バレーボールの「パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」は大会6日目。女子日本代表は全勝で並ぶトルコとの大一番に臨む。トルコは勝利すればパリオリンピック出場が決定、日本は3-0ないし3-1で勝てば最終日を前に出場権獲得となる。その一戦を前に、トルコを率いるダニエレ・サンタレッリ監督に話を聞いた。
<ダニエレ・サンタレッリ監督。昨年は女子セルビア代表を指揮していた>
今年から監督に就任したサンタレッリ氏。プレッシャーもなんのその
2016年リオデジャネイロオリンピックを終えて、新しく始まったオリンピックサイクルで女子トルコ代表はジョバンニ・グイデッティ監督を招き入れた。国内リーグの強豪、ワクフバンクを長年指揮する名将である。
代表の主力選手たちがキャリアを重ねるにつれてチームも成熟度を増し、東京2020オリンピックこそ第5位でメダル獲得を逃したものの、グイデッティ監督は続投。次のパリに向けて歩んでいた。だが、昨年末に女子セルビア代表監督への電撃就任が発表される。
ヨーロッパ選手権そしてパリオリンピック予選が行われる大事なシーズン。そこでトルコは新たにダニエレ・サンタレッリ監督を招聘した。イタリア・セリエA女子のコネリャーノを指揮してきた、こちらも実績あるコーチである。
トルコは今年、キューバから帰化したメリッサ・バルガスの“代表入り解禁”が決まっており、否応なしに期待値は高まる。重圧は相当なものだと想像するが…。
「いやいや。私はいつも一人でプレッシャーを背負って生きてきましたから。キャリアは短くても、そこでは多くのプレッシャーを浴びながら経験を重ねてきました。
これが私にとっての常。私の人生です」
そう言うと、イタリア人監督は柔らかくほほえんだ。
<試合中、好プレーを見せた選手を全力でたたえる姿が>
主要国際大会で二冠も、「旅の一部」とゴールをぶらさず
そうして臨んだ今年はネーションズリーグとヨーロッパ選手権の二冠を獲得。オリンピック予選を前に、FIVBランキングでも1位に上り詰めた。サンタレッリ監督は自信を強める。
「トルコ代表に携わったときから、私は彼女たちを世界の頂点にすることを誓い、向き合ってきました。
とても大事な結果を残すことができましたし、ほんとうにうれしく思います。ですが、いずれのタイトルも私たちの旅の一部に過ぎません。あくまでも、この夏いちばんのターゲットはオリンピック予選通過です」
いざ今大会では開幕から相手を圧倒し、エブラル・カラクルトとバルガスの二枚看板が得点を量産、ゼフラ・グネシュとエダ・エルデムの両ミドルブロッカーが攻守でブロックに加え、アタックでもアクセントになる。全勝で迎えた22日のブラジル戦ではストレート勝ちを収め、予選突破に王手を懸けた。
<攻守で充実のトルコ(コート奥)>
<次ページ>日本の印象は? との問いかけに、リスペクトあふれる返答
<ブラジルとの全勝対決を制し、パリオリンピック出場へ王手を懸けた>
日本の印象は? との問いかけに、リスペクトあふれる返答
そんな充実のチームを率いるサンタレッリ監督に日本の印象を聞いてみた。すると、開口一番に「大好きなんです!!」と、その目がキラリ。
「日本のバレーボールがほんとうに好きで、とりわけすべての指導者たちを尊敬しています。ヨーロッパとはまるで違うコーチングの文化があり、それを学びたいといつも思っているんです。指導者講習があれば、ぜひとも参加したい(笑) 一日でも1シーズンでも1年でも、どんな指導をしているかを見てみたいものです。コーチとしてさらに成長できる機会になるでしょうから」
これまでにも外国人監督が口にしてきた、日本のバレーボールへの敬意をサンタレッリ監督もまた抱いていた。そして、それは日本チームに対しても。
「総じて日本の選手は素晴らしいと感じています。とくに古賀紗理那選手はベストプレーヤーの一人です。それに男子でも、石川祐希選手と髙橋藍選手がイタリアでプレーしていますよね」
きたる日本戦。指揮官は最大級のリスペクトを持って、チームを送り出してくるに違いない。言葉の節々から、そう感じられた。
<見つめるは世界の頂点。チームづくりの手をゆるめることはない>
(取材・文/坂口功将〔編集部〕 写真/石塚康隆〔NBP〕)
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