「なんであんな指導を」と後悔する“ふつう”の公立校監督がVリーガーとつながり授かったスピリッツ《後編》
- V男子
- 2023.09.14
今年7月22日、埼玉県立入間向陽高校(埼玉)で一つの魂が継承された。VリーグのV2男子で戦う富士通カワサキレッドスピリッツがチームスローガン「明るく、楽しく、そして強く」を同校の女子バレーボール部に授けるというもので、この日、認定書が贈呈された。どこにでもあるような公立校と、Vリーガーはいかにしてつながり、そして、ともに歩もうとしているのか。《後編/全2回》
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入間向陽高を指導する下坂監督
「よくない指導をしてしまっていた」下坂監督の懺悔
生まれは長野県。同年代の男子バレーでいえば、岡谷工高や丸子実高が全国大会で好成績を残した。そんな環境下で自身も小学3年生ごろから始めたバレーボールに中学、高校と励んだ。
だが時代柄もあったのだろう。下坂監督は今でこそ笑って振り返るが…、「ただ怒られてしかいなかった印象です。バレーボールを教わってない(笑) 負けたら怒られるし、どなられる。遠征や練習試合がほんとうに嫌でした。どうして負けたくないか、って、罰のようなワンマンレシーブをさせられたくないから、ですからね」。
高校を卒業して一度は離れたが、教職に就いたことをきっかけに今度は自身が指導者としてバレーボールに携わることになる。そこではかつて自身が受けていた指導を“再現”していた。
「その考えしか持っていないですから。体罰まではいかなくても、意味もなく怒鳴ったりと選手たちにとってよくない言葉の暴力はあったかもしれません。厳しく叱咤することも必要かもしれませんが、それではバレーボールが好きにはならないでしょうし、『ワンマンレシーブが嫌だから勝とうね』ではありませんから」
転機となったのは入間向陽高に着任して、4年目を迎えたとき。当時、女子バレーボール部は部員数が3人だった。
体育館で懸命に汗を流す部員たち
人数がそろったときに気づいた「生徒たちは宝物」
コート上に立つ選手は6人なのに、である。普段の練習もままならず、2日動けば1日休む。日によっては他校の練習に参加することも。コロナ禍で結果的に中止となったが、大会にはほかの部活動の生徒を加えてチームを組んで、出場する予定だった。
そのうちの1人が最上級生に、その一学年下が2人、となった2年前。部活を見学した学生たちがぞろぞろと入ってきた。それが当時1年生の斎藤たちの代である。
「3人で部活をしていたときも私は厳しい言葉を使っていました。なんであんなことを言っていたんだ、あんな指導をしていたんだ、って今でも思い出します。
ですが、入部希望者が多くきたときに気づかされたんです。生徒一人一人が宝物だと思って接しなければ、と」
下坂監督は聞いたことがある。どうして入部したの? すると、「一生懸命にやっているから」という答えが返ってきた。齋藤もこう話す。
「中学時代に入間向陽高の練習に参加させてもらったときに、すごく先輩たちが明るかったんです」
入間向陽高は3学年で生徒数は1000人規模。その3分の2が女子で「明るくて元気のいい生徒が多いんです。それが特色でもありますし、指導者の接し方次第では雰囲気が抜群によくなる、そんな土壌はあったかもしれません」と下坂監督は言う。
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