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春高2025

勝っても昇格のないVリーグ。2部チームが臨む今季の焦点と明かした胸の内の数々

  • V男子
  • 2023.11.17

 

顔ぶれがガラリと変わったものの。シーズン開幕週から連勝スタートを飾った富士通

  

 

いま自分たちが立つステージでいかに戦うか、を明確にする富士通カワサキレッドスピリッツ

 

 今オフに積極的な選手補強を敢行した北海道YSに今季初黒星をつけたのは、対照的に“主力選手の大半が引退”した富士通カワサキレッドスピリッツ。シーズン開幕戦となった1111日の先発オーダーのうち、これまでレギュラーだったのは今季からキャプテンを務める加藤大雄とエースの谷平拓海くらい。長年チームを指揮する山本道彦監督も「ほんとうに勝てるのかな、と。戦力ダウンで迎えましたから」と不安を抱いていたが、北海道YSとのシーズン開幕戦をフルセットの末に勝利。敗れた浜崎監督は「(メンバーが変わったとしても)ディフェンスが組織的に機能している印象でした」と語った。

 

チャレンジの判定結果待ちの時間ですら、アップゾーンの面々は楽しげ。チームの変わらぬスタイルだ

 

 富士通といえばV2と前身のV・チャレンジリーグを含めた“2部”で常に上位争いを繰り広げ、過去には4連覇(17/1820-21)の実績を持つ。ライセンス制を導入した現行のV.LEAGUEや、次のS-Vリーグしかり、リーグ変革の際には関係者やファンの間で「いよいよトップカテゴリーか」という機運は高まる。

 けれども、入れ替え戦や国内の主要大会では1部に勝利できていないのが現状で、結果を出さずして運営企業にさらなるバックアップを求めることは難しい。それもまた現実だ。

 

 勝っても入れ替え戦がない今シーズンについて「メリットはありません。やはり選手たちのモチベーションをいかに維持するか」と山本監督は難しさを語る。それでも加藤キャプテンの言葉は頼もしかった。

「僕は若手の頃に、V.LEAGUEに変わって(18-19~)ライセンスがないからトップカテゴリーに上がれない、という状況を味わいました。その頃は、『えぇ…』という気持ちでしたね。

 ですが、企業名を背負って、何よりお金を払って試合を見にきてもらっている方々にバレーボールを見せるのはスポーツマンとしての義務だと思うので。僕自身のモチベーションに変わりはありません。その姿勢を見せ続けるしかないのかなと考えています」

 

「やるからには、もちろん優勝を目指します」と加藤キャプテン(奥)

 

 

「ミスが多くても全力でできるシーズン」と前向きなクボタスピアーズ

 

 バレーボール選手として。舞台がVリーグであろうとなかろうと懸命にプレーしてきた一人が、クボタスピアーズの選手兼コーチの早瀬川雄也、35歳。大学を卒業して入団した当時は地域リーグに所属していた。それから10年近くが経ち、チームは20-21シーズンからVリーグに参入した。

「引退を考える年齢でしたので、正直『このタイミングで!?』とは(笑) ですが、チームを強くする方針のなか求められるのはありがたいですし、練習環境も入団時から大きく変わりました。今がいちばんバレーボールに励めています」

 

 変わったのは、強化方針だけではない。Vリーグのチームとして、地域に根差した活動に励む機会も増えた。津崎智之監督は「バレーボール教室や、警察と協力した『なにわランニングパトロール隊』など、地域と関わる機会が徐々に出てきました。それをいかに継続して、その幅を広げるか」と話す。その成果は、今季最初のホームゲームとなった大阪大会の会場であるAsueアリーナ大阪(大阪市中央体育館)のサブアリーナを8割以上埋めた入場者数に表れた。

 運営母体が企業であり、その社員や関係者が応援に駆けつけた一方で、子どもたちの姿も。「私たちはバレーボールに励む地域の子どもたちの受け皿に、そして拠点の“難波”を象徴するチームでありたい」とは津崎監督の願いである。

 

V1のウルフドッグス名古屋でプレーした経験もある⑫劉鴻杰(チャイニーズタイペイ)も加え、強化を進める

 

 

 今シーズンの目標は2位以上。例年だと出場圏内となる入れ替え戦は実施されないが、チームは前向きだ。「ある意味、全力でできるわけですから。例えミスが多くても、ハイリスク&ハイリターンのバレーボールを展開しながら、手を緩めずに強くしていきたい」と指揮官は語り、ベテランの早瀬川も「『失敗してもいい』と若手選手を送り出せますし、もっともっとトライしてどんどん経験を積んでほしい」とエールを送る。地域とともに、成長を続けるのみだ。

 

「若手がチャレンジし続けられるような雰囲気づくりなど、僕がコート内でできることはある」と早瀬川

 

 

 S-Vリーグのライセンス申請は1130日まで。さまざまな思いで今季を戦うチームは、次の一歩をどのように踏み出すのだろうか。

 

(文・写真/坂口功将)

 

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