夢の舞台 世界に響き渡るHIKOコール ~チェコリーグ初挑戦の今村貴彦~
- 海外
- 2023.11.23
30歳にして初の海外リーグへ
日本から時差にして8時間。
チェコはクラドノというはるか異国の地で、「HIKO」コールが鳴り響いていた。
クラドノの18番「HIKO」こと今村貴彦
2023/24シーズンより、大卒1年目から慣れ親しんだパナソニックパンサーズを離れ、チェコ1部エクストラリーグのクラドノ・バレーボール(以下、クラドノ)に移籍した今村貴彦。
今年30歳を迎えた今村は初の海外挑戦。近年、日本人バレーボーラーの海外移籍は増加傾向にあるが、この年齢から挑戦する選手はそう多くはない。そんな中、パナソニックという国内最高峰のクラブを出て、チェコという未知の世界に足を踏み入れた。
プロバレーボーラーとしての道を歩み始めた今村は、どのようなシーズンを送っているのだろうか?
クラドノの風景。中世の街並みが残る
新天地で確かな存在感を発揮
緯度は北海道と同じくらいで、11月上旬には気温が0℃近くまで下がることもあるこの町。首都プラハからは、電車とバスを乗り継いで約1時間の田舎町だ。
特別な観光地でもなく、首都からも少し離れてはいるが、バレーボール熱は確かで、クラドノのアリーナはホームゲームになると数多くの観客に彩られる。会場を訪れた11月9日もホームゲーム当日で、青のグッズを身にまとった観客で埋め尽くされていた。
熱心な地元ファンたち
この日はシーズン開幕から全勝をキープするクラドノが、同リーグで9位につけるブルノをホームに迎えた一戦。絶対に負けられない試合だ。
アリーナは非常にきれいで大きいにもかかわらず、天井が低い。ほかにラインジャッジの人数が2人であることなど、Vリーグを見慣れた筆者からすると、戸惑いを隠せない日本との違いがいくつもあった。
アリーナ前列に席を取って試合開始を待ちわびていると、聞き慣れた言葉が。顔を上げると、日本人の女性が3人。隣の席に座っていた。
「今村選手が所属していると知って、応援を始めたんです」とその女性は語った。
「チェコに日本人が集まる秋祭りがあって、そこで今村選手の存在を知りました。そこから、一度応援に行ってみよう! と思って会場に足を運んでみて。今ではシーズンチケットを購入して、毎試合プラハから通っています。」
シーズンが開幕して1ヵ月足らずで、早くも加入が話題になっているようだ。
18時に試合開始。今村選手はベンチからのスタートとなった。
1セット目は25-20で先取したものの、2セット目は最大5点のリードを奪われる苦しい展開。そんな流れを変えたい場面で、監督は交代のカードを切った。
アップゾーンからベンチに走る背番号18の姿。選手交代として「IMAMURA」の名前がコールされると、会場は歓声に包まれた。待ってましたと言わんばかりの大声援だ。
交代直後のレセプションでAパスを返し、スパイクを決めると会場からは「HIKO! HIKO!(今村選手の愛称)」のコールが。特に若い女性ファンからの声援が大きく、現地サポーターからの人気を得ていることが窺えた。サーブ順がくると、パナソニック在籍時と同じように観客が手拍子で後押しする。
流れを変えることが大きな役割の一つ
惜しくも2セット目は落としたが、3セット目は5-10のビハインドから2連続でスパイク得点を決めるなど随所で光る活躍を見せ、セットカウント3-1で勝利。今季最長時間の出場となり、絶対に落とせない試合でチームの勝利に貢献した。
驚いたのは試合終了後だ。
他の選手がクールダウンのストレッチを行っている中、今村の周りにだけ大きな人だかりが。サインや写真を求めるファンが殺到し、大きな輪を作っていたのだ。現地のファンやジュニアの選手の心を入団1ヵ月足らずでつかむという今村のクラドノ加入は、確かにチームに影響を及ぼしていた。
以下、インタビューに応じてくれた今村との一問一答を紹介する。
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