「どちらかが死ぬまで」コンビ継続⁉︎ 細田学園高のベテランタッグが描く指導者としての姿 【伊藤潔美監督×小川良樹エグゼクティブアドバイザー対談③】
- 学生
- 2024.01.03
第76回全日本高等学校バレーボール選手権大会(春の高校バレー)が1月4日(木)に開幕する。細田学園高(埼玉)には、昨年11月から頼もしいスタッフが加わった。昨年度まで下北沢成徳高(東京)で監督を務め、多くの日本代表選手を育ててきた小川良樹氏が、エグゼクティブアドバイザーに就任。30年以上切磋琢磨してきた伊藤潔美監督とともに、春高への思いを語った。対談の第3回は、およそ半年間現場を離れた小川エグゼクティブアドバイザーが考えていたことと、2人の未来について(第1回、第2回)
選手に声をかける小川エグゼクティブアドバイザー
——小川エグゼクティブアドバイザーは、昨年度かぎりで下北沢成徳高の監督を勇退後、半年ほど現場を離れていました。その間に考えることはありましたか?
小川 私は日本一になることばかり考えていたわけではありませんでしたが、成徳(下北沢成徳高)で監督をした最後の10年は、選手たちが「日本一にならないといけない」と思いすぎていて。ちょうど昨日、(荒木)絵里香や(木村)沙織たちと話していたときに気づいたことがありました。
そのころより、最後の10年のほうが選手たちはすごくまじめで、あの子たち(荒木さんや木村さんら)がやっていた内容が「10」だとすると、最後の10年の選手たちは多分、倍ぐらいストイックに努力していたと思います。ただ、2人のように初めて日本一になったころの選手たちは「休みも多かったし、楽しかったよね」と言っていて。
何が違ったのかを考えると、絵里香たちのころは、まだチームが成り上がりの時期だったんです。日本一になったことがないので、イケイケなんですよね。でも、最後の10年の選手たちは、例えば春高で3位になると、泣きながら卒業していました。私が「3位なんだからいいじゃん!」と言っても、「すごく悔いが残る」と言って。
練習でいうと、もともとは朝8時ぐらいから始まっていたのが、最後の年は6時から始まっていましたから(笑) なぜこんなに早いのかと考えると、選手たちがどんどん時間を早くしていたんです。一生懸命練習することはいいことですが、チームは追い込まれていたし、私もそれに合わせて相当のめり込んでいました。
少し外から見ていて、もっとバレーボールが好きという気持ちを前面に出してやれたら、と思いました。「正しいことを正しく取り組む」ことはもちろん大事だけど、絵里香たちのように、もっとバレーボールが好きで、楽しく勝つほうがいいよな、と。最後の10年に関わった選手たちに申し訳なくて、どこかでその重りを取ってあげられたらよかったと思いました。これは、監督を辞めるまでは気づかなかったことです。選手たちに言わないまでも、そうなってしまうこともあるんだな、と。
そのため、細田(学園高)の子たちが同じような気持ちでバレーをすることはないようにしたいです。勝負なので、勝利を目指すことに違いはありません。ただ、「このプレーがうまくなった」というように、彼女たちが自分やチームが成長する喜びを、日々見いだせるようにしたいです。
全国のハードルはもっと高い。みんなも頑張ってやればできるんだよ