バレーボールの第22回アジア男子選手権大会は8月26日の夜(日本時間23時30分開始予定)に決勝が行われる。男子日本代表がアジアの頂点を懸けて戦う相手はイラン。そのキャプテン、セイエド・モハンマド・ムーサヴィー・エラギはアジアもとい世界屈指のブロッカーとして評価されている。ネーションズリーグで対戦した日本代表の面々からも感嘆の声が聞かれた。
<Sayed Mohammad Mousavi Eraghi/1987年8月22日生まれ/身長203㎝/最高到達点362㎝/ミドルブロッカー/イラン>
「日本は進歩した。どの選手を相手にしても非常にタフ」とセイエド
今年6月6日、ネーションズリーグ予選ラウンド第1週、名古屋大会の初日。日本はイランをストレートで下した。東京2020オリンピックを境に世代交代に踏み切ったイランは、19歳のポリヤ・ホセイン・ハンザダ・フィルジャが起用されるなど、今はチームづくりの過程にある。そのチームを率いる35歳のベテランミドルブロッカー、セイエドは日本の印象をこのように語った。
「日本は5、6年前から世代交代に着手し、これまで何度も対戦してきましたが、とても進歩したと感じています。何名かの選手がイタリアなどの強豪リーグを経験し成長を遂げました。どの選手を相手にするのも、非常にタフですね。強いスパイクを打つ必要がありますが、あらゆるアタックに対するディフェンスがいいので、攻略するのは簡単ではありません」
このときは、お互いにネーションズリーグ初戦。イランにとっては完敗ともいえる内容に「ショックでした」とセイエド。とはいえ、それで引き下がるような相手ではない。
「今や、どのチームにとってもサーブとスパイクが鍵を握ります。私たちが日本を倒すためには、日本の持つそれらをさらに上回る必要がある。もっとも、イランには身体的にも技術的にもすぐれた若手選手が多いですから、彼らに磨きがかかることで、次に対戦するときはきっと日本を倒せるでしょう!!(笑)」
<世界屈指のミドルブロッカーとして名高い⓺セイエド>
男子日本代表のミドルブロッカーたちが感嘆
実は、その試合後、セイエドのもとに日本の小野寺太志、山内晶大、髙橋健太郎の3人が駆け寄り、一緒に記念写真を撮る姿が見られた(各選手のSNSをチェック)。小野寺が明かすに、発起人は髙橋(健)で「試合中もベンチで見ていて、『やっぱりすごいな』って話をしていました」という。
同じミドルブロッカーとして、そのすごさはどこにあるのか?
「サイドへのブロックの速さや力強さ、ですね。年齢は僕たちよりも全然上ですけれど、まだまだ負けてられないといいますか、あんなプレーができるようにならなければと感じました」(小野寺)
また、撮影を願い出た髙橋(健)に聞くと、その声のトーンは一段と上がる。
「僕とは違うタイプのブロッカーだとは思いますが、彼もポテンシャルに秀でた選手。例えば、手の出し方にしても、ネットに対して“前”ではなく“上”それこそ“垂直”くらいに出しているんです。それに腕の間を空けながら、相手が打ってくる場所に対して最後は的確に締めている。僕もやりたいですけど、あれはなかなかできない!! ぜひ聞きたいと思ったのですが、なかなか怖くてできませんでした(笑) 手の出し方はほんとうに憧れています」
<日本戦で石川のバックアタックに対峙するセイエド>
日本代表勢が送る憧れのまなざしに「私もうれしいです」(セイエド)
セイエドの両腕の使い方を、アタッカー視点で味わったのが石川祐希。石川のバックアタックに対して、セイエドは両腕を大きく広げていた。
「こちらのパイプ攻撃に対するブロックが非常によかったですね。あえて腕を広げて真ん中を捨てることで、左右のコースを張られていました。僕自身、それを見られていなかったのは反省です」(石川)
日本にとって脅威であり、同時に尊敬のまなざしを送られたセイエド。本人も記念撮影はうれしかったようで、日本人選手たちの言葉を伝えると、こう語ってくれた。
「私自身、ミドルブロッカーとしてたくさんの経験を重ねてきました。そう思ってくれて私も光栄ですし、彼らがスキルアップすることを願っています。お互いにベストを目指していきましょう。
ちなみに石川選手ですが、彼は世界で五本の指に入るアタッカーなので。左右どちらでもブロックできるように、両腕を広げていました。ですが次に対戦するときは…、閉じてみせますよ!!」
<アジアの頂点を懸けて、今宵激突!!>
(取材/坂口功将〔編集部〕 写真/石塚康隆〔NBP〕)
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