サイトアイコン 月バレ.com【月刊バレーボール】

世界クラブ選手権サンバーズ奮闘記2  

【Photo:FIVB】

 

 

2023年のアジアクラブ選手権を制していたサントリーは天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドの出場を辞退、同時期に開催されていた世界クラブ選手権(インド)に挑み、日本初の銅メダル獲得という快挙を達成した。戦いの模様や背景を、全4回のシリーズでお届けする連載の2回目をどうぞ(第1回

 

世界を驚かせた驚異のディフェンス力

 

 今大会は予選ラウンド初戦で、3位決定戦と同じハルクバンク(トルコ)と、2戦目で南米王者サダ クルゼイロ バレー(ブラジル)と対戦した。フランス代表のイアルバン・ヌガペトや、オランダ代表のニミル・アブデルアジズなど各国の代表選手を擁するハルクバンクには3-0で勝利。ヌガペトとニミルは、2022年のアジアクラブ選手権決勝で対戦したテヘランペイカン(イラン)に当時所属しており、その時はサントリーが敗れていたが、ここでリベンジを果たすことができた。

 予選第2戦で対戦したクルゼイロにはフルセットの末に敗れたが、勝ち点1を獲得。クルゼイロがハルクバンクに0-3で敗れたため、サントリーは予選ラウンドB組を1位で突破していた。

 予選ラウンドでサントリーは全員が高いパフォーマンスを発揮した。大宅真樹の巧みなトスワークで、スパイカー陣は軒並み高い決定率を残した。サーブレシーブを崩されるなど苦しい場面ではやはり、身長218cmのオポジット、ドミトリー・ムセルスキーの存在感が際立った。海外の高いブロックが相手でも、Vリーグの試合と変わらず上からスパイクをたたき込む。幅広いコースに打ちわけたり、ブロックを利用する技術の高さも見せつけ、ヌガペトら世界的なスター選手たちも目を丸くした。

 だがサントリーが最も世界を驚かせたのはディフェンス力だった。ブロックディフェンスのシステムがはまり、驚異的な粘りを発揮。とにかくコートにボールが落ちず、相手が粘り負けしてミスを出すシーンが多く見られた。

 相手はふだん対戦するVリーグのチームより高さがあるため、割り切ったブロックとディグのシフトを敷いたことで、より役割が明確になった。

 加えて、「初の世界クラブということで、選手たちのモチベーション、パフォーマンス、集中力すべてが高かった」と山村宏太監督は言う。

 周りの選手が「ディマ(ムセルスキー)もいつもより構えが低かった」と語るように、守備にも本気のムセルスキーが体を投げ出してボールをつなぐなど、泥臭く食らいついた。

 クルゼイロ戦で、ミドルブロッカーの佐藤謙次が、身長209cmのブラジル代表ルーカス・サートカンプのクイックをシャットアウトしたシーンは圧巻だった。要所で3本のブロックを決めた佐藤の試合後の言葉が、今大会のサントリーの戦いを象徴していた。

 「自分は経験がないので、大会が始まる前までは、正直手がつけられないんじゃないかと思っていました。でも実際に戦ってみると、もちろん自分個人の力ではやっぱり難しいんですけど、1人で戦うわけじゃないので、ディマがいたり、(デ・アルマス)アラインや(藤中)謙也さんがいたり、後ろにはディグがいる。そうした戦術で戦っていけば、世界にも通用する部分があるな、チームで戦えばいけるなと感じています」

 

【写真:©SUNTORY SUNBIRDS】

敗戦の悔しさをぶつけての逆転劇

 

 ただ、南米代表のイタンベ ミナスと対戦した準決勝では、好調だった守備が思うように機能しなかった。

 サーブで崩しきれなかったことに加え、「相手のセッターが賢く、こちらのいちばん弱いところから攻めることを徹底していたし、サーブレシーブが返った時の真ん中のクイック、パイプの使い方がほんとうに上手で、最後まで的を絞ることが難しかった」と山村監督。

 それでも30点に及ぶジュースとなった第3セットを、小野寺太志の値千金のブロックでものにし、先に2セットを奪い決勝進出に王手をかけた。

 しかし第4セットを奪い返され、第5セットもリードを許す。ムセルスキーがフライングレシーブで拾ったボールを、藤中(謙)が至極の技で得点につなげてジュースに持ち込むが、最後はムセルスキーのスパイクがラインを割り、15-17でゲームセット。決勝が見えていただけに、悔しすぎる敗戦。

 試合後、涙を拭う藤中颯志の姿があった。

 「自分のプレーどうこうじゃなく、ただただ、負けたことが悔しくて…。試合に負けたあとからホテルに着くまでの記憶があまりないんです。勝てる、と思っただけに、余計に悔しかったですね」

 その思いを翌日の3位決定戦にぶつけた。第1セットこそかみ合わずにミスが出て、目の色を変えて臨んできたハルクバンクに大差をつけられたが、サントリーは徐々にふだんの姿を取り戻していく。12セットを連取され追い込まれたが、第3セットからはサーブで崩して主導権を握り、2セットを連取して、試合は3戦連続のフルセットに。

 第5セットも藤中(謙)の巧みなショートサーブで流れをつかみ、ムセルスキー、アラインのスパイクを中心に得点を重ねてリード。追い上げられながらも、マッチポイントからムセルスキーがバックアタックを決めて銅メダルをつかみ取った瞬間、コート内の選手たちは両腕を掲げ、ベンチの選手は跳びはねながらコートになだれ込んだ。

 

写真/©SUNTORY SUNBIRDS, FIVB

記事提供/SUNTORY SUNBIRDS・米虫紀子

 

第1回 銅メダル獲得の舞台裏

第2回 世界を驚かせた驚異のディフェンス力 

第3回 インドの観客がサントリーを後押しした理由(1/19更新)

第4回 日本代表だけではなくクラブチームの強さも証明(1/20更新)

 

◇サントリー試合結果

3位決定戦 1210日(日)

○サントリー 317-2523-2525-2125-1915-122 ハルクバンク●

 

準決勝 129日(土)

 

予選2日目 127日(木)

 

予選1日目 126日(水)

○サントリー 325-2325-2325-160 ハルクバンク●

 

■最終順位

優勝  ペルージャ(イタリア)

準優勝 ミナス(ブラジル)

3位  サントリーサンバーズ(日本)

4位  ハルクバンク(トルコ)

5位  サダ クルゼイロ(ブラジル)

6位  アーメダバード(インド)

  

 

月刊バレーボール2月号好評発売中

 

 

■サントリーはハルクバンクに逆転勝利で銅メダルを獲得 男子世界クラブ選手権

■サントリーはミナスにフルセットの末に敗れ3位決定戦へ 男子世界クラブ選手権

■サントリーはクルゼイロにフルセットの惜敗も予選突破が確定 男子世界クラブ選手権

■男子世界クラブ選手権開幕 サントリーがハルクバンクにストレートで

■世界一を決めよう。サントリーサンバーズが臨む世界クラブ選手権の見どころは? 鳥人たちの競演にも注目

 

【次ページ】クルゼイロ戦で奮闘するサントリーの選手たち

モバイルバージョンを終了