バレーボールのVリーグは2023-24シーズンの開幕まで1ヵ月に迫っている。この夏には、Vリーグのジュニア(U15)チームによる「2023 Vリーグジュニア選手権」が岐阜で開催され、未来のVリーガーたちが懸命にボールをつないだ。
日本一への挑戦権を得た“妹分”
過去最多となる男女計41チームが出場した今年のVリーグジュニア選手権。岐阜で開催されたこの大会は、リーグ期間中に予定されている日本一決定戦の“予選”に位置づけられており、男女とも「ブイリ―」「ブイきち」の2グループに分けて争われ、それぞれの優勝チームが日本一への挑戦権を獲得した。
そのなかで女子のGROUPブイきちは、アランマーレジュニアが制した。その名のとおり、山形を拠点に活動するプレステージ・インターナショナルアランマーレのジュニアチームである。Vリーグジュニア選手権への出場は昨年に続いて2度目。前回は全体4位だが、飛躍を遂げた。そのジュニアチームを指揮した柳沢紫子“監督”は「もう最高のかたちで!! 山形に帰ることができます」と喜んだ。
聞けば、岐阜に向けて出発する際、アランマーレのトップチームの選手全員が見送りをしたという。“妹分”たちにとっては、このうえないエールだったに違いない。そんなつながりが、このチームの特色でもある。
現役選手が監督を務め、チームならではの交流も
ジュニアチームの活動が始まったのは2021年4月。それより以前から、チームは地元の小学生を対象にしたバレーボール教室を開催していた。そこでは「高いレベルの子もいるのに、中学に部活がないという理由から競技をやめてしまうケースが多かった」(柳沢)ことから、ジュニアチームを立ち上げた。
柳沢自身、アランマーレの現役選手でありながら、発足時から指導者として活動に携わっている。それもあって、「トップチームのみんながジュニアの活動にも、ふらっと顔を出してくれるんです。興味を持ってくれているのがうれしいですし、交流がけっこうあるほうかなと感じます」。
ジュニアチームの面々からすれば、Vリーグでプレーするトップ選手はまさに憧れの存在だ。今回のVリーグジュニア選手権でアランマーレジュニアのキャプテンを務めた川嶋望未(酒田二中〔山形〕3年)は、おどけるように話す。
「もう、“うわぁ”みたいな感じです。ユニフォームにも『Aranmare』と入っていて、その中の一員に自分がいる。すごい、と言いますか…、ちょっと優越感もありますね(笑)」
ジュニアチームは実際にアランマーレのホームゲームでボールリトリバーなど運営を手伝う機会がある。そうした距離感が、憧れをさらに膨らませるのだ。
リーグ参入9シーズン目でトップステージに挑むアランマーレ
そんなアランマーレは昨季、入れ替え戦を制し、きたる23-24シーズンはトップステージ「V1」で戦う。15/16シーズンからVリーグに参入して以来、願っていたステージだ。チームを支えるサポーターや、“shipmate(シップメート=乗組員,船員)”と称されるファンたちからも大きな期待が寄せられる。それはジュニアチームからも。その舞台を戦う柳沢は、こう意気込む。
「1部に上がったということで、“V1の選手だ”という憧れが生まれると思うんです。その気持ちを、ジュニアの子たちにも持たせたいですよね。
それにアランマーレは日本代表の選手がいるわけでもなくて。サイズも小さいけれど、泥臭く、チーム力で戦うのがスタイルです。私自身もそうです。おそらく個人の能力では、ほかの選手に負けているでしょう。ですが、『チーム全員で戦えば、その個々が輝く』のだと。その姿を見習ってもらいたいですし、次の世代の子たちにも見せたいです」
そんな思いは、すでにジュニアチームに伝わっている。「自分たちよりも身長の大きい相手に立ち向かっていく姿に、ただただすごいな、って思うんです」とは川嶋の言葉だ。
10月28日。さまざまな思いを携えながら、アランマーレの新たな航海が幕を開ける。
(文/坂口功将〔編集部〕 写真/山岡邦彦、編集部)
2023 Vリーグジュニア選手権
出場全チーム掲載
「月刊バレーボール」10月号は9月15日発売
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