バレーボールのVリーグは年も明け、特にV1女子はV・レギュラーラウンドも後半に突入した。チームによっては内定選手が合流し、さっそくコートに立つ姿も見られる。そんな中、岡山シーガルズに加わった新戦力が、文字どおり“フレッシュ”な風を吹き込んでいる。
京都橘大4年生の小松原凜香が内定選手として入団
この打数…、0が一つ多いのではないか? 公式帳票を眺めて、思わずそうこぼした。
1月13日にひたちなか市総合運動公園総合体育館(茨城)で行われた岡山シーガルズvs.久光スプリングスのカード。岡山側の記録のうち、【バックアタック】の項目を見てみる。一人の選手の欄には、このような数字が並んでいた。
打数:20/得点:7/失点:0/決定率:35.0
その数字の主は、小松原凜香。京都橘大4年生のサウスポーアタッカーで、内定選手として11月29日に登録されると全日本インカレを戦ったのちチームに合流。さっそく昨年12月23日のデンソーエアリービーズ戦からベンチ入りを果たしている。
小松原の成績が異色に映ったのは、在籍するチームが岡山だから。というのも、岡山は代々バックアタックを多用しない傾向にある。現行の“V.LEAGUE”が始まった2018-19シーズン以降のV・レギュラーラウンドにおける数字を並べると、以下のとおりだ。
■岡山シーガルズのバックアタックの合計打数および合計得点(カッコ内は総セット数)
2022-23:136打数29得点(133セット)
2021-22:46打数4得点(120セット)
2020-21:54打数13得点(79セット)
2019-20:60打数9得点(77セット)
2018-19:49打数3得点(79セット)
※数字はVリーグ公式より
念のため、これは一選手の数字ではなく、チーム全体のもの。昨季は100打数を超えたとはいえ、リーグ内で最も少ない。トップがデンソーの843、下から2番目がヴィクトリーナ姫路の227であり、岡山の打数そのものがいかに少ないかは明らかだ。
ちなみに今季のV1女子で唯一、いまだバックアタックの合計打数が3桁に到達していない。それゆえに、小松原の一試合2桁打数に対して驚きに似た感情を覚えた。
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「うちに初めて来たタイプの選手」と指揮官。その印象は
そんなスタッツが刻まれた試合の翌14日、試合後の会見で河本昭義監督にぶつけてみる。久光戦は1-3で敗れたものの、小松原が途中出場ながらチーム最多19得点の奮闘。だが、この日の日立Astemoリヴァーレ戦は5得点(うちバックアタックは1得点)にアタック決定率15.2%と苦しんだ。小松原のパフォーマンスについて。
「昨日はちょっと褒め過ぎましたね」
開口一番、河本監督はそうほほえんだ。とはいえ、評価を述べるその口ぶりからは期待感をのぞかせた。
「おそらく、我々にはないバックアタックを打てる選手にこれからなっていく可能性が高いですから。入団前から“しっかりとバックアタックを打っていました”という選手が来てくれたのは、うちでは初めてなんですよ。なので、昨日はシーガルズにとって“幕開け”のような感じがして、うれしかったですね」
指揮官もまた、チームに新たな風が吹き込んだことを実感していたのである。同時に、評価したのは彼女自身のプレーぶり。まだまだ公式戦への出場機会は少ないにも関わらず、「目が泳がずにプレーしていたのがいちばんよかった」と河本監督は、ひたちなか市大会での小松原を総括した。
小松原「もっともっと攻撃でけん引できるプレーヤーに」
当の本人は、久光戦そして日立Astemo戦における自身のパフォーマンスを冷静に、こう振り返った。
「河本監督からは『決めよう、とするのではなく、コースの幅を広げるように。力を抜いていけ』と言っていただきました。昨日(久光戦)は決まっていたボールで、力んでいた部分があったので。しっかりとトスを呼んで、力を抜いて打つことを心がけました。
ただ、(日立Astemo戦は)打数も少なく、甘いコースが多かったので。そこは修正していきたいと思います」
河本監督が明かすに、もともと大学卒業後の進路は企業への就職だったそうだが、Vリーグの世界へ。その理由について小松原は「プレーを上達させたい、そして自分のできるところまで挑戦してみたい、という思いが大きかった」と語る。岡山に入団し、技術面で「細かい部分から教えていただき、自分に可能性があると感じられている」と前を向く。
「将来は、もっともっと攻撃面でけん引していくプレーヤーに。チームが困った局面や要所で頼ってもらえて、そこで得点につながる賢い攻め方ができる選手になりたいです」
新しいステージに立ち、そこでの学びを体現していく。岡山シーガルズに吹く風はそう快で、これからますます強烈になる予感がした。
(文・写真/坂口功将)
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