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久光 深澤めぐみが東京体育館で立てる誓い。無観客での春高優勝から2年、「やっぱり楽しい」けれど…

 バレーボールの「令和5年度天皇杯・皇后杯 全日本選手権大会」は1217日に男女とも決勝が行われた。準優勝に終わった女子の久光スプリングスの次世代エース、深澤めぐみは悔しさをにじませた。

 

深澤めぐみ(ふかざわ・めぐみ/身長176㎝/最高到達点302㎝/就実高〔岡山〕→久光スプリングス/アウトサイドヒッター)

 

春高で2大会連続優勝&最優秀選手賞の深澤めぐみ

 

 今年の皇后杯ファイナルラウンド第2週(準決勝、決勝)の舞台となった東京体育館。近年は全日本高等学校選手権大会「春高」の会場であり、年明け14日からは第76回春高が実施される。

 高校生にとって集大成となるその大舞台で、2020年度の第73回大会、21年度の第74回大会と連覇を飾り、かつ2大会とも最優秀選手賞に選ばれたのが、久光スプリングス入団2年目の深澤めぐみである。

 深澤にとって今回の皇后杯ファイナルラウンドは、春高以来となる“東京体育館凱旋”。センターコートの配置は、まるで同じだったが…。

「素直に“別の会場”という感覚でした。高校23年で決勝に立たせてもらったのですが、いいプレーをしても、しーんと。すごく静かだったので、体育館が広く感じていました。ですが今回は、たくさんの方々に足を運んでいただき、応援があるなかでのバレーボールはやっぱり楽しい、と。とても背中を押されているなと感じました」

 深澤が高校日本一のタイトルを手のした2年間はコロナ禍の真っ只中。春高は無観客で開催され、東京体育館ではボールを打つ音とプレーする選手たちの声だけが響いた。

 けれども、今は違う。皇后杯では有観客はもちろん、声出し応援も解禁。かつての、いや、本来の風景がよみがえっている。

 

就実高のエースとして全国の舞台で躍動した深澤めぐみ、右は双子の妹の深澤つぐみ(現・東レ)

 

 

決勝では苦しみながらも奮闘

 

 皇后杯決勝、最終日。大会を終えて、その瞳に映った光景を思い返してもらったときばかりは、その表情が柔らかくなった。というのも、やはりいちばんには悔しさがあったからだ。

 チームとしては過去5連覇を成し遂げたこともあるこの大会で、2年ぶりの決勝進出。先発出場を果たした深澤は第1セット、NECレッドロケッツのサーブに苦しみ、2本の直接失点を許している。そこではリベロの西村弥菜美から「(返球は)上でいいよ」と声をかけられ、無理にセッターに返さずレシーブを上げることを促された。

 試合が進み、中川美柚がセッター対角の長岡望悠に替わって投入されると、深澤は攻撃に専念。「自分の特徴は点を取ること」と言うように、アタック面でも本来の調子を取り戻し、得点シーンが増えてくる。第4セットには足を負傷し、ベンチは中島咲愛と交代するカードをきろうとしたが、「大丈夫です」と強い意志表示で退けている。最終的には交代し、ベンチで試合終了の笛を聞いたが、戦う姿勢を貫いた。だからこそ、「試合が終わって、ずっと悔しい。言葉で表すと、悔しいのひと言です。苦しいときに決めきれなかったし、自分のミスを吐き出してしまったのが反省です」と記者会見では唇をかんだ。

 

決勝を終えて、悔しさをにじませる

 

【次ページ】自分がチームを引っ張るという思い

開幕戦こそ途中出場も以降は積極的にスタメンで起用されている(写真右端)

 

 

世代交代を迎える久光のなかで期待される存在

 

 そこにあるのは、自分がチームを引っ張るという思いだ。キャプテンの大竹里歩は今シーズンを迎えるにあたり、「若い選手たちには『自分たちが引っ張っていく気持ちで』と伝えた」と言い、その意識はチーム内で芽生えつつある。

Vリーグで数々の功績を残してきた久光は、昨年度かぎりでエースの石井優希が現役を引退。長岡や大竹、司令塔の栄絵里香らベテラン勢は健在だが、今は世代交代の転換期といったところ。そのなかで、今季はスタメンに抜擢されている深澤は、次の世代を担うエースといえる存在なのだ。そのことをチームメートたちも理解している。

 例えば、入団5年目の平山詩嫣は「めぐ(深澤)に自分はすごく期待しているんです。これからも一緒に頑張っていく仲間なので。エースにならなきゃいけない選手だし、私たちが彼女をエースとして支えていかなければならない」と期待を寄せる。その平山は決勝の第2セット、競り合う展開で深澤がアタックを決めてリードを広げた際、ベンチでこん身のガッツポーズ。「決勝とか関係なく、今日は思いきってプレーしてほしかったので。決めたときはうれしかった」と、そのアクションに込めた思いを明かした。

 

皇后杯準決勝では「自分の力を出しきりたい」と気を吐き、見事勝利に貢献

 

「チームを引っ張っていく、そうしなければならない」と決意を胸に

 

 そうした周りのサポートや思いに応えながら、深澤はコートに立っている。日立Astemoリヴァーレとの準決勝では序盤こそ硬さが見られたものの、「『あそこが空いている』『力を抜いて』と声をかけていただき、力を発揮できました」と感謝した。

 加えて深澤自身、日立Astemoは今季のV・レギュラーラウンドで対戦した際(1022日)に第1セットで9打数0得点と苦しみ、以降はベンチに下がる屈辱を味わった相手。今回の皇后杯ではチーム最多27得点の活躍で勝利の立役者となり、酒井新悟監督も「日立Astemoとの試合に懸ける思いは彼女自身、強かったのでしょう」とたたえた。

 そんな闘争心をぶつけた皇后杯。深澤は決勝を終えて、「私がチームを引っ張っていけるような選手になりたい」と栄に伝えたという。

「私はプレーでみんなを引っ張っていくことができる、と言いますか、それをしなければならないと思うので。崩れないチームの軸になれるように、少しずつ日々、成長していきたいです」

 輝かしい青春を彩った東京体育館はこの日、深澤にとって新たな誓いを固くする場所となった。

 

注がれる期待を力に変えて、さらなる成長と活躍を期する

 

(文/坂口功将)

 

 

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【次ページ】皇后杯決勝に臨む久光の選手たちの動画

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