久保キャプテンも「クラブチームの強さを、しっかりと発揮したいと思います。もちろん出るからには全部勝って、優勝したいです!!」と力強く意気込む。大舞台を目指し、そこに立つ今年はこれまでとは一味違う夏だ。
「夏休みに入ってから、九州大会への遠征だったり、今回の全中、とほぼ毎週のように試合がある感覚です。いつもと違って、宿題をする時間があんまりありません(笑)」
チーム名は活動拠点を示すと同時に、「太宰府=福岡」と県の代名詞である誇りも込められている
(文・写真/坂口功将〔編集部〕)
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