令和5年度天皇杯全日本選手権大会ファイナルラウンドが12月8日(金)から武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京)で行われ、春高に出場する男女3チームが出場した。Vリーグや大学生といった格上との対戦で得たものとは? 第3回は、来年1月4日(木)から行われる春高では連覇が懸かる駿台学園高(東京)。高校生では唯一、前日の1回戦(対高知工科大)を突破し、2回戦ではV1相手のウルフドッグス名古屋に健闘した
ディフェンス力に手応えも
課題はそこからの展開
息が切れ、額には汗がにじむ。顔をしかめながらも、サーブに向かう荒井貴穂は楽しそうにつぶやいた。
「えぐっ。強っ!」
第2セット9-9、身長205㎝の王東宸の伸びてくるフローターサーブをオーバーハンドレシーブ。そこから三宅雄大のスパイクでサイドアウトにつなげた。中国代表経験のある王だけでなく、相手コートには小川智大や高梨健太ら日本代表選手もずらり。荒井は「テレビで見ていた選手と試合ができてめっちゃ楽しかったです。大学を卒業してバレーを続けるかはまだわかりませんが、自分も高いところまでいければ」と目を輝かせた。だが、憧れだけでは終わらせなかった。
Vリーガー相手にも、自分たちの武器を貫いた。梅川大介監督が「特にサイドアウトからはそんなに崩れなかったので、自信を持っていい」と言ったのが、高校屈指のディフェンス力。相手の強打にはリベロ谷本悦司を中心に食らいつき、13-25と大差で落とした第3セット中盤まではサービスエースも許さなかった。第2セットは16-14と中盤までリードし、V1相手に20点台に持ち込んだ。
そして、荒井が「通用した」と自信を深めたのがリバウンド。初めて見る高い壁に対して、難しい体勢では無理に勝負せず。あえてブロックにボールを当てることで、攻撃を立て直した。「高いブロック相手でも取ることができた。やってきたことがよくなってきたかなと思います」と充実感が漂った。
一方で指揮官が課題に挙げたのが、守りからの展開だ。この日は相手のジャンプサーブに崩されることを想定し、セッターには三宅綜大をメイン起用。そして大坪泰介、堀内晴翔、後衛ではセッターに入ったオポジットの三宅雄大と4選手がトスを上げた。わずかなミスが致命傷になる戦いで、梅川監督は「どうすれば崩れるのかがはっきりわかった」と言って続けた。
「サーブレシーブが多少乱れたときに、3セット目はセッターの選択ミスが多かったです。とにかくそれをなくさないといけませんが、セッターは下級生なので。相手をしっかり分析して、3年生が多いアタッカーがカバーしてあげられるようになれば」とセッターだけでなく、最上級生にも注文した。
連覇が懸かる春高は、ともに勝ち上がれば3回戦で国体王者の高川学園高(山口)と激突する。同大会準々決勝でのリベンジマッチの可能性もあり、亀岡聖成キャプテンは「(抽選結果を見て)いやちょっと、『おぉ…』という感じだったんですけど」と苦笑い。それでも、梅川監督からの「今のチーム状態だと、やるべきことをすれば勝てる」という言葉に前を向いた。
「ワクワクもプレッシャーもあるんですけど、今年は国体で1回負けています。プレッシャーをあまり感じず、挑戦者の気持ちで。特に相手を意識せずに自分たちのバレーができればと思います」
この日は会場を沸かすたびに、楽しそうにコートを駆け回った。インターハイに続く全国二冠、そして春高連覇へ。笑顔でゴールテープを切る。
文/田中風太(編集部)
写真/山岡邦彦(NBP)、田中風太
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