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“ビーストモード”全開! ヴォレアス張育陞が初のV1で抱く思い「ここにいられるのが幸せです」

 2016年のチーム創設以来、悲願だったVリーグの最上位カテゴリー、DIVISION1を戦うヴォレアス北海道。その2023-24シーズンは開幕から未勝利と苦しんではいるものの、あふれんばかりの闘志でチームを率いる選手がいる。今季からキャプテンを務める、張育陞(チャン・ユーシェン/チャイニーズタイペイ)だ。

 

張 育陞(チャン・ユーシェン/2000年3月30日生まれ/身長190㎝/最高到達点340㎝/オポジット/チャイニーズタイペイ)

 

勝負どころでアンストッパブルな活躍を披露する張

 

 きた、きた。目に見えて、ギアが上がっている。パフォーマンスは、まさに最高到達点だ。

 

 115日、アウェーでの日本製鉄堺ブレイザーズ戦に乗り込んだヴォレアス北海道は、ストレート負けを喫した前日に続いて、この日も第1セットを落とす。それでも第2セットは競り合いを抜け出し、20-18とリード。日鉄堺BZのタイムアウトが明け、そこからさらに連続得点を挙げて22-18と突き放した。いずれも張のサーブから始まったプレーであり、トランジションから張がバックアタックであげたポイントだった。

 

【ギャラリー】チーム史上初のV1を戦うヴォレアス北海道(10点)

 

 相手レシーバーを強襲するサーブに加えて、全身をボールにぶつけるようにして放つ強烈なスパイク。張の真骨頂だ。その攻撃をチョイスしたセッターの山岸隼は、この場面での張の姿をこう振り返った。

 

「昨日(4日)は調子が悪かった分、今日は朝から様子が違いましたし、アップからも気合が入っていました。20点目以降、強い意志が表れていたのを、僕たちも感じていました」

 

 対戦相手が太刀打ちできないような境地に至ったときの張のパフォーマンスを、チームはこのように呼んでいる。

ビーストモード、と。

 

強烈な弾丸サーブから流れを引き寄せた

 

「チームに勇気をもたらす」と指揮官

 

 結果として、この第2セットをジュースの末に落とし、ヴォレアスは2日間ともストレートで敗れた。そんななか、張は「自分の仕事ができなかった」と8得点に終わった4日から一転、この試合ではチーム最多19得点と気を吐いている。

 

 ギア全開、ビーストモードに突入したとき、当の本人はどのような心理なのか。興奮、それとも冷静?

 

「絶対にブロックされたくない。そんな思いです」

 

 得点する、その一心。そして、それはチームが張に求めているものでもある。エド・クライン監督の評価は、こうだ。

 

「彼は試合のスコアに関わらず、いかに得点するかにフォーカスします。タフな状況になれば、いつも彼にトスが上がりますし、どんな場面でも力強くサーブを打ちます。そんな彼の姿がチーム全体に勇気をもたらすのです」

 

エド監督(左端)も張のパフォーマンスに絶大な信頼を寄せる

 

ヴォレアス北海道は11月中旬に2週連続でホームゲームを戦う。目指すは、シーズン初白星

 

今季リーグを前に、選手間投票でキャプテンに選出

 

 2019年に来日し、ヴォレアス一筋5年目。今季のV1初参戦に至るチームの過程を常にともにしてきた。張自身も、V2で連覇を果たした21-2222-23シーズンでは2年連続で最高殊勲選手賞とリーグ得点王に輝いている。

 

 そうして今季からキャプテンに就任。選手間投票によって選ばれたことに、「もちろんチームメートが信頼してくれたのはうれしかったです」と張はほほえむ。続けて、「ですが試合では変わらず、自分の仕事をしっかりとやって、勝利に貢献できるように頑張りたいです」と言葉に力を込めた。

 

 エド監督もキャプテンの選任は「選手たちが決めました」と言い、その理由について張のファイティングスピリッツを挙げている。つまり、チームが勝利するために自らの務めを果たそうとする、あの姿勢だ。

 

「例えば、キャプテンとしてたくさん話すようなことはしなくていいと思っています。そこは彼に求めている部分ではありません。彼のアグレッシブさや、得点への貪欲な姿勢でチームを引っ張ってほしいと願っています」

 

仲間の好プレーにはすかさずサムズアップでたたえる姿も

 

「もっともっと成長できるように」と張

 

 ビーストモードしかり。あの場面、張はキャプテンとしてではなく、チームの一員、一人のアタッカーとしてコートに立っている。年度でいえば“同期生”の山岸の目にも「キャプテンだからといって、お互いに意識することはなくて。チームを引っ張る彼の姿は、(山岸が入団した)昨シーズンからもずっと同じです」と、その姿は映る。

 

 今、戦うのはチームの夢だったV1のステージ。苦しい船出となっても、張はまっすぐに前を向く。

 

V1で戦えるのはうれしいこと。私たちは昇格したばかりのチームなので、成長の過程にあります。もっともっと成長できるように頑張りたいです。

 

 私はチャイニーズタイペイの選手だけれども、チームメートと仲がよくて、すごく雰囲気がいい。このチームにいられることを幸せに感じます」

 

 迫力満点の“ビースト”も、そう話したときの表情は実に温かいものだった。

 

ビーストモードに突入すれば、感情表現も爆発

 

(文・写真/坂口功将)

 

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