男子日本代表の取材に行くことができるのか? 【VNL撮影記 Vol.1〜高田馬場発グダニスク行き〜】
- コラム
- 2023.08.29
銅メダルを獲得した男子日本代表
月刊バレーボール2023年9月号では男子日本代表のネーションズリーグ2023銅メダル獲得を増ページでお伝えしている。巻末のVNL撮影記ではカメラマンが現地で撮影した写真と取材した選手の言葉で歓喜の瞬間をお伝えしているが、ウェブではそこに至るまでの記録をご紹介
7月20日の深夜、いや、もう0時を過ぎて日は代わり21日になった。東京は新宿区高田馬場にある月刊バレーボール編集部。僕はバレーボールネーションズリーグ2023ファイナルラウンド男子準々決勝、日本対スロベニアの試合を月バレ編集部員たちと一緒に見ている。レポートを書いたり、スコアを付けながら見ている編集部員に並び、開いたパソコンのウインドウには飛行機のチケットサイトを表示させている。日本が1点を積み重ねるたびに、グダニスク行きが現実に近づいていく。
20日から少しさかのぼった、ある日のこと。上司2人に呼ばれた。そんな状況で話すことなど、悪いことしか思い浮かばない自分の日頃の行いの悪さを呪いつつ、椅子に座る。
「男子日本代表が準決勝に進出した場合、現地に行ってもらう可能性がある」
まさかのいいこと! しかも現地? ポーランドだって?
という話から始まったグダニスク取材のため、僕は深夜の編集部で男子日本代表の試合展開を見守りつつ、準決勝進出が決まった瞬間に飛行機の予約を取ろうとしていた。荷物はすべて用意してあり、会社からそのままグダニスクへ向かう計画だ。
パソコンのディスプレイに映るグダニスクのコート上では、日本がスロベニアを少しずつ引き離していく。月バレ随一の海外通編集部員Gに戦況を聞くと、「スロベニアは強いですけど粗さもあるし、今の日本からすれば当然の流れです」と言う。表情を変えずに語る様子に「当然」という言葉の説得力が増す。
さて、あらゆる計画には「いいこと」以外の要素も存在する。それは今回の計画にも当てはまっていて、いくつか「よくないこと」が存在していた。
まず一つ目は、出発直前にチケットを手配することだ。準決勝への進出確定後にチケットを購入するのだが、チケットを買えなければ、そもそもグダニスクに行くことはできなくなる。国際線のチケットは値段も刻々と変化するうえ、乗り継ぎなどの組み合わせで、同じチケットがいつまでもあるとは限らない。もし日本が準決勝に進出したにも関わらず、チケット手配できなかったら? 想像しただけでもゾッとする。
そしてもう一つはスケジュールに余裕がないことだ。出発するのは準決勝終了後の21日。準決勝は22日。21日朝に日本を出発してポーランドに向かっても、時差が7時間あるので試合に間に合うのだが、地方都市の一つ、グダニスクにはもちろん直行便がなく乗り継ぎが必要なため、時間の余裕は多くない。トランジットで何かあれば試合に間に合わない可能性もある。本来はそういったリスクも考慮したスケジュールを作るが、今回は準決勝進出が決定してからチケットを取るというタイミングの問題で、回避できないリスクが残った。
そもそも、編集部と一緒に見ているこのスロベニア戦に日本が敗れた場合はポーランド行き自体が立ち消えとなる。僕は自分にできる数少ないことの一つとして、日本の勝利を祈りながら、各種予約の準備を続けた。