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細田学園高のベンチに下北沢成徳高の小川良樹前監督!? 「もうバレーはないかな」から就任に至るまで【伊藤潔美監督×小川エグゼクティブアドバイザー対談①】

第76回全日本高等学校バレーボール選手権大会(春の高校バレー)が1月4日(木)に開幕する。細田学園高(埼玉)には、昨年11月から頼もしいスタッフが加わった。昨年度まで下北沢成徳高(東京)で監督を務め、多くの日本代表選手を育ててきた小川良樹氏が、エグゼクティブアドバイザーに就任。30年以上切磋琢磨してきた伊藤潔美監督とともに、春高への思いを語った。対談の第1回は、就任の背景に迫る(第2回第3回

 

 

春高県予選を突破した伊藤監督(左)とコーチとしてベンチ入りした小川エグゼクティブアドバイザー

 

——春高県予選決勝では、3-1で春日部共栄高に勝利。大喜びする伊藤監督が印象的でした

 

伊藤 感動的でした。今年は正直、春高にいけるとは思っていなかったですから。

 

小川 インターハイ予選を見ていると、私もちょっとやばいなと思いました。春日部共栄高は大きいし、昨年度から主力が4人残っていますが、細田(学園高)は1人残っただけ。(昨年5月の)関東大会県予選の決勝では「なんで⁉︎」というくらいワンサイドな戦いで(春日部共栄高に)完勝しましたが、(昨年6月の)関東大会の準々決勝での悲しい負け(実践学園高〔東京〕に●0-2)も見ているし…(笑) 「これ、勝機がないね」という戦いで、東京のベスト8のチームに完全に力負けして、インターハイ県予選決勝では案の定(春日部共栄高に)負けてしまって。そうしたら、伊藤先生は「やばい、やばい」とおっしゃっていたので(笑)

 

伊藤 ほんとうにやばい状況でしたから(笑) よく勝ったと思います。小川先生に来ていただいてからパワーをいただいて。

 

小川 いやいや、全然そんなことはない(笑) 

 

——小川氏は(昨年)11月1日にバレーボール部のエグゼクティブアドバイザーに就任しました。お話はいつからあったのでしょうか?

 

小川 突然ですよね(笑) 

 

伊藤 (昨年の)10月くらいに、理事長先生に「バレー部がもっと上にいくにはどうしたらいいですか」と聞かれて。僕だけの力だと、ベスト8ぐらいまでは何とかいけるかもしれませんが、それより上はいったことがないんですよね。そういう世界を知ってらっしゃる小川先生に、僕自身も「教わりたい」とずっと思っていて。理事長先生は快く私の提案を引き受けてくださり、「小川先生さえやっていただけるなら」と思って、すぐに連絡しました。

 

 成徳(下北沢成徳高)で監督をされていたころは毎週、いちばん練習試合をしていただきました。ただ、そのときに見ていたのはあくまでもゲームの中での指導で、ふだんの指導方法は見たことがありませんでした。昔から成徳の選手たちを見てきましたが、みんな最初は体が大きいけどヘタなんですよね。3月、4月はうちのほうが強いんじゃないか、と思うぐらいで。

 

春高県予選で優勝し、選手たちと喜びを分かち合う伊藤監督

 

小川 「7-3で細田」という感じで、シーズンの最初は勝てたことがないです。

 

伊藤 ところが、インターハイ、国体、春高とみるみるうちに成長して、一気に日本一まで駆け上がっていくじゃないですか。どうやってこんなにうまくするのだろう、と。もちろん練習量もあるはずですが、そこにはノウハウがあるのだろうな、と思っていました。

 

 今はうれしい限りで、夢のようです。こうやって毎日先生と一緒にやれることがほんとうに楽しくて。今日はどう指導されるのだろうかと思いながら、先生の言葉を一つ一つかみしめて聞いています。選手たちをすごく上手にコントロールされるところが素晴らしいと思っています。

 

 ただ、これまで僕がやっていたことは全然ダメだったな、と思いますよ(笑) 「細かいところからきちっとやらないと。正しいことを積み重ねず、いい加減なプレーを積み重ねれば、いい加減な選手ができる」とおっしゃっていて。そこを聞くと、「言われているのは選手ではない。僕だ!」とすごく胸にズシンときます(笑)

 

小川 まずい(笑)

 

伊藤 いや、その通りなので。うちのコーチもみんな、「これは我々がいけないのだと。選手たちが言われていることは、私たちが言われていることなんだ

」と感じています。今までも全国大会でベスト4を懸けた試合が何回かありましたが、だからそこを取りきれなかったのだと思いました。

 

 でも、僕はそういう部分を勉強したくて。この年になるとなかなかそう言ってくれる方はいません。これから先生に教わって、一生に1回はベスト4以上に入って、先生と一緒に喜びたいなと思っています。

 

【次ページ】エグゼクティブアドバイザー就任のお話を受けたときはどう感じた?

 

春高都代表決定戦で敗れ、昨年度限りで下北沢成徳高の監督を勇退した小川エグゼクティブアドバイザー

 

——エグゼクティブアドバイザー就任のお話を受けたときはどう感じましたか?

 

小川 正直、びっくりしますよね。「そんなのいいのかよ」って(笑) こういった機会をいただいて、理事長先生には心から感謝しています。

 

 ただ、(下北沢成徳高の監督を勇退した昨年の)4月以降は生きがいがないときにどう生きるのだ、という感じで。「もう、バレーはないな」とも思っていました。夏までは北沢中(東京)のお手伝いに行っていましたが、あくまでお手伝い。あまり出すぎたことはしないようにしていました。そんな中途半端だなと思っていたところで細田から声をかけていただいて。職員という身分で関わるのであれば、きちっととやらないといけないと思いました。責任がある分、楽しいですね。

 

——「バレーはないな」というのはどういった思いからでしょうか?

 

小川 講演やバレーボール教室のお話もいただいていましたが、自分は勝負に勝つにはこういうノウハウがあると伝えることのほうが、やってきたことと合っているのかな、と感じていました。ただ、年齢を考えてもできて34年だろうし、実際にチームについて強化にあたるのはどうなのかな、と。

 

 ただ、そこでお話をいただいて。伊藤先生とはもう30年以上、どちらも全国大会に出られないときから一緒にやってきて。長年、人柄のよさを感じていたので。少しでもお手伝いできるのであれば、という気持ちでした。

 

伊藤 私は戻ってほしいと思っていましたよ。北沢中を見ているときも生き生きとされていたし、まだまだ現場の先生なんだろうな、と感じていました。先生のいちばんの特技はやっぱり選手を成長させること。教わったうちの選手たちもすごく幸せだと思います。ほんとうに短期間ですが、きちっとチームをつくってくれて、春高県予選決勝でも勝てましたし。

 

 僕は今までもレシーブは一生懸命強化してきましたが、ブロックは(小川エグゼクティブアドバイザーが就任した)この1ヵ間で、多分3年間分ぐらい練習していますよ(笑)

 

小川 ははははは!

 

伊藤 ほんとうに(笑) うちは小さいので、なかなか得点につながるまではいきませんが、ちゃんと腕を出して、ブロックの横を抜かせたりするから、レシーブもしやすくなっています。的確に指導されて、やっぱり百戦錬磨で、全国優勝をされただけあるなと思います。

 

小川 そんなことはない(笑) 

 

伊藤 うちになかった部分を補ってもらって、ほんとうにありがたいです。

ディフェンス力の高さは細田学園高の持ち味

 

——下北沢成徳高監督時代、小川エグゼクティブアドバイザーは細田学園高にどんな印象を持っていましたか?

 

小川 知っている人はみんなわかっていますが、関東のチームでディフェンスとつなぎがいちばんいいのは細田です。成徳は単純な攻めのチームなので、それが全国で通用するかどうかを確認するために、細田のレシーブをお借りしていました。守りがいいので、シーズンの前半戦は打っても決まらないんです。

 

 それに対して、選手たちには「どう決めるのですか?」と。相手のレシーブ、ブロックをかわして決めろ、ということではなくて、自分たちの高さとパワーでレシーブに勝っていくぐらい打ち込めるように。細田のディフェンスをターゲットにしながら、どの時点で決まり始めるかを見ながらチームをつくって、そこから全国のディフェンス自慢のチームに試していました。細田に対して決まるか決まらないかは、選手たちの大きな課題でしたね。

 

伊藤 逆にうちは成徳にあれだけ打ってもらうと、打球が遅く見えて、県内で戦うのがすごく楽になりました。今まで全国大会に出られないだろうという代はたくさんありましたが、出られたのは、ほんとうに成徳、小川先生のおかげですね。

 

小川 お互いさまですよ(笑) 練習試合はお互いのレベルを上げるためにしていることですから。

 

伊藤 ゲームにならないこともたくさんありましたが、それでも何セットもやっていただいて。ただ、もっとすごいのは、成徳の選手たちは試合をする前に1時間ぐらいランをして(走って)いるんです。それでもすごくて、この子たちはどうなっているのだろうとは思いました(笑)

 

 今はそのノウハウを教えていただいて。ランやトレーニングのメニューも取り入れたり。おかげさまで、ちょっとずつパワーがついてきていますね。

 

文/田中風太(編集部)

写真/中川和泉(NBP)

 

伊藤潔美(いとう・きよみ)

1959113日生まれ/早稲田実高(東京)→早稲田大

小川良樹(おがわ・よしき)

19551029日生まれ/早稲田大高(東京)→早稲田大

 

 

 

【伊藤潔美監督×小川良樹エグゼクティブアドバイザー対談】

第2回・「女子はレシーブ」 固定観念を覆すブロック改革 小さいチームにもできること

第3回・「どちらかが死ぬまで」コンビ継続⁉︎ 細田学園高のベテランタッグが描く指導者としての姿

 

 

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