バレーボールの「FIVB世界クラブ男子選手権大会」(以下、世界クラブ)は現地12月10日にバンガロール(インド)で閉幕。日本からアジアクラブ王者として出場したサントリーサンバーズは見事、銅メダルを獲得した。そして、その大会を制したのが、イタリア・セリエAのペルージャである。
世界クラブ選手権連覇を遂げたペルージャ【Photo:FIVB】
今季からペルージャを指揮する、リーグきっての名将ロレンゼッテイ監督
いつも、その目は温かい。御年59歳。ペルージャを指揮するアンジェロ・ロレンゼッティ監督は、選手が勝利を喜んでも、敗北にうちひしがれても、優しい笑顔で見守っている。
今回の“世界タイトル”はペルージャにとって2年連続、自身にとっては2018年大会に続く2度目のものであり、その歓喜の輪の中でロレンゼッテイ監督は一人一人に寄り添い祝福していた。その一方で、昨年度のセリエA・コッパイタリアでは当時指揮していたトレンティーノの選手たちが表彰台で悲し気な表情を浮かべるなか、それぞれの背中に手をやり、なぐさめていた。
そんなコーチングスタイルで、ロレンゼッティ監督はこれまでに幾多の栄光をつかんできた。1991年から監督業に就き、セリエAでは過去4度のスクデット(リーグタイトル)を獲得。昨年度もコッパイタリアこそ逃したものの、マテイ・カジースキ(ブルガリア/現ミラノ)やアレッサンドロ・ミキエレット(イタリア)を擁し、トレンティーノを5度目の国内チャンピオンに導いている。そうして今季からペルージャの監督に就任、11月のスーペルコッパに続き、世界一のタイトルをもたらした。
アンジェロ・ロレンゼッティ(写真中央/Angelo Lorenzetti/1964年5月11日生まれ/イタリア出身/Photo:legavolley.it)
YUKI ISHIKAWAの印象、その答えは
その名伯楽を、筆者はたずねた。今年2月19日、イタリアはミラノ。この日はレギュラーシーズン後半第9節がミラノのホーム「アリアンツ・クラウド」で行われ、5000人近くの観客が詰めかけるなか、ミラノとトレンティーノがフルセットの熱戦を演じた。最終セットにカジースキのサーブが走り、試合はトレンティーノに軍配。それでもミラノのエース、石川祐希(日本)は18得点と気を吐き、その健闘をたたえる声が会場中で響いた。
だからこそ聞きたかった。ずばり、石川の印象を。すると開口一番に、ロレンゼッテイ監督は自らの手を胸に当てながら、こう口にした。
「YUKI IS MY HEART.」
“MY HEART”とは、かわいく感じるもの、愛するもの、大切なもの…。そういった訳がいくつも浮かぶが、どれもが正解なのだろう。こんな思いが、その言葉にはこめられていたからだ。
「ユウキが初めてイタリアにきたときに、一緒に練習しましたから。そのころはまだイタリア語はもちろん、英語も話せなくてね。ほんとうに子どものようでした。ですが、そこからすべての人が彼の成長を認めるまでに、大きくなりましたね」
そう、石川が中央大時代にイタリアに初めて渡った際、入団先のモデナを指揮していたのが、このロレンゼッテイ監督なのである。
「YUKI IS…」と口にしたとき、氏はまるで愛する息子のことを思い返すかのような表情を浮かべていた。
いつかまたコーチと選手の関係を結ぶ日がくるかはわからない。今はネットを挟んで向き合うものどうしだ。それでもきっと、石川に向けるまなざしはいつも温かいことだろう。
ミラノと世界王者ペルージャとの今季初対戦は現地12月26日、ペルージャのホームで行われる。
石川(左から3番目)が在籍した14/15シーズンはコッパイタリア制覇。ロレンゼッテイ監督の姿も(右から4番目/Photo:legavolley.it)
(取材・文/坂口功将)
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