第76回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春の高校バレー)京都府予選会決勝が11月18日(土)に島津アリーナ京都で行われた。男子は洛南高が東山高を3-2(25-22,18-25,25-21,14-25,15-7)で下し、5年ぶり24回目の本戦出場を決めた
「ケガするなよ!」
胴上げする選手たちにそう注意しながらも、細田哲也監督はうれしそうだった。大塚達宣、垂水優芽(ともにパナソニック)、山本龍(ディナモ・ブカレスト〔ルーマニア〕)ら「洛南カルテット」を擁して日本一に輝いた2018年度以来、5年ぶりに激戦区を突破。優勝の瞬間、2年生エースの中上烈は「この日のためにやってきたので。今までのきついことや楽しいことが全部こもって」とむせび泣いた。
中上のバックアタックも光り、終盤に抜け出して第1セットを先取。だが、その後は互いにセットを取り合った。落としたセットはいずれも東山高・花村知哉キャプテンらのサーブから崩され、20点台以下に抑えられる大味な展開に。それでも、細田監督が「あっさりやられたほうが、逆に切り替えができたのかもしれません」と振り返るようにダメージは少なかった。エース中上を軸に得点を重ね、課題だった守りでもリベロ角田空翔を軸に相手の強打を防ぐ。新チーム結成後は敗れていた相手に、互角の戦いを見せていた。
最終第5セットは中上がブロックを浴びるなど0-3からスタート。だが、エースは折れなかった。
「止められたな、というぐらいでした。チームメートを信じていたので、絶対にいいプレーをして、逆転できると思っていました」
2-4から中上のスパイクなど4連続得点で逆転した。その途中でセッターの樋口卓朗が足をつり、土田岳に交代するなど、選手たちの疲労はピークに。中上も足をつりかけたが、「自分が抜けたらダメだと思って、死ぬ気で頑張りました」と意地でバックアタックを決めた。最後は相手エース尾藤大輝のバックアタックをブロックで仕留め、歓喜の瞬間に浸った。
11月12日にはOBである大塚と垂水が応援に駆けつけた。選手たちにとっては初めての春高代表決定戦でのライバル対決に向け、憧れのOBから助言を受けていた。
「観客や音響がふだんの試合と全然違うから、何が起こるかわからないと言われていました。ただ、(準決勝の)大谷高戦のようなバレーをしたら勝てるとも言ってくださっていたので。その言葉を信用して、思いきりやりました」(中上)
先輩2人は試合のため、この日は会場に来られなかったが、中上は「来てもらえるだけで自分たちもモチベーション上がりますし、すごい安心感がありました。ほんとうにありがとう、という気持ちだけです」と感謝した。
選手たちにとっては初めての春高。オレンジコートで緊張もあるだろうが、中上が「楽しみ」と語るように、重圧をはねのけられるメンバーがそろっている。細田監督の期待も高い。
「インターハイ、国体で準優勝している東山高に勝って、十分な自信になったと思います。その上となると優勝しかないので。ぜひ、そこを目指したいです」
激戦区を突破し、一気に全国の頂点へ。そのポテンシャルは十分に秘めている。
東山高
エース尾藤が40得点も
春高でのリベンジはならず
今季2度の全国準優勝で春高でのリベンジを目指した東山高は、宿敵に阻まれた。
第1セットは国体後にミドルブロッカーからコンバートした梶田勘大郎をセッターとして起用。シーソーゲームの末に落とすと、第2セット以降はセッターを太田渉稀、ミドルブロッカーに梶田を起用するこれまでのフォーメーションに戻した。花村キャプテンのサービスエースなどで第2、第4セットを奪い、勝負の行方は最終第5セットへ。エースの尾藤にトスを集めたが、差を広げられた。
両チームトップの40得点をマークした尾藤は「エースの差で負けてしまった」と涙。だが、梶田は「(尾藤)大輝や(花村)知哉は1年生のときから出ていて、信頼があったので。ミスしても、ブロックされても後悔はないです」とエースを労った。
文・写真/田中風太(編集部)
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