2023年のアジアクラブ選手権を制していたサントリーは天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドの出場を辞退、同時期に開催されていた世界クラブ選手権(インド)に挑み、日本初の銅メダル獲得という快挙を達成した。戦いの模様や背景を、全4回のシリーズでお届けする連載の3回目です(第1回)(第2回)
インドの観客がサントリーを後押しした理由
インドという異国の地での戦いにも関わらず、サントリーは現地の人々の声援に後押しされた。配信で試合を見ていても、サントリーを応援する歓声が聞こえてきて、ホームのような雰囲気が伝わってきた。
それはリザーブの選手たちの機転がもたらしたものだった。西田寛基がこう明かす。
「初戦の時に、なぜかわからないんですけど、客席にいた一部の女性たちが、サンバーズがサーブを打つ時などにかけ声をかけてくださっていて、喜入(祥充)さんと『なんか俺らの応援してくれてない?』と話していたんです。それで、僕らリザーブのメンバーが一緒に声を出してみたら、周りのお客さんもどんどん一緒に声を出し始めて。『これいける! 巻き込んだらホームゲームになるぞ。巻き込もう!』となった。そんな感じで勢いづいてやっていたら、連鎖するようにどんどん大きくなっていったんです」
主将の大宅真樹は、「リザーブの選手が中心になってすごく会場を盛り上げてくれて、会場を味方につけたことが力になった。仲間がいる、という感じがしてすごくやりやすかった」と感謝する。
今大会は、ドミトリー・ムセルスキーがベストスコアラーとベストアタッカーに輝き、世界の舞台でも桁違いのスケールを見せつけた。それだけでなく、大宅がベストセッター、デ・アルマス アラインがベストサーバー、藤中颯志がベストレシーバーとベストディガーを獲得した。
今大会の収穫について、山村宏太監督は「世界に通用するんだという自信を選手たちが得られたこと」と語り、その中でも大会中特に飛躍的な成長を見せた選手として、アラインと藤中(颯)の名前を挙げた。
「アラインは、世界とやる時のほうが数段いい。日本では、相手を下に見ているというわけではないんですが、『なんでこんなに決めさせてもらえないんだろう』みたいなフラストレーションのほうに引っ張られることが多いんです。でも海外とやるときには、決まったらうれしいし、止められても仕方ない、という割り切りができるんじゃないか。攻撃面はもちろん、サーブレシーブでも我慢できていた。改めて自分の力を知ることができ、かなり自信がついたんじゃないでしょうか。
颯志に関してはいちばん楽しんでやっていましたね。チームとして今ブロックとディフェンスの関係がハマって、それが楽しいのは颯志だと思うし、試合をすればするほどやることが明確になり、自信がつく。自信がつけば、今度は発信するようになると思う。まだチーム内では若いので、遠慮している部分があると思いますが、彼がもっと評価されるようになるためには、自らチームのフロアディフェンスを統率していく発信力が必要。そのきっかけになるんじゃないかと感じます」
藤中(颯)自身も、特にディグについて、「力まずに待つ感覚や自分に合った姿勢を見つけて、しっくりきた」と手応えを語る。
高い身体能力で得点を量産したアラインも、「世界のいろんな有名な選手とバレーができてよかった。自分とサンバーズのレベルを世界に見せられてほんとうにうれしい」と声を弾ませた。
「今回サーブ(の調子)が戻ったのでよかったし、スパイクも決められた。世界のブロックはほんとうに高いしすごい。でも速さは日本(Vリーグ)のほうが速いし、ディグも日本のほうがうまいと感じた。あとサーブレシーブもちょっとよくなったかなと思う。でもブロックとディグはもっとできる。今大会はいい思い出になると思うけど、準決勝で負けたことはほんとうに悔しかった。あの悔しさを忘れなければ、強くなると思う」
アラインはキューバ出身で、現在日本国籍の取得を目指しているが、今大会に参加していた他チームのキューバ出身選手と話せたこともかけがえのない経験となった。特に元キューバ代表で、現在はポーランド代表として活躍するウィルフレド・レオン(ペルージャ)は、憧れの存在。
「めっちゃ話しました。『おめでとう』とか『グッドラック』とか、会うたびに言ってくれたり、何かあったら『大丈夫か?』と気にかけてくれて、めっちゃしゃべりやすかったです」と感激していた。
(第4回に続く)
写真/©SUNTORY SUNBIRDS
記事提供/SUNTORY SUNBIRDS・米虫紀子
第4回 日本代表だけではなくクラブチームの強さも証明(1/20更新)
◇サントリー試合結果
3位決定戦 12月10日(日)
○サントリー 3(17-25、23-25、25-21、25-19、15-12)2 ハルクバンク●
準決勝 12月9日(土)
- サントリー 2(25-22、22-25、30-28、20-25、15-17)3 ミナス○
予選2日目 12月7日(木)
- サントリー 2(21-25、29-31、30-28、25-22、12-15)3 サダ クルゼイロ○
予選1日目 12月6日(水)
○サントリー 3(25-23、25-23、25-16)0 ハルクバンク●
■最終順位
優勝 ペルージャ(イタリア)
準優勝 ミナス(ブラジル)
3位 サントリーサンバーズ(日本)
4位 ハルクバンク(トルコ)
5位 サダ クルゼイロ(ブラジル)
6位 アーメダバード(インド)
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