バレーボールの「FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」女子大会が9月24日に閉幕し、全勝のトルコそして日本との直接対決を制したブラジルがオリンピックの出場権を獲得した。そのトルコは日本戦で、何度も窮地に立たされながらもひっくり返す強さを見せた。その光景を、指揮したダニエレ・サンタレッリ監督に振り返ってもらった。
日本戦で勝利し、パリオリンピック出場権を獲得したトルコ
9月23日、女子大会6日目。この時点で全勝対決となった一戦で、日本はヨーロッパ選手権女王のトルコを追い詰めた。キャプテンの古賀紗理那のアタックとブロックシャットによる連続得点で始まった第1セットを先取すると、第2セットは先に20点に到達、第3セットも先にセットポイントにたどり着いた。
だが、結果として日本がセットを奪ったのは第1セットのみ。第2セットは22-19から6連続失点、第3セットは24-22から4連続失点を喫し、セットを落としている。
いずれのセットも日本は攻撃を切り返され、得点されるケースが続いた。試合後、日本の選手たちが口にした「決めきる力」の差が出たのは確かだ。と同時に、トルコとしては終盤の連続得点の場面で、第2セットはイルキン・アイドゥンが、第3セットはジャンス・オズバイが、ミスすることなくサーブを打ちこみ、効果的に日本のサーブレシーブを崩していた。
その崖っぷちの場面で、トルコのサンタレッリ監督はどんな心境だったのか? 大会を終えて振り返ってもらうと、「I always believed.」と二度繰り返して、こう話した。
「私はいつも信じています(I always believed)。彼女たちが決してあきらめないことを。そして、勝てることも、ね。だからこそ、私自身は選手たちのためにできることをやるまでなんです」
まるで違うバレーボールのスタイルに対応する難しさ
今年はネーションズリーグ、ヨーロッパ選手権を制し、堂々のFIVBランキング1位で来日したトルコ。けれども、サンタレッリ監督自身は決して楽観視することなく臨んでいた。
「今回の予選では、素晴らしいチームと対戦するわけでしたから。毎試合、自分たちとは違うスタイルのバレーボールに適応させることは簡単ではありません。そのなかで、自分たちがいいバレーボールができたこと、その結果、予選通過を果たせたことを誇りに思います」
適応力を要したのは、日本戦も同様だった。
「日本のシステムに私たちのバレーボールを対応させるのはほんとうに難しいんです。研究はしていますが、実際に戦ってみないと日本のプレーを理解することはできません」
第1セット、日本は終始リードする展開を作り、最大8点差としている。それでも終盤にかけてトルコはじりじりと詰め寄り、13-21から最終的に22-25まで迫った。
「一歩ずつ改善、向上させること。第1セットは非常に難しい展開になりましたが、挽回できました。そうして第2セットはさらによくなりました。試合を戦いながら、各セットで準備を施し、勝利に結びつけることができました」
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「3、4点差は決して大きくない」とサンタレッリ監督
第2、第3セットと終盤の窮地から、トルコは逆転に成功してみせた。あと1点でも日本が奪っていれば、試合の流れも結果そのものも変わっていたはず。そんな極限の場面を、サンタレッリ監督はこのように語る。
「ああした場面を振り返るときはサーブだけでなく、ローテーションも考慮する必要があります。自分たちにとってブロックディフェンスやトランジションアタックがいいローテーションである可能性もありますし、ともすれば相手がそのときは苦手なローテーションであるかもしれないわけですから。
それに私が考えるに、女子バレーにおいて、3、4点の差は決して大きくありません。第3セットのように、ほんとうに信じられないような展開が起きることもありえます。だからこそ、女子バレーはおもしろいですね!!」
パリオリンピック本番まで、しっかりと準備を進める
結果として全勝でパリオリンピックの切符をつかんだトルコ。ここから本番までの1年弱を、準備期間に充てることができる。指揮官は次のビジョンをこう語った。
「代表監督に就任して1年目の夏を経て、私自身は選手たちのことをもっともっと知る必要があると感じています。いい面も悪い面もわかった分、それを踏まえてさらに努力しなければなりません。
来年のネーションズリーグは重要な大会には違いありませんが、オリンピックに向けた“レベルアップ”に重きを置くことになるでしょう。それ自体は私にとって初めての経験ですし、まだまだ学ばなければ。
オリンピックでのメダル獲得という、信じられないような夢に向かって準備を進めていきます」
サンタレッリ監督は信じている。夢の舞台で、選手たちがきっとメダルを獲得してくれる、と。
(取材・文/坂口功将〔編集部〕 石塚康隆〔NBP〕、魚住貴弘)
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