驚異の9万人動員 米大学女子のプロ意識はどこから? 日本代表 宮部藍梨が以前に明かした現実
- コラム
- 2023.09.05
実体験をまじえながら、当時を振り返ってもらった
「生活に関わってくる」と宮部が話す大学事情
イタリアやトルコは、世界トップレベルのプロリーグという存在が代表の強化の一端を担っていると言える。だが、アメリカは異なる。まぎれもなく個々の強さそのものが、代表チームの根底にはある。
そこには大学が関係するのではないか? その世界に触れてきた宮部に昨年、帰国してまもない頃に話を聞くと、「たぶんですけど…」と切り出して、こう答えてくれた。
「学生ではあるんですけど、生活に関わってくるんです、スポーツでのパフォーマンス自体が」
これはあくまでも一例だが、聞くに、アメリカの大学でも奨学金制度があり、利用している学生がいる。ただし、その基準はシビアだそうで、学力はもちろんのこと、アスリートとして奨学金を受けている学生は、そのパフォーマンスが大きく影響する。
「(スポーツの)成績がよくなければ奨学金がストップされる、なんてことが普通にあります。学費が払えない以上、大学にはいられない。逆に、奨学金の対象でなかった学生でも競技を頑張ることで、奨学金がもらえたりもするんです。
大学の学費を払うためにローンを組んでいる学生もいました。お金、というと表現は直接的ですが、学校生活を送るためには必要なわけで」
アメリカではアウトサイドヒッター、オポジットを経験し、現在は日本代表でミドルブロッカーとしてプレーする宮部(写真:佐々木啓次)
「バレーボール・デー・イン・ネブラスカ」は“現実離れ”していたが…
そうしたリアルを踏まえ、宮部は語る。
「それがプロ意識を生んでいるのかもしれません。バレーボールをしているからこそ大学に通うことができている。それは確かで、そこには相当の責任が自分自身にかかっています。『これだけやらなければ、奨学金を切られるかもしれない』という考えは、プロ選手に置き換えるなら『給料をもらえない。契約先がなくなる』ということ。いろいろなものがバレーボールを通して、のしかかっているんです」
在学時代の記憶をたどり、「いい思い出ではないですね」と宮部が口にしたあたりに、そのシビアさがうかがえた。
スタジアムが満杯になり、バレーボールの熱で支配された、あの日。観戦に訪れた男子アメリカ代表のキャプテン、マイカ・クリステンソンはその光景に興奮を隠せず、「とんでもなく現実離れしている」とSNSでつづった。
けれども、コートでプレーしていた大学生たちの中には、特別な空間を満喫しながらも、同時に“現実”と戦っている選手がいたのかもしれない。
薩摩川内市(鹿児島)での紅白戦後、ファンサービスに応じる宮部(写真:佐々木啓次)
(文/坂口功将〔編集部〕)
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